インフルエンザ予防ワクチンの話 【さまざまな疑問に答えます】
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インフルエンザの予防に有効なのがワクチン。今回は、なぜ毎年、どうやって作られているのか、いつ接種すればいいのか、副作用は、などについて解説します。

インフルエンザワクチンはなぜ毎年打つのか

流行を起こすインフルエンザウイルスにはA型とB型の2種類があり、さらにA型には多くの異なる株が存在します。詳しくはインフルエンザウイルスの種類と検査【発熱すぐは検査できない】に書きました。

インフルエンザの95%はA型インフルエンザウイルスによるものですが、これは変化しやすく、大流行を引き起こすウイルス株は毎年変わります

このため、毎年新しいワクチンを打つ必要があります。

インフルエンザワクチンの作られ方

それぞれの年のワクチンは、インフルエンザの研究者が翌年に流行すると予測した3~4種のウイルス株を標的としています。あくまで予測なので外れることもあり、その場合はワクチンを打っていてもインフルエンザにかかります。

鶏の卵からワクチンはつくられている

ワクチンを作るには、原料となるウイルスが必要です。ウイルスがよく増えるということ、簡単かつ大量に手に入るということで、鶏の卵がワクチンの製造に使われています

スーパーなどで売っている鶏卵とは異なり、「孵化(ふか)鶏卵」というものが使われています。

孵化鶏卵を消毒し、小さな穴を開けます。この穴からインフルエンザウイルスを注射し、穴をふさいでウイルスを増やします。2日後に、鶏卵の中にたまったウイルス液を集めて、ウイルスを精製・凝縮し、感染性をなくす処理 (不活化処理) をしたのがワクチンです。

https://www.asahi.com/articles/photo/AS20180215001400.htmlより

うまくウイルスが増えれば、1個の鶏卵から大人1人分のワクチンを作ることができます。

すべてではありませんが、インフルエンザワクチンの多くは、卵の中で増殖させたウイルスから作られるため、重度の卵アレルギーがある人は、インフルエンザワクチンに対して強いアレルギー反応を起こす可能性があります。

また、このワクチン製造には半年間かかるので、実際に流行し始めてからワクチンを作っても間に合いません。そのため、流行前の予測の段階でワクチンを作り始めないといけないのです。

ワクチン接種でインフルエンザに感染することはない

インフルエンザワクチンは不活化ワクチンです。つまり、インフルエンザウイルスの活性を失わせたあと、免疫をつくるのに必要な成分を取り出しています。この状態には病原性はありません。

ウイルスとしての働きはないので、ワクチン接種によってインフルエンザを発症することはありません

インフルエンザワクチン接種の時期と副作用

インフルエンザワクチンの接種経路と回数

インフルエンザワクチンの接種としては、通常は不活化処理されたウイルスを筋肉内に注射します。血液中に入れるわけではありません。

不活化処理されたウイルスを多く含んだインフルエンザワクチンを注射する予防接種は、特に65歳以上の人に勧められています

ワクチンの摂取回数

ワクチンの接種回数については13歳以上の方は原則1回で、6ヶ月から13歳未満の方は2回です。

6カ月以上3歳未満の方 1回0.25mL 2回接種
3歳以上13歳未満の方 1回0.5mL 2回接種

6ヶ月未満の赤ちゃんについては、ワクチンの効果が十分に出ないので、痛い思いを2回もさせてワクチンを打つメリットがないと考えられています。

乳幼児をインフルエンザウイルスの感染から守るには、ワクチン接種に加えて、インフルエンザウイルスへ暴露される機会をなるべく減らすことが大切です。

周囲の大人たちが手洗いや咳エチケットを徹底することや、流行時期は人が多く集まる場所に行かないようにすることなどが必要です。

鼻へのスプレーワクチンも開発途上

フルミスト (FluMist)という、霧状の生ワクチンを直接鼻の中へ吹き付けるインフルエンザワクチンがあります。
https://youtu.be/Oy-xnimVec0
2003年にアメリカで認可され、ヨーロッパでも2011年に承認されました。残念ながら日本ではまだ厚生労働省が認めていません (自由診療で接種することはできます) が、欧米で先に承認された薬は日本でも遅れて承認されることが多いので、日本で使われるようになるのもそう遠くないと思われます。

注意点として、この鼻スプレータイプのワクチンは「生ワクチン」であり、注射ワクチンのように不活化していないので、弱いながらもウイルスとしての性質があります。つまり免疫が弱い方の場合には感染する恐れがあるので、免疫能が保たれていて、50歳未満の妊娠していない健康な方のみしか接種できません

インフルエンザワクチンはいつ受けるのか

インフルエンザワクチンは接種してから効果が出るまで2週間程度かかり、その後約半年間効果が持続します。 ・

インフルエンザの流行のピークは例年だと12月-2月ですので、ワクチン接種を受けるのに最適な時期は9~11月です。

インフルエンザワクチンの副作用

接種した場所の赤み、はれ、痛みなどが見られることがあります。等が挙げられます。これらは10~20%の方に起こりますが、通常は2~3日でなくなります。

全身性の反応としては、発熱、頭痛、寒気、だるさなどが見られます。接種を受けられた方の5~10%に起こると言われていますが、こちらも通常2~3日でなくなります。

インフルエンザワクチンの最大の目的は重症化の予防

インフルエンザワクチンはインフルエンザにかかりにくくするものと思われがちですが、最大の目的は重症化の予防にあります。

インフルエンザは高熱が出るなどして大変ですが、それ以上に、特に免疫が十分でない方の場合は肺炎など重篤化することがあります。具体的にはインフルエンザの症状と経過 【熱が下がって2日は登校禁止】をご覧ください。

重篤化して命に関わる状態になることを予防することがワクチンの最大の目的です。特に65歳以上の方は、インフルエンザワクチンは定期予防接種 (法律に基づいて市区町村が実施する予防接種)の対象にもなっています。かかりつけの先生に相談しましょう。

まとめ

最後に今回の内容をまとめます。

  • インフルエンザワクチンは鶏の卵から作られる不活化ワクチン
  • 9-11月がワクチン接種の一番の理想
  • インフルエンザ予防接種の最大の目的は重篤化を防ぐこと

今日も【生命科学のポータルサイト】生命医学をハックするをお読みいただきありがとうございました。

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