遺伝子やゲノム、DNAといった言葉は、生物学のみならず、遺伝子組み換え食品など日常生活でも耳にすることが増えてきました。
この記事では、遺伝子やゲノム、DNAとは何かについて、なるべくわかりやすく解説しました。
遺伝子はどのような「文字」で書かれているのか
DNAは遺伝情報の設計図、染色体 (せんしょくたい) は設計図の入れ物だということは別の記事に書きました。
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その設計図はどのような文字で書かれているのでしょう?
DNAはヌクレオチド という物質がたくさん結合した物質で、ヌクレオチドは糖の一種とリン酸と 塩基 という3種類の物質からできています。
この塩基の部分には、アデニン(A) ・ グアニン(G)・チミン(T)・シトシン(C) という4種類 があります。この塩基が3つでひとつの文字のような働きをするのです。
より具体的には、 塩基3つで1つのアミノ酸を指定しています。
アミノ酸は、タンパク質を構成する最小の単位で、どのアミノ酸がどの順番に並ぶかによってタンパク質の種類や働きが変わります。
たとえば、塩基がAAAと並んでいると、リシンというアミノ酸を指定する暗号ですが、塩基がATAならイソロイシンという別のアミノ酸を指定する暗号となります
塩基と遺伝子の違い
DNAはヌクレオチドがたくさん結合したもので、そのヌクレオチドに含まれた塩基が設計図の文字となっていることを見てきました。
塩基3つで1つのアミノ酸を指定し、アミノ酸がいくつか集まって1つのタンパク質になります。
1つのタンパク質をつくるのに必要な塩基の並びが、1つの遺伝子です。
遺伝子によって作られたタンパク質が働いて、お酒に強い体質にしたり、血液型をA型にしたりするのです。
まとめると、塩基というのは文字であり、その文字がたくさん集まって遺伝子を作っているというわけです。
ゲノムとは
細胞には、父からもらった染色体と母からもらった染色体が入っているので、同じ種類の染色体が2本ずつ (父親と母親からのもの) が入っています。
同じ種類の染色体には同じ遺伝子が含まれています。どちらか片方の染色体を全て集めたもの (‘1セット’) を、まとめてゲノム (genome) といいます。
遺伝子 (gene) 全て (-ome) というのが語源になっています。
ヒトのゲノムは約30億個の塩基からできています。
そのヒトがもっているゲノムを全部調べてしまおうという、ヒトゲノム計画 が1987年に発足し、1990年に国際協力の下、本格的に解読が始まりました。
1日で10万個の塩基を調べたとしても100年近くかかる計算でしたが、技術の目覚ましい進歩によって当初の予定よりも早く、2003年に完了しました。
今では全てのゲノム情報はインターネットで誰でも検索できるようになっていて、検索の方法は別の機会にまとめようと思います。
遺伝子の数と個別化医療
ゲノム解読が行なわれるまでは、ヒトのもつ遺伝子は10万種類前後だと考えられていました。
ところが実際には、予想よりもはるかに少なく、2万2千程度であることがわかりました。
この数は、大腸菌と比べて10倍、ショウジョウバエというハエのたった2倍程度の数しかありません。
塩基配列については、哺乳類どうしでは90%程度が同じで、チンパンジーとヒトでは98.77%が同じです。
ヒトは、遺伝子レベルでは他の生物とあまり変わらないことがヒトゲノム計画の結果わかりました。
逆に、ヒトでもごくわずかずつ塩基配列が異なる場所があります。これを遺伝子多型 (いでんしたけい) といいます。
その中でも、ひとつの塩基 (例えばA) が他の塩基 (例えばT, G, C) に置き換わっているのをSNP(スニップ) といい、そのような違いによって、同じ薬を飲んでも効き目が変わってくる要因の1つになっています。
ヒトゲノムは全て解読したといっても、ATGCの並びが判明しただけであり、それぞれがどのような機能を持っているのかについてはまだまだ多くが未解明のまま残されています。
関連サイト・図書
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まとめ
最後に今回の内容をまとめます。
- 動物の動きの追跡は深層学習を使ったものへ移行
- 複数の動物がいても区別できる
- 動きの意味を見出そうする動きもある
今日も【医学・生命科学・合成生物学のポータルサイト】生命医学をハックするをお読みいただきありがとうございました。