骨粗鬆症の正しい検査と最新の治療薬【骨粗鬆症の予防法も】
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医師執筆記事 (厚労省医籍登録番号499533)

今増えている「いつのまにか骨折」。その原因に骨粗鬆症という骨の病気があります。

上の絵のように、左側の正常の骨と比べ、右の骨粗鬆症は骨がスカスカになってしまう病気です。
この記事では骨粗鬆症について、検査や治療法、予防についてまとめました。

骨粗鬆症 (こつそしょうしょう) とは「いつのまにか骨折」の原因になる病気

私たちの体を支えている骨は、肌や髪の毛とは異なりその衰えを目で見ることはできません。

骨の量を「骨量」といいますが、 骨量は20歳ぐらいまでは増え続け、40歳ぐらいまではそのままの状態で維持されます。

しかしその後に減り始め、特に50歳から65歳の間に急激に減少し、その後も緩やかに減り続けてしまいますMSD製薬さんのホームページに分かりやすい図があったので引用させていただきますね。

Source: http://www.msd.co.jp/healthcare/osteoporosis/osteoporosis/about/home_3.xhtml

骨量が減った結果、骨がもろくなって折れやすくなるのが「骨粗鬆症」という病気です。

この病気になると、「いつのまにか骨折」しやすくなってしまいます。

自分の骨の状態を知るためにはチェックシートでどれくらい当てはまるのかを計算してみましょう骨粗鬆症財団のチェックシートを掲載しますね。

Source: http://www.jpof.or.jp/selfcheck/

3点以上の方は骨粗鬆症に注意が必要です。

またもっと簡単な目安として、年齢から体重を引いてみるというのもあります。例えば65歳50 kg の人の場合、65-50 = 15ですね。

これが20超えると、あくまで1つの目安ですが骨粗鬆症のリスクがあると考えられます。

体重を加味するのは、骨への負担が違うからです。相撲をとる力士さんの骨にはより多くの負担がかかっているのは想像できますね。

予防するためにはカルシウムの多い食事と適切な運動が大事です。これについては最後にまとめますね。

骨粗鬆症を予防したければ、定期的に骨密度検査を受けよう

Source: http://www.msd.co.jp/healthcare/osteoporosis/osteoporosis/diagnostic-tests/index.xhtml

 

先ほどのチェックシートで3点以上だった方は、念のため医療機関で骨粗鬆症の検査を受けることを考えた方がいいかもしれません。

特に9番の項目「ちょっとしたことで骨折した」に該当する方はすでに骨粗鬆症になっている可能性があります。

骨量は閉経前後の50才頃に測定しておくと、もともと十分な骨量があったのかどうかが分かります。

閉経後の15年 (65歳頃まで) で骨量が大きく減るので、50歳の時点で骨量が少なめの人は70歳以降に骨粗しょう症になりやすく注意が必要です。

検査方法としては、 検診ではMD法 (手の甲の骨を レントゲン撮影し骨密度を判定する) や超音波法 (骨に当てた超音波の伝わる速さを元に骨量を推定する) などがよく使われます。

この超音波法は赤ちゃんにダメージを与えるX線 (レントゲン) 検査とは違い、妊婦さんでも安心してできるのがメリットです。

医療機関ではより精密なDXA法 (骨に2種類のX線を当て、骨を通過できなかったX線の量から骨密度を測定する) による骨密度測定、 骨代謝マーカー (血液や尿検査で骨の形成や吸収に関わる酵素を調べる) などが行われます。

いずれも5分くらいで終わりますし、痛みもありません。

骨粗鬆症の治療薬

骨粗鬆症の治療は薬物療法が中心です。

骨が減ってしまう病気なので、
1. 大きく骨をたくさん作るようにする薬 (骨形成促進薬)
2. 骨が分解されてしまうのを抑える薬 (骨吸収抑制薬)

の大きく2種類があります.

骨形成促進薬としては、ビスホスホネートやデスノマブが代表的な薬です。

骨吸収抑制薬としては、テリパラチドやロモリズマブが代表的な薬です。

2019年になり新しい薬の開発が行われ、ロマソズマブという薬が発売されました。
これは治療効果が高い骨形成促進薬です。一か月に1回注射で済むというのも魅力的です。

骨粗鬆症の薬の多くは、治療をやめてしまうとせっかく増えた骨密度が減ってしまいます

少し良くなってきたからといって、自分の判断で治療を中断せず医師の指示を仰ぐのが大事です。

骨粗鬆症の予防方法

年をとるにつれて足元がおぼつかなくなりつまずきやすくなります。

骨粗鬆症の人は骨がもろくなってしまっているため、転んだことで骨を折ってしまうことも多くなります

それが原因で寝たきりになってしまうという方も少なくありません。

80代90代になっても寝たきりにならず歩ける生活を送るためには骨折を予防することが第一です。

骨粗鬆症の治療目的もここにあります。

骨を強くするにはビタミン Dカルシウムが欠かせません。

ビタミン D は外に出て日光に当たり、なるべく魚を食べるのが効果的です。

Source: http://www.msd.co.jp/healthcare/osteoporosis/diet-exercise/index.xhtml

 

カルシウムは牛乳や小魚に含まれています。50歳以上の女性の、カルシウムの最低限の必要量は1日550mgですが、骨粗しょう症治療のためには1日700~800mgくらい必要になります。

Source: http://www.msd.co.jp/healthcare/osteoporosis/diet-exercise/index.xhtml

ちなみにカルシウムは大腸がんの予防にも有効です。大腸がんを予防するには 【大腸がんを防ぐ食べ物も】をご覧ください。

食事だけでたくさんとるのは難しいという場合でも、病院や薬局ではビタミン Dやカルシウムを含むサプリメント健康食品もあります。

こういったものを賢く活用し骨粗粗鬆症になりにくい体作りを作っていきましょう。

まとめ

最後に今回の話をまとめておきましょう。

  • 骨量が減った結果、骨がもろくなって折れやすくなるのが骨粗鬆症という病気
  • 骨粗鬆症は「いつのまにか骨折」につながる
  • 定期的に骨密度検査を受けるのが大事
  • 骨を新しく作る、あるいは壊れにくくするのが治療薬の基本
  • ビタミンDやカルシウムが予防に効果的
  • サプリメントや健康食品もある

今日も【医学生物学のポータルサイト】生命医学をハックするをお読みいただきありがとうございました。

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