深層学習で生物の動きを観察する【無料で使えるツール】
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研究者たちは長い間、動物の動きを追跡することに興味を持ってきました。というのも、動きは動物の脳内の意思をうまく読み取ることだからです。

今回は、人工知能を活用したツールについて紹介します。

深層学習以前の動き検出ツール

何世紀も前から動物の追跡が行われてきましたが、これまでは手で行動を記録するのに何時間もかかっていました。そして今世紀に入って、コンピューターを使ってより客観的に追跡することができるようになりました。

コンピューター言語MATLABで開発されているDLTdvというツールがあり、これはオープンソースということもあり広く使われています。

上の動画の例のように、このツールを使えば動物個体の動きを簡単に追跡できます。

しかし、例えば個々の動物ではなく群れの動きを追跡したくなった時には、新しいアプローチが必要です。適切な設定パラメーターを手動で合わせなくてはいけません。

深層学習を使った動物追跡ツール

ニューラルネットワークと呼ばれる計算法を使ってデータの微妙なパターンを認識する人工知能手法である深層学習は、動物の動きを検出するツールにも使われるようになってきました。

DeepLabCutは、ハーバード大学のグループによって開発されたオープンソースのツールで、動画の中の動物の姿勢をニューラルネットワークで追跡することができます。

同じようなツールにLEAP Estimates Animal Poseというのもあります。

実験動物だと50から100のラベルつきのデータが必要で、密接に関わりあう複数の動物の映像をよりうまく処理することができるSocial LEAPと呼ばれる別のツールも開発中です。

スイス連邦工科大学のチームが開発したDeepFly3Dは、深層学習により動画中の動物の体の各部位の座標を決定できます。電極を埋め込んだマウスや、トレッドミルの役割を果たす小さなボールの上を歩くミバエなど、何かにつながれた1匹の実験動物の姿勢を追跡します。

DeepPoseKitと呼ばれるツールも開発されています。
https://youtu.be/lsnex6k4NRs?list=PLV0QvQE05BgVwcon5oShzFBMrJoKniVs0
これらのツールは、チーターの狩りの動きの研究からゼブラフィッシュの集団行動まで、あらゆる研究に使われています。

複数のツール、複数の動物

複数のツールをテストしたければ、ハワード・ヒューズ研究所のグループによって開発されたAnimal Part Trackerを試すことができます。

ここでは、DeepLabCutやLEAPで使われているアルゴリズムの修正版や、別のアルゴリズムを含む、いくつかの姿勢追跡アルゴリズムを選択することができます。

複数の動物を研究する科学者は、それぞれの動物を区別して追跡する必要があります。この課題に対処するために、idtrackerというツールが開発されました (idTracker: Tracking individuals in a group by automatic identification of unmarked animals. Nat. Methods 2014)。

動物の動きの意味を調べるツール

動物の動きを理解するのに役立つツールもあります。例えば、動物の姿勢座標をグルーミングなどの動作として理解したいこともあるでしょう。もし、興味のある行動を知っていれば、Janelia Automatic Animal Behavior Annotator (JAABA)を使って注釈を付け、動画中の動物の動作の意味を自動的に識別することが可能です。
https://youtu.be/6hdyVwNKepQ

JAABAと違い、事前に動物の動作を定義する必要のない教師なし機械学習法も開発されました。頻繁に繰り返される動きを識別するMATLABツールMotionMapperというツールがあるのです。

これらのツールを組み合わせることで、生物の動画データから新しい意味を引き出すことができるようになってきています。

また、このテーマと関連した記事として機械学習に使える医療系データセット【随時更新】も書いていますので参考になればどうぞ。

まとめ

最後に今回の内容をまとめます。

  • 動物の動きの追跡は深層学習を使ったものへ移行
  • 複数の動物がいても区別できる
  • 動きの意味を見出そうする動きもある

今日も【医学・生命科学のポータルサイト】生命医学をハックするをお読みいただきありがとうございました。

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