海外研究留学のための助成金・フェローシップ【経験談あり】
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研究留学フェローシップとは

大学院で研究を行い、博士号をとった次のステップとして、海外研究留学を考える方も少なくありません。

しかしながら優れた研究機関であればあるほど、そこで研究をしたい若手研究者が世界中から応募してきます。

世界的に有名な大御所研究者ともなれば、1日に何十通も博士研究員 (ポスドク) として働きたいという応募が来ることも珍しくないのだとか。

その結果として、給料を出さなくても働いてくれるポスドクを優先して採用するということになります。

研究者でない方からすれば信じられないことですが、博士号まで取得した30歳前後の研究者が、海外で無給で仕事をするのはこの業界ではよくあることなのです。

若手研究者としても、その期間は無給で働いても、そこで研究業績を積めば、さらに次のステップに進めるということです。

そんな海外研究機関で働きたい若手研究者を支援するために、さまざまな財団が経済的なサポートをする制度がフェローシップです。

研究者向けの返さなくていい奨学金、といった感じでしょうか。

いずれもハイレベルな競争 (およそ5-10倍の倍率) に勝たないといけませんが、幸いにしてフェローシップをとれれば、その期間の生活費になるというだけでなく、競争的なお金を取れたこと自体が研究者の大きな実績になります。

この記事では、医学生物学領域における海外研究留学フェローシップを、締切順に網羅的にまとめました。

海外学振 (4月)

日本学術振興会の海外特別研究員 (海外学振)は最も有名なフェローシップかもしれません。4月1日時点で博士号取得後5年未満であれば応募できます。

年間約450万円~620万円 (研究する国によって異なる)を2年間援助してもらえます。
全分野 (文学など文系分野も含めて) で約150名の枠があります。留学中でも応募が可能。

平成31年度は申請者778名に対し、185名の採用だったようです(採用率23.8%)。

難点は、締め切りが早い (海外で研究を開始する前年の4月) こと。1年以上前に留学先を選定し、公式に受け入れるという書面をもらわないといけません。

第一三共財団 (5月)

35歳以下の研究者を対象にした、第一三共財団の海外留学奨学研究助成年間300万円を2年間援助してもらえる制度です。

難点は、第一三共財団が認定した研究機関 (ある程度知名度のある国立大学など) に所属していないと応募できず、しかもそれぞれの研究機関から1名しか応募できません。

推薦を得るために学内選考が行われることがほとんどで、通って応募できても、採用されるのは全国で5名だけというかなり狭き門です。

5月が財団への申請の締め切りで、書類選考に通過すると11月に東京で面接選考があります。

このフェローシップの特徴は推薦書の記載項目が多いことで、他のフェローシップよりもずっと多くのことを推薦者が書く必要があります。力のある推薦書をもらえれば、研究業績面で多少劣っていても採用されるチャンスがあります。

持田財団 (5月)

持田記念医学薬学振興財団の留学補助は、満45歳未満のバイオ系研究者のうち、次の6課題のいずれかを海外で研究する方に、海外渡航費として50万円を補助する制度です。

(1) バイオ技術を基盤とする先端医療に関する研究
(2) バイオ技術を基盤とするゲノム機能/病態解析に関する研究
(3) 免疫/アレルギー/炎症の治療ならびに制御に関する研究
(4) 循環器/血液疾患の病態解析/治療制御に関する研究
(5) 創薬・創剤の基盤に関する研究
(6) 創薬とその臨床応用に関する研究

所属している研究室のボス (教授級) から推薦をもらう必要がありますが、研究機関から1人に比べれば敷居は低いです。6つの課題合わせて20人が選ばれ、11月に東京で贈呈式が行われます。

アステラス研究会 (6月)

アステラス病態代謝研究会の海外留学補助金は、年齢制限がなく、推薦も不要という大きな特徴があり、他のフェローシップに応募できなくても必ず応募できます。

選考に選ばれた11名200-400万円が1年間支給されます。2018年度は249件の応募があったようですので、採択率は4.4%となり、応募の制限がないぶん狭き門になっています。

書類を書く上での特徴は、自分の研究業績だけでなく留学先の研究室の研究業績も書く欄があることで、一流の成果を挙げているボスのところに行く人を支援する制度です。

6月に書類提出の後は、書類選考通過者を対象にwebベースの面接が11月に行われます。

上原財団 (7月)

