研究者をこれから目指す方にとって、その分野での博士号は必須だ。
外国では少々事情が違うが、少なくとも日本では「博士号は研究者にとってのパスポート」と言われることも多い (博士号はパスポート?Ph.D.自体の日本と諸外国の認識の違いについて)。
研究者を目指す上では避けては通れない大学院について、どのようなところかを解説する。
この記事の内容
そもそも大学院ってどんなところ?
大学院に進学する人がどんどん増えている。
大学院は研究者養成機関
大学院は一言で言えば研究者養成機関だ。
大学の学部で教科書的な専門知識等を身に付けただけでは最先端の研究を行うには不十分である。
大学の授業の多くは高校の延長であり、教官が多くの学生を相手に講義をする。教える内容はすでに知られていることである。
学部でやる実験ももうすでに答えが分かっていることだ。すでに知られていることを、先人が苦労して見つけた実験のレシピ (プロトコルという) に従って実験をすれば、結果が出る。
一方で大学院はそうではない。大学院ではさらにそこから発展させ自分自身で人類がまだ誰も知らないことを研究していく姿勢が養われるからだ。最新の論文を読み込んで仮説を作り、うまくいくかどうか全く分からない仮説を、試行錯誤して実験手順を作り検証していく。
この差はとてつもなく大きい。
学部時代の専門と、大学院での専門は必ずしも同じである必要はない。物理学を学部で学んだがバイオ系の大学院に入るということも (もちろん人並み以上の努力が必要だが) できる。
修士と博士とは
さて、大学院といっても大きく修士と博士2つの課程がある。
4年生の学部を卒業した後に入学するのは修士課程という2年間のコースで、さらにその後に進むのが3年あるいは4年間の博士課程というコースだ。修士課程は前期博士課程、博士課程は後期博士課程と言うこともある。
修士課程では、学部の延長のような講義もあるが、基本的には研究室で少人数グループで教官の指導をうけつつ研究を行い、その成果を2年後に修士論文としてまとめて発表する。
修士はまだ一人前の研究者としてしては認められておらず、その通り道というのが一般的な認識である。
そのため、修士論文は科学的にはまだ不十分であっても、講義の単位をとり、研究成果をまとめて発表さえすれば卒業できることがほとんどである。
この段階まででほとんどの大学院生は就職していく。そこからさらに学問を探究し研究者として生きていこうという人たちは博士課程に進学する。博士課程は学生だが、一般的な授業はほとんどない。その代わり、朝から晩まで研究づけの毎日である。テーマそのものも、自分で決めることも多い。
博士課程は一応の年数は決まってはいるものの (標準で3年で医歯薬学などの一部コースは4年)、1人で研究を行っていくのに必要な能力が備わっているかが審査されるため、もっと長くかかることも少なくない。具体的には、権威ある国際学術誌に研究論文を筆頭著者として発表しないといけないことが多い。大学の中だけの審査でいい修士論文と違い、世界中の専門家から高い評価を受けないと国際学術誌に論文が掲載されず、そのため博士号もとれない。晴れて論文が受理されても、複数の教授たちの前で研究内容を発表しその後1時間ほど質疑応答に答えるという公開審査にも合格しないといけない。この公開審査は国際的には博士号を守る (defense) という意味で「ディフェンス」と呼ばれている。この審査に通ると、博士号 (Ph.D.) が授与され、一人前の研究者と評価されるようになる。
博士号取得までにかかる年数は人によってまちまちであり、その間は学生として授業料を大学に納めないといけない。何年かかるか分からない博士号を取るのではなく、もう規定の年数で大学院を出て就職する人も珍しくなく、このパターンを単位修得満期退学という。
博士号のメリット・デメリット
準備中
典型的な大学院生の生活
準備中
最後の関門「ディフェンス」
まとめ
このように研究者になるには学問に対する強い好奇心が必要だが、熱意ある方々がたくさん参入してくれることを望んでいる。