メモというのは、忘れないように書く、いわば忘備録のように考えている人が大多数なのではないだろうか? 今回紹介するのは、そのような用途よりももしろクリエイターこそメモをするべきだと提唱する「メモの魔力 -The Magic of Memos-」である。
筆者は若手実業家でSHOWROOM創業者の前田裕二氏。筆者は365日、とにかくおびただしい量のメモをとっていて、朝起きてから夜寝るまで、いつでもメモがとれる状態にあるとのこと。
この「魔法の杖なんてない」と言われる世知辛い社会において、メモこそが自分の人生を大きく変革した「魔法の杖」であると直感している著者がメモの魔力を語る話題書である。
メモやノートは、記憶をさせる「第2の脳」。いわば「外付けハードディスク」としてあとで検索できるように書き、そこに記憶の部分を頼ることで、空いた自分の脳の容量を創造力を要することにめいっぱい使えることにメモの本当の役割がある。人生の時間は有限であり、「より本質的なことに少しでも多くの時間を割くこと」が大事だと筆者は考えていて、本質的なこと、つまり筆者の定義では「コピーではなく創造、代替可能物ではなく代替不可能物、ということ。つまり、クリエイティブで新たな知的生産につながる思考や、自分にしか思いつかないような代替不可能性の高い思考」に少しでも多く時間を割くために、筆者はメモをしている。メモは、情報伝達ではなく、知的生産に使ってこそ初めて本領が発揮されるということだ。
筆者はノートを見開きで使用している。詳細はぜひ本書を手にとっていただきたいが、「ファクト→抽象化→転用」という一連の流れを推奨し、これが、知的生産メモにおける最大のポイントと述べている。
また、メモをとる習慣があると「アンテナの本数」を増やすことができ、日常の出来事をアイデアに転換できる確率が高まるというのも魅力的だ。量が質を生むというのは、いつの時代も、どのジャンルにおいても、大体の場合において誰も覆すことのできない真理だ。
メモをとることで、その場で展開されている議論を綺麗に構造化、つまり議論の全体像が常に 俯瞰 で見られて、今どの話題を、どんな目的で、どこまで話しているのか、ということを瞬時に把握する力が高まっていく。
まさに筆者が言うように、これからの未来を生きる人類すべてにとってメモが見直されるべきだし、身につけねばならない基本リテラシーになっていくであろう。大いに参考になった。
「メモは姿勢である」。筆者の弛まぬ知的好奇心と、知的創造に対する貪欲なスタンスは研究者にも通じるところがあるなと思った。