睡眠で悩む方は少なくありませんが、よく聞いてみると医学的にあまり起きれない理由があることも少なくありません。その1つが睡眠サイクルを意識していない就寝・起床時間です。この記事では、睡眠サイクルについて紹介します。
睡眠サイクル
睡眠のメカニズムとしてよく知られているのが、睡眠サイクルです。
眠りに入ると、まずノンレム睡眠という深い睡眠状態になり、これは1時間程度続きます。その後、レム睡眠という浅い睡眠に入ります。この2つ合わせて1回の睡眠サイクルで、その長さはだいたい90分です。
睡眠サイクルが3回で4.5時間、4回で6時間、5回だと7.5時間の睡眠時間になります。理想的には睡眠サイクル数回分の睡眠時間を確保すべきであり、例えば4.5回分の6時間45分などに設定すると一番悪い段階で起きることになってしまいます。
ノンレム睡眠は、さらにステージ1,2, 3段階に分かれます。ステージ1と2は比較的浅めの睡眠であるのに対し、ステージ3が深い睡眠で体や脳をしっかりと休息させる大事な役割があります。
1サイクル目のノンレム睡眠にはステージ3が多く含まれるものの、2回目以降はその割合が少なくなっていくので、少なくとも最初の1回目のノンレム睡眠をしっかりと取ることは快眠の前提条件です。
もちろん、ノンレム睡眠のステージ3で目覚めると不快ですし、逆にレム睡眠や、ノンレム睡眠ステージ1の段階で目覚めると快適です。
医学的にレム睡眠・ノンレム睡眠を判定するには脳波などを計測する必要がありますが、睡眠中の体の動き (浅い睡眠だと動きやすく、深い睡眠だと動かない) から睡眠サイクルを自動判定してタイミングよくアラームを鳴らしてくれるアプリ (Android版、iOS版) があります。
睡眠サイクルを判定して目覚めよく起きれるようにしてくれる電子製品も徐々に登場してきました。
こういうツールを使えば、睡眠サイクルが多少ずれたとしても適切なタイミングで起こしてくれます。
ノンレム睡眠
ノンレム睡眠にはステージ1~3があるという話をしましたが、これらは脳波の違いで区別されています。脳波というのは、脳の神経細胞 (ニューロン) の活動の結果として出てくる電気信号で、医療機関では心電図と同じく頭に電極をつけることで測定することができます。
入眠前にはアルファ波という脳波があるのですが、ノンレム睡眠のステージ1ではこれが消え、振幅 (波の大きさのこと) の小さい脳波になります。
さらに小刻み (1秒間に10~15回ほど振動する) な脳波である紡錘波 (ぼうすいは) が出てくるのがステージ2で、ステージ2は睡眠サイクル全体で最も長い時間を占めています。
ステージ3では振動がゆっくりになり、1秒間に1~4回程度になったデルタ波という脳波に変わります。
ノンレム睡眠は、記憶の定着や強化にも重要だということが分かっています。ノンレム睡眠中の脳では、不要な神経細胞同士の連結を解除したり、記憶を整理したりということが行われていると考えられています。
レム睡眠
ノンレム睡眠の後につづくレム睡眠。そもそもレム (REM) とは、Rapid Eye Movementの略であり、睡眠中に目が小刻みに動く現象のことです。
寝ているけど目は動くということからも想像できる通り、レム睡眠中の脳は、睡眠中なのに覚醒時に近い状態にあるという興味深い状態にあります。
これまでの研究結果から、喜怒哀楽などの感情を伴う夢や、現実的にはありそうもない夢の多くはこのレム睡眠に見ていることが分かっています。
感情を担当している脳の部分「扁桃体 (へんとうたい)」や、イメージを生み出す「視覚連合野」がレム睡眠中に活発になっている一方で、理性的な判断を担当する「前頭前野」の活動が低下するからです。
まとめに代えて
この記事では、睡眠サイクルがノンレム睡眠とレム睡眠の90分単位になっていること、そしてノンレム睡眠はさらにステージ1-3に分かれていて脳の休息や記憶の定着に重要なこと、レム睡眠では感情を伴う夢を見ることなどを紹介しました。
睡眠サイクルについては医療系の専門家ではない方に向けて書かれた分かりやすい「睡眠の科学」といった良書が多数出版されています。
特にノンレム睡眠のステージ3で起こされると非常に不快ですので、睡眠サイクルを意識して1.5時間区切りにタイマーを設定するといいですね。近年は音ではなく、自然のようにだんだん強くなっていく光で起こしてくれる光目覚ましも登場しています。
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