学会ポスター発表前に知っておくべきこと全て 【デザインのコツから発表後の注意点まで】

学会発表は大きく口頭 (オーラル) 発表と、ポスター発表からなっています。全国レベルの大きな学会では、口頭発表 (パワーポイントなどのスライドを使った発表) はある程度熟練した研究者が行うことが多く、初めての学会発表はポスター発表ということが多いと思います。

この記事では、ポスター発表デビューをする前に知っておきたいこと全て、つまりどのようにポスターを準備するのかとか、発表時の注意点、そして発表後のことについてまとめました。

日本内科学会や分子生物学会をはじめ、これまで全国規模、あるいは海外学会で2桁の発表をしていますので、特に生命医科学系の学会について書いています。

学会演題登録

ポスター発表をする前には、その演題を学会に登録しないといけません。演題タイトル、要約 (抄録) については指導してくれている先生によく見ていただきましょう。

特に要約は、これから学会までの間にやる予定の研究についても言及してしまうと、予定通り研究が進まなかった時に困るので注意です。

さて、無事に演題を投稿し、学会参加登録も終えたら、いよいよポスターの準備です。

学会ポスター発表準備

ポスターは基本的にA0サイズ

ポスターは学会が用意したボードに貼り付ける形で発表するので、そこに収まる範囲なら大きさに制限はありません

これまで10を超える発表をしましたが、A0サイズで用意しておけばどんな学会でも発表できます (もちろん学会の規定は確認が必要です)。

日本は縦長ポスターですが、海外の学会では横長のことも多いことには注意が必要です。

A0ポスターの作り方は、イラストレーターまたはパワーポイントでA0サイズを設定して、そこに発表内容を書いていきます。ページ設定の仕方はネットで探すともっと専門的で分かりやすいサイトがたくさん出てくるのでここでは割愛します。

最後にPDFに出力して、A0に対応している印刷機で印刷します。最近は印刷をしてくれる業者さんもたくさんあるので、好みのところでいいでしょう。

ポスターの字体はゴシック体を使う

日本語の自体は、大きく「明朝体」と「ゴシック体」に分けることができます。明朝体というのは、書道の時間に習う書き方であり、横線よりも縦線が太く、横線の右端や曲り角に三角形の山がある書体です。ワードでは「MS明朝」や「ヒラギノ明朝」などがそれにあたります。

ゴシック体は、横線と縦線がほとんど同じ太さで、ウロコがない書体です。「MSゴシック」「ヒラギノゴシック」などが代表的です。

ポスター発表を含む研究発表では、明朝体を使ってはいけません。全てゴシック体が普通です。

ポスターは、要点だけを端的に説明するものです。「読む」よりも「見る」要素の方が強いので、遠くからでもしっかりと字が認識できるゴシック体の方が望ましいのです。

英語の書体も大きく2つあり、明朝体に相当する「セリフ体」の代表例である「Times New Roman」などと、ゴシック体に対応する「サンセリフ体」つまり「Arial」「Helvetica」などが有名です。

日本語と同じ理由で、英語のポスターにもサンセリフ体をつかうべきです。

文字サイズは18ポイント以上

文字サイズですが、最低でも18ポイント以上をオススメします。

目安として1-2メートル離れたところからでも、問題なく文字を読める大きさでないといけません。

ポスターの文字が小さいと、読む人はそれだけポスターの近くで読む必要があり、そのため一度にポスターを見ることができる人の数が減ってしまいます。

いろいろ詰め込みたくなるところをこらえて、特に重要なデータだけに絞って大きめの文字で作る必要があります。

ポスターの伝わるデザイン

短い時間で研究の要点を伝える必要があるポスターでは、自己流の表現は不要です。それは芸術家やデザイナーさんにお任せして、科学者は客観的かつ一見して分かりやすくデータを見せることが必要です。

