医師執筆記事 (厚労省医籍登録番号499533)

大腸がんはこの30年で2倍になっている病気です。
早期の大腸がんは内視鏡で切除し根治を目指せることは大腸がん検診と内視鏡検査を解説する【内視鏡以外の新しい検査法も】という記事に書きました。

この記事では、もう少し深いところまで大腸がんが進行している場合に行われる、外科手術や薬物治療についてその概要を紹介し、後半では治療を受ける前の準備や、手術後の食事など日常生活で気をつけたほうがいいことについてまとめます

外科手術が大腸がん治療の標準療法である

大腸がん検診と内視鏡検査を解説する【内視鏡以外の新しい検査法も】という記事でも紹介しましたが、大腸の壁は6層構造になっていて、一番内側の粘膜から大腸がんができます

大腸の構造。最も内側の粘膜からがんができる。https://minds.jcqhc.or.jp/n/pub/1/pub0042/G0000215/0005より引用

 

大腸がんは、「がんが大腸の壁にどれだけ深く侵入しているか」「周囲のリンパ節にどれくらいがん細胞が浸潤しているか」「転移の有無」などの指標 (TNM分類, Tはがんtumor, Nはリンパ節lymph node, Mは転移metastasisを表す) から得られた進行度に応じて治療が行われます

MedicalNoteさんにわかりやすい図が掲載されていたので引用させていただきます。

大腸がんのステージ分類。どこまでがんが浸潤しているかが1つの指標になる。

がんが、大腸の粘膜または粘膜下層の浅い部分にとどまる場合には、転移の可能性がないので内視鏡治療で切除することができます。

だからこそ便潜血検査が大事ですし、今の時代は家庭で簡単に検査できるキットも市販されています。便潜血検査や、内視鏡治療については大腸がん検診と内視鏡検査を解説する【内視鏡以外の新しい検査法も】をご覧ください。

がんがもう少し深く、具体的には粘膜下層というところより深くがんが進行していた場合、手術が行われます。

大腸癌がんは、がんができた場所によって結腸がん直腸がんに大きく分けられ、それぞれ手術の方法が違います。肛門に近い直腸がんの方が、より難しい手術になります。

一昔前は、開腹手術(標準的には3時間前後の手術時間) といって、腹部を開いて大腸がんを切除するというのが主流でした。
開腹手術は、外科医ががんを直接見て確認できるので、がんの取り残しの危険性が少なく、もし予期せぬ出血などがおきてもどこから出血しているのかを突き止め迅速に対処することができます。一方で、傷は大きくなってしまうという弱点もあります。

近年は、腹腔鏡手術 (標準的には4-5時間の手術時間) という、お腹にいくつか開けた小さな穴にまず炭酸ガスを入れてお腹を膨らませ、その状態でカメラのついた手術器具を穴から入れて、モニターの画像を見ながらがんを切除する方法もあります。

これは開腹手術よりも傷が小さく、手術後の痛みが少ないのがメリットですが、反対に熟練した外科技術が必要で、急変時の対応が開腹手術のように容易にはできないという欠点もあります。患者さんによってどちらの方法がいいのか変わるので、外科の専門医の判断が必要です。

より最近は、腹腔鏡手術の発展としてより精密な動きができるロボット支援手術を導入している医療機関もあります。

ロボット手術は大腸がんよりも前立腺がん治療で発達していて、まるでSF ! 手術するロボットが広まっているという記事を以前書きました。

ロボット支援手術の例。ダビンチというロボットをここでは使っている。

手術と抗がん剤治療を組み合わせる

手術中に目で見えるがんを全て取り切ることができても、目に見えない小さながんがまだ残っている可能性があります。

そのため多くの場合は、がん細胞の増殖を防ぐために抗がん剤や、分子標的薬などによる薬物療法が行われています。
抗がん剤はがん細胞の分裂や増殖を防ぐことでがんの進行を抑えることができます。

分子標的薬は、がん細胞の増殖に関わる特定の分子を標的にする新しい薬です。
昔からの抗がん剤に比べ副作用が少ないというのが特徴です。

近年注目されているのは、免疫チェックポイント阻害薬です。
免疫細胞の働きががん細胞によって抑えられているので、それを解除することで免疫細胞ががんを攻撃できるようになります。

一部の方には効果がある薬ですが、どの方に効果があるのかは、現状のところは「使ってみないとわからない」状態で、非常に高額の医療費がかかります。

最近では手術前に放射線治療をして、がんを小さくしてから切除する治療も行われるようになりました。

しかし、放射線の影響で、排尿や排便障害、放射線誘発がんなどが起こる可能性もあります。
そのため現状のところ、日本ではあくまで手術が標準治療になります。

手術前の準備

タバコを吸う方は、予期せぬ合併症を引き起こすことがあるので、手術前には禁煙しましょう。

手術には不安があるのは当然ですよね。
不安を軽減するためには,大腸がんの病気や治療について正確な知識を集めるのが大事です。
ご家族と病気についてインターネットで調べたり不安を話すことで、軽減されることもあります。
もちろん主治医の先生との良好なコミュニケーションが大切なのはいうまでもありません。

手術を受けた後は

手術翌日以降はできる限り歩いてください。ベッドから離れている時間が多ければ、それだけ早く回復することがわかっています。
退院まで個人差はありますが、およそ約2週間程度の入院になります。

手術後の食事

水分を吸収する働きがある大腸の手術の後は、便通異常が出やすくなります
水分吸収量が減れば下痢になりますし、大腸の蠕動運動(ぜんどううんどう, 消化物を送り出すような運動) が減ると便秘になります。

食事療法で完全に防ぐことができるわけではありませんが、症状が出にくくすることは可能です。

何を食べてもかまいませんが、食物繊維が多く含まれているものや消化しにくいものは、腸閉塞の原因となることがありますので、術後3ヵ月は控えたほうがいいです。次のことに注意して、バランスの良い食事を心がけましょう。

一度にたくさん食べすぎないように

食べすぎると、腸閉塞 (イレウス) や下痢を起こす可能性があります。
退院後1〜2ヵ月くらいは、少しずつ量を増やしていき、1回の食事を腹7分目程度までにした方がいいです。

規則正しい食事を、ゆっくりよくかんで食べる

不規則な食事は、便通を不安定にし、下痢、便秘、頻便を起こしやすくします。
よくかむことには、腸での消化吸収を助ける効果があります。

アルコールはほどほどに

大腸の手術のあとに、お酒を飲んではいけない医学的な理由はありません。
しかしアルコールを飲むと食べすぎたり食生活を乱しやすいので気をつける必要があります。

まとめ

最後に今回の内容をまとめます。

  • 大腸がんが浸潤している場合、外科手術が標準治療
  • 開腹手術と腹腔鏡手術には一長一短あり
  • なるべく早くから歩いた方が、回復が早い
  • 何を食べてもよいが、ゆっくりとよく噛んで

今日も【医学生物学のポータルサイト】生命医学をハックするをお読みいただきありがとうございました。

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