インフルエンザの治療薬【使ってはいけない解熱剤もある】
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毎年冬になると、インフルエンザが猛威をふるいます。日本国内だけでも、数百万人から1000万人が毎年罹患しています。

この記事ではインフルエンザに対する薬5種類全てを網羅し、使ってはいけない解熱剤があること、そして逆に安全で薬局でも購入できる解熱剤を紹介します。

インフルエンザ治療薬は増えるのを抑える薬

最も多いA型インフルエンザウイルスは、その表面にヘマグルチニンとノイラミニダーゼというタンパク質を持っていて、その違いから多くの亜型に分けられるということをインフルエンザウイルスの種類と検査【発熱すぐは検査できない】で紹介しました。

ヘマグルチニンはインフルエンザウイルスが細胞に侵入する時に、ノイラミニダーゼはインフルエンザウイルスが細胞から出ていく時に必要です。

インフルエンザウイルスの治療薬は、まさにこの部分を狙った薬です。

体の細胞に入ったインフルエンザウイルスは急激に増殖し、その細胞から飛び出したインフルエンザウイルスが別の細胞に入り、また増殖を盛んに行います。これを繰り返すことで、どんどんウイルスが増えていきます。

抗インフルエンザ薬は増殖を抑えることでインフルエンザに効く薬です

増えるのを抑える薬ですので、ある程度早いうちに使わないとあまり効果がありません。特にインフルエンザ発症から48時間以内に使用するといいと言われています。

インフルエンザの治療薬には大きく3つのタイプがあります (内服薬、吸入薬、注射薬)。

インフルエンザの内服薬 (タミフル・ゾフルーザ)

タミフル (オセルタミビル)

ノイラミニダーゼ阻害薬の一つであり、インフルエンザウイルスが細胞から飛び出すことを邪魔してウイルスの増殖を抑える薬です。

インフルエンザウイルスに直接作用できる世界初の飲み薬で、カプセルにくわえ、子供にも飲みやすいドライシロップもあります。

2001年の発売以来、インフルエンザの治療に広く使われるようになりました。5日間飲み続ける薬で、熱が下がっても途中で飲むのをやめないでください

因果関係は不明ですが、おもに10代の方に異常行動による事故がみられたため、10代の方には控えることが多いです。

タミフルの患者さん向け説明文書はこちらです。

ゾフルーザ

ウイルスが細胞内で増えるのに必要なCapエンドヌクレアーゼを阻害することで、ウイルス増殖を抑える薬です。

タミフルと違い、1回の内服でいいというメリットもあります。

ゾフルーザの患者さん向け説明文書はこちらです。

しかしながら、タミフルと比べた時の有効性に差はなく (タミフルとほぼ同じ)、それでいて薬価は5~10倍になっています。

さらに、副作用に関するデータが他の薬に比べて圧倒的に少なく、服用した方のおよそ1割に耐性ウイルス (ゾフルーザが効かないように進化したウイルス)が見られるようになったとも報告されています。

このため、現時点では、相変わらずタミフルを処方する医療機関がずっと多いです。

インフルエンザの吸入薬 (リレンザ・イナビル)

リレンザやイナビルは専用の吸入器を使って吸入する薬です。

いずれもタミフルと同じくノイラミニダーゼを標的としていて、インフルエンザウイルスが細胞から出るのをブロックすることで別の細胞に感染しないようにする薬です。

リレンザ・イナビルの吸入のやり方 (動画)

吸入の仕方は動画の通りです。不明な点は医師または薬剤師にお尋ねください。
リレンザの場合はタミフルと同じく5日間必要です。
https://youtu.be/p0OFlWYdjXA

リレンザの患者さん向け説明文書はこちらです。

それに対して、イナビルの場合はより長期間持続するように設計されているので、1日1回の服用のみでOKです。
https://youtu.be/70byt9uy2eU

インフルエンザの注射薬 (ラピアクタ)

インフルエンザ薬には点滴のものもあり、ラピアクタ点滴薬といいます。これは、入院が必要な患者さんや、発達障害などがあって普段から服薬ができない方向けです。

タミフルと同じく、インフルエンザウイルスが細胞から出るのをブロックします。

ラピアクタの患者さん向け説明文書はこちらです。

以上をまとめると、現在使われているインフルエンザ薬はこのようになります。

承認年 服薬期間, 方法
タミフル 2001年 1日2回, 5日間, 経口
リレンザ 2001年 1日2回, 5日間, 吸入
イナビル 2010年 1回, 吸入
ラピアクタ 2011年 1回, 点滴
ゾフルーザ 2018年 1回, 経口

解熱剤の中には使ってはいけないものがある

インフルエンザの症状についてはインフルエンザの症状と経過 【熱が下がって2日は登校禁止】に書いたように突然の発熱を中心してせきやたんが出ることがあります。

これらの症状を和らげる治療として、高熱には解熱剤、せきには鎮咳薬(せきどめ)、たんがひどい場合は去痰薬(たんを切れやすくする)などが使われることがあります。

このうち、解熱剤には注意が必要です。解熱剤には、大きくアセトアミノフェンとNSAIDsという2種類がありますが、このうちNSAIDsの一部をインフルエンザの時に使うとインフルエンザ脳症などの重大な症状が出てしまう恐れがあります。

痛み止めであるボルタレン・ポンタールを使ってはいけない

痛み止めとして特にご高齢の方に処方されているボルタレン (ジクロフェナック)やポンタール(メフェナム酸)は解熱剤としての作用もありますが、これらをインフルエンザの時に使ってはいけません。

普段から痛み止めを服用している方は注意する必要があります。

また、他のNSAIDsの類もできるだけ避けたほうがよいと言われており、イブプロフェンなど市販の熱冷ましの中にもインフルエンザの時には服用できないものが多いです。

インフルエンザの時にも安全に使える解熱薬

大人も子供も、インフルエンザの時に使う解熱剤は安全性の高いアセトアミノフェンがいいと、日本小児科学会をはじめいくつもの医学団体が推奨しています。

アセトアミノフェンは、効果はNSAIDs系の薬には劣るのですが、安全な解熱薬として古くから認知されています。代表的な商品としてはカロナールやアンヒバなどがあります。

現在ではアセトアミノフェン製剤を薬局でも購入することができます。

例えば病院で医師が処方するアセトアミノフェン製剤であるカロナールは、薬局では例えばタイレノールという名前で販売されており、Amazonなどでも取り寄せができます。


小児用として医師が処方するアンヒバは、同一成分が小児用バファリンに入っていて、これも処方箋なしで買うことが出来ます。

まとめ

最後に今回の内容をまとめます。

  • インフルエンザ治療薬はウイルスがこれ以上増えないようにする薬
  • 基本はタミフルで、それ以外にいくつかの薬がある
  • 解熱剤はアセトアミノフェン1択

今日も【生命科学のポータルサイト】生命医学をハックするをお読みいただきありがとうございました。

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