まず大前提として、余白をしっかり取りましょう。「文字と文字」や「文字と図」の間に、スペースをとり、ゆとりをもって配置できるような分量ということです。

また、グループ化されたポスターだと、一見しただけでどこに情報が書かれているのか分かるようになります。関連の強い文や図を近くに配置し、そうでない場合はスペースをさらに広くとるのです。

見やすくするためのすぐできるもう一つのコツは、きちんと揃えることです。すぐにできるのに大きな効果があります。

赤と緑の色はなるべく控えましょう。これらの色は、一定の割合でいる色盲の方にとって最も区別しにくい色です。

研究者が暗黙のうちに認識しているユニバーサルデザインについて、伝わるデザインというサイトをチェックしましょう。1時間くらいで読めるのに、内容はとても濃いです。これらの点を踏まえてポスターを作っていきます。

学会のポスター発表時間5分を目安に原稿を作る

初めての学会ならば特に発表の練習が必要です。原稿を用意しましょう。ポスター発表の目安は5分です。

早口だと聞き取りにくいので、少しゆっくり目だと感じるくらいの速さで5分です。NHKのアナウンサーは1分間に300文字を守っているというのは有名な話ですが、これくらいが一番聞き取りやすいです。

1分間300文字なら5分で1500文字、原稿用紙に換算すれば4枚弱です。この時間制限の中で話せるのは本当に大事な部分だけです。それ以外の部分はどんどん削りましょう。

話せなかった部分については、質疑応答で聞かれた時に答えればいいでしょう。

指示棒を用意する

地味ですが学会発表であると便利なのは指示棒です。A0サイズの大きなポスターだと、どこを指しているのか分かりにくく、かといって自分が動くと後ろの人に見えなくなってしまいます。

そんな時に伸縮できる指示棒があればいいですね。普通の店ではなかなか見つけにくいですが、Amazonでは取り扱っているので学会前に取り寄せしておくと発表がスムーズです。

学会発表の本を読む

学会発表に限ったことではないですが、インターネットが普及した現代でも、本を読むことで系統的な知識を得られます。

学会発表についても、良書がいくつもありますので、これらを読んでから学会にいくのとそうでないのでは雲泥の違いが出ます。


上で述べた伝わるデザインの書籍版もあります。


英語の学会に参加するのであれば、学会でよく使うフレーズを勉強しておくとスムーズですね。

学会ポスター発表当日

さて、いよいよ当日。一番大事なポスターを忘れないようにしましょう。

服装については、医学系か生命科学系、それに国内か海外かで違います。過去に参加したことのある方に確認しましょう。

国内 (医学系) 国内 (生命科学系) 海外
口頭発表 スーツ スーツ スーツ
ポスター発表 スーツ スーツ or 私服 私服
発表しない参加者 スーツ or 私服 私服 私服

学会ポスター発表は、自分の研究を専門家に聞いてもらえる貴重な機会です。熟練した研究者からアドバイスがもらえることもあるでしょう。ぜひ楽しんで発表してください。
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学会が終わった後にするべき3つのこと

学会が終わった後にするべき最も大事なことは、自分の発表に対してのコメントをまとめることです。貴重な提案や批判を受けて、研究の方向性をもう一度考える絶好の機会です。

次に大事なことは、今回発表したことを研究業績集に追加することです。ポスター発表も立派な業績ですが、いつどこでどんな演題で発表したのか忘れてしまいがちです。すぐに情報をまとめることが大事です。

3つ目として、次のポスター発表の時にはもっといいものが作れるよう、今回の学会で他のポスター発表をみて学んだ良いデザインをまとめて次回は真似しましょう。

デザインセンスがもともとある研究者なんてごくごく一部です。デザインセンスがない人ほど、良いものを貪欲に吸収することでどんどん良くしていくことができますね。

まとめ

最後に今回の内容をまとめます。

  • ポスター発表はユニバーサルデザインを意識する
  • 学会発表前には本で知識武装してから
  • 発表のフィードバックを次に生かす

今日も【生命科学のポータルサイト】生命医学をハックするをお読みいただきありがとうございました。

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