上原記念生命科学財団のリサーチフェローシップ/ポスドクフェローシップは、バイオ系のフェローシップの中では最も採択者が多いです。

リサーチフェローシップとポスドクフェローシップの主な違いは応募できる年齢にあり、前者は37歳以下、後者は33歳以下 (医学・歯学など学部卒業に6年かかるケースでは 39/35才以下) の方が応募できます。

支給される金額は390 - 450万円 (リサーチフェローもポスドクフェローも同じ) であり、原則として1年ですが、書類選考の成績優秀者 (トップ1割ほど) は2年間サポートしてもらえます。

研究機関の学内選考に通過しないと応募できませんが、リサーチフェロー/ポスドクフェローと2つの区分があり、さらに研究領域もこのように4つあるので、1研究機関から最大で2x4=8人の候補を擁立できる可能性があります。

1) 東洋医学、体力医学、社会医学、栄養学、薬学一般
2) 基礎医学(上記以外)
3) 臨床医学(  〃  )
4) 生命科学と他分野との融合領域(生体情報学、生体医工学、生体材料学など)

医学・生物系で130人も採用枠があるので、学内推薦がもらえれば、あとは3-4倍程度の倍率で採用されます。

早石修記念 (7月)

日本生化学会が2015年から始めた早石修記念海外留学助成は、500万円を1年間補助してもらえる制度です。

日本生化学会の会員でないと応募できないのですが、会員になればすぐに応募できるので、挑戦してみてもいいでしょう。

全国で8枠しかないので、生化学を全面に出した申請でないと厳しいかもしれません。

締め切りは例年だと7月の下旬です。

東洋紡バイオテクノロジー財団 (8月)

東洋紡バイオテクノロジー研究財団の長期研究助成の特徴は、なんといってもその助成額です。1年間だけですが、550万も支給してもらうことができ、国内のフェローシップの中では最大の額です。

39才以下の方を対象に、全国で7名が選出されます。博士号をすでに取得している場合は、財団の理事or評議員から推薦をもらう必要があるので、知っている先生がいないと応募は難しいのが欠点です。

書類を8月に出し、12月に結果発表です。

内藤財団 (8月)

上原と並んで有名な内藤記念科学振興財団の海外研究留学助成金

博士号取得後7年以内の方が応募できますが、所属研究機関から1人という推薦をもらわないといけません。

残念ながら学内選考で落ちてしまったのであまり詳細は分かりませんが、毎年10人が選ばれ、450万円x1年間のサポートをもらえるようです。

国際医学研究振興財団 (9月)

2019年度から新しく始まった、国際医学研究振興財団の海外留学助成の特徴は、最大250万円までで、助成してほしい金額を指定できることです。

他財団と幸いにして両方採用された時に重複受給ができるように、国際医学研究振興財団の申請額を柔軟に変更できます。

1年だけのフェローシップが多い中、2年間の援助というのもありがたい制度です。

採用されるのは全国で5名だけということで、知名度が上がるにつれて厳しい選考になるでしょう。

中冨財団 (9月)

中冨健康科学振興財団の留学助成金は、35才未満の方を対象とした補助金 (50万円) です。

難点は、対象としている研究の範囲がやや狭いことですが、これらのテーマをやりたい方にとっては狙い目です。

課題番号1 筋骨格系及び結合織の機能保持に関する研究
課題番号2 皮膚の健康と老化防止に関する基礎的研究
課題番号3 機能低下、個人差等による薬物等の体内動態に関する研究
課題番号4 疼痛治療に関する研究
課題番号5 運動を中心とした健康増進に関する研究

9月締め切り、1月結果発表です。

武田財団 (10月)

武田科学振興財団の海外研究留学助成の特徴は、なんといっても最大4年間も援助していただける可能性があることです。

正確には年間480万円を2年間支給し、その後については再度審査があって、最大で4年まで年間480万をサポートしてもらえることもあるということです。

残念ながら医師でないと応募できず、学内から1人という縛りもありますが、条件を満たせば挑戦する価値のあるフェローシップです。

全国で毎年10人が採用されます。

まとめ

最後に今回の内容をまとめます。

  • 海外研究留学フェローシップは研究者向けの「返さなくていい奨学金」
  • 新しいフェローシップもできるので情報収集が必要
  • 複数のフェローシップに同時に応募できるのでチャレンジすればどれかは取れるかもしれない

今日も【医学・生命科学のポータルサイト】生命医学をハックするをお読みいただきありがとうございました。

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