心肺蘇生法とAEDの使い方 【いざという時のために救急講習を受けよう】

いざ、というときに正しく心肺蘇生をできる自信はありますか?
実は救急車が来るまでの間に周りの方が処置をしていないと、かなり厳しい結果になってしまいます。

この記事では、知っておきたい救命処置についてまとめました。

救急車到着までの8分が大事

救急車が到着するまでの間、患者さんのそばにいる人達をバイスタンダーといいます。このバイスタンダーの方々が果たす役割が、救急医療ではとても大きいのです。

119 番通報をしてから、救急車が現場に到達するまでの時間は全国平均で約 8 分。この時間を「空白の時間」としてしまうかどうかによって、患者さんの回復具合は大きく変わります。

救急隊の到着までに、もしバイスタンダーが適切な処置を施せば、以後の医療に大いに貢献し、ダメ ージを最小限度に食い止めることができます。

例えば、心肺停止状態に陥った人を例にとってみましょう。

グラフの横軸が心肺停止からの経過時間、縦軸がその患者さんが蘇生する確率を表したものです (ドリンカーの救命曲線と呼ばれています)。

http://www.kura-hcu.jp/webcoop_health/backnumber_h001_h100/health07_09.html

これをみると、時間の経過とともに急激なカーブを描きながらどんどん蘇生率が低下していくことが分かります。救急車が来るまでの平均時間である8分も何もされていなければ、蘇生に成功する可能性は残念ながらかなり低いといわざるを得ません。

人体は、あちこちで酸素が必要です。特に最も酸素の供給が必要なのが脳で、脳は酸素供給が 5分止まっただけで死滅し始めてしまいます。

いったん死滅した脳細胞は現代医学では再生できないので、バイスタンダーが救急車到着までの間に心肺蘇生をしていないとたとえ救命には成功しても脳の後遺症を残す可能性は高いと言えます。

身近な人が急に倒れる可能性もないとは言えません。いざ必要になったときのために、初歩的な救急救命の方法を学んでおく価値は十分にあります。

まず意識と呼吸の確認

反応 (意識)の確認

肩を軽く叩きながら大きな声をかけ、反応を確認します。反応がない あるいは鈍い場合は、すぐに助けを求め (人を集め)、119番通報とAEDの手配を依頼します。

日本赤十字社が作っている動画で手順を確認してください。

呼吸の確認

胸部と腹部の動きを観察して、呼吸をしているのか判断します。普通通りの呼吸をしているのか、あるいはその判断に自信が持てない場合は、直ちに胸骨圧迫 (心臓マッサージ) を開始します。

動画をクリックすると、呼吸の確認のところから再開します。

胸骨圧迫 (心臓マッサージ)

従来は、ABCといって、心臓マッサージ (Circulation, C) よりも先にA (気道の確保)とB (呼吸) の処置をするという順番でした。

しかし2010年に何よりもまず先にC (心臓マッサージ) と方針が変更になっています。

両方の手を重ね、手のひらの付け根の部分で胸の中央を圧迫します。目安として、左右の乳頭の真ん中あたりです。

http://www.jrc.or.jp/activity/study/safety/airway/

http://www.jrc.or.jp/activity/study/safety/airway/

押す深さは1分間に100回以上 (けっこう速いスピードです)、1回につき5 cm以上押して、最後までしっかり戻します

骨折が怖くて心臓マッサージができないという方もいますが、大前提として患者さんの骨は折れますし、それが原因であとで訴えられて敗訴することもありません

赤十字社の動画をクリックし、心臓マッサージのところからご覧ください。

人工呼吸も可能ならば、心臓マッサージ30回の後に1秒かけて息を吹き込むことを2回行い、また心臓マッサージ30回をしてというように繰り返すのがベストです。

ただし、人工呼吸は必須ではありません。自信がなければ心臓マッサージを救急隊が来るまでの間、ひたすら繰り返すだけでもやらないよりはずっと大きな効果があります。

AEDの使用

AEDとは

医療ドラマなどで医師が電気ショックをかけるシーンがありますね。

原理的にあれと同じことを行うのがAED (自動体外式除細動器 automated external defibrillator) です。

公共施設などに置かれている、このようなものがAEDです。

心臓がとまる原因はいろいろありますが、特に若い方の場合は心室細動などの致死的な不整脈 (心臓のけいれん) によることがほとんどです。AEDは、その致死的な不整脈が起きているのをとめることができる機械です。

以前は医療の専門家でない一般の方が使えるものではなかったのですが、救えたはずの命をAEDを使えなかったために結果的に救えなかったこともあり、一般の方でも使えるようになりました。

AEDについては、日本心臓財団が作成した「君の瞳」という実話に基づいた動画が有名で、YouTubeでは30万回以上見られています。

これをみると、AEDを使えるようになることの重要性が分かると思います。

AEDの使い方

使い方は、まず電源を入れ、パッド (大きいシール) を右胸の上の方と、左脇の下の方に貼ります。パッドにはどこに貼ればいいのか絵が描かれているので間違うことはないでしょう。

パッドにつながっているコネクターを機械本体に差し込むと、心電図を自動で解析し、電気ショックが必要な場合には音声で教えてくれます。

患者さんから離れるように周囲の人に伝えた後、ショックを実行するボタンを押すだけです。

動画をクリックしてAEDを使うところからご覧ください。

AEDがある場所

AEDはどこにあるのでしょうか?なるべく5分以内に戻ってこれそうな場所で、次のような場所に行って聞くといいでしょう。

病院などの医療機関
(大都市なら)駅
学校、官公庁、スポーツセンターなどの公共施設
大型デパートなどの商業施設

また、日本救急医療財団ではAEDマップを公開していて、AEDの設置場所を検索できるようになっています。

日頃から、万一を想定してチェックしておきたいですね!

救急講習のすすめ

この記事で紹介したような心肺蘇生法は、実際にやったことがないととっさの時に対応できないかもしれません。

自動車教習にも組み込まれているので多くの方は一度は経験したことがあると思いますが、この機会にぜひもう一度復習をしておくのはいかがでしょうか?

消防や日本赤十字社、各地方自治体などが定期的に全国各地で講習会を開いています。お住まいの地名で検索して、日程が合う日の講習を受けるのをオススメします。

まとめ

最後に今回の内容をまとめます。

  • 呼吸しているかわからなければ直ちに心臓マッサージ
  • AEDを使えるようなっておこう
  • 救命講習会は定期的に開かれている

今日も【医学・生命科学・合成生物学のポータルサイト】生命医学をハックするをお読みいただきありがとうございました。

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