【高校生物の物語】細胞内小器官:細胞の中には何があるのか
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ひとつの細胞の中にもいろいろな構造が存在し、さまざまな生命活動を行っています。

この記事では、そのような構造、細胞内小器官について高校生物の範囲でまとめました。

細胞内小器官とは

細胞はひとつの社会にたとえることができます。

例えば、細胞の中には、発電所があったり、工場があったり、ゴミ焼却炉があったり、道路があったりします。

こういった個々の働きを行なってくれる細胞内の構造を細胞内小器官 (さいぼうないしょうきかん) といいます。

Wikipediaより

1. 核小体
2. 細胞核
3. リボソーム
4. 小胞
5. 粗面小胞体
6. ゴルジ体
7. 微小管
8. 滑面小胞体
9. ミトコンドリア
10. 液胞
11. 細胞質基質
12. リソソーム
13. 中心体

それぞれ順番に見ていきます。

細胞内でまず目につくのは (かく) です。核の中には、とても細い糸状のものが詰まっていて、この糸状の構造を染色体 (せんしょくたい) といいます。

ふだんの染色体は糸状ですが、細胞分裂が始まると、糸が寄り集まって太く短くなります。

この染色体はちょうど生物の設計図を入れている入れ物のようなもので、その中にある設計図に当たるのが核酸の一種である DNA という物質です。

DNAは、ヒストンというタンパク質に巻きついて、複雑な構造で折りたたまれています。これが染色体の本体です。

細胞の設計図であるDNAを管理している部屋全体が核というわけです。

wikipediaより

核を包む二重の膜は核膜といい、ここにはたくさんの核膜孔 (かくまくこう) という穴があいていて, ここを通って RNAやタンパク質が核の中と外を移動しています。

核膜孔は自由に通れるわけではなく、いわば門番がいてある条件を満たすものしか通れないように制御されています。

核の中には、他にも核小体 (かくしょうたい) という粒が1~数個あります。ここでは、このあと出てくるリボソームの材料になるrRNAが合成されています。

細胞質

核を除いた部分を細胞質 (さいぼうしつ) といいます。この細胞質の部分を見ていきます。

ミトコンドリア

wikipediaより

このような形をしているのが ミトコンドリア です。 生物が生きていくために必要なエネルギーをつくる、発電所のような働きをしています。

細胞の中では、エネルギーは電気ではなく一度 ATP(アデノシン三リン酸)という物質の化学エネルギーという形に変換されます。

人だけでなく地球上のすべての生物は、このATPを利用しています。このような共通点があるということは、生物がすべて同じ祖先から進化してきた証拠のひとつと言われています。

実際の発電所には火力発電や水力発電などがあるのと同じで、細胞がエネルギーをつくる方法もいろいろな種類があります。

生物学では、この仕組みを呼吸といい、酸素を使う好気 (こうき) 呼吸や、酸素を使わない嫌気 (けんき) 呼吸などがあります。

ミトコンドリアでは、酸素を使ってたくさんのエネルギーを作る好気呼吸が行われています。

ミトコンドリアの膜は、内膜と外膜と呼ばれる二重の膜からなっていて、内膜は内側に向かって突出し、クリステと呼ばれる「ひだ」を作っています。

その「ひだ」の内側の空間をマトリックスといいます。

ミトコンドリアは、1つの細胞の中に数百程度あり、常に分裂と融合をくり返して変形しています。

詳細な解析の結果、ミトコンドリアは核以外の独自の DNAをもっていることが分かり、長い進化の過程でもともとバクテリア (細菌)が細胞内にすみついたものと考えられています (共生説)。

葉緑体

光エネルギーを使ってブドウ糖を合成する光合成を行なっているのが葉緑体 (ようりょくたい)です。

もちろん動物は光合成ができませんし、菌類(カビやキノコの仲間)も光合成をしませんので、葉緑体はありません。

植物の中の光合成を行うグループにだけ葉緑体は存在します。

葉緑体にはクロロフィルという緑色の色素が入っていて、このため葉緑体を含む葉などが緑色に見えるのです。地球上のほとんどの生物は、光合成でできたブドウ糖を利用して生きています。

植物の根などの細胞には、デンプンを蓄えることに特化した葉緑体の仲間である白色体があり、これを特にアミロプラストといいます。

葉緑体もミトコンドリアと同じく、二重膜に囲まれています。葉緑体の中は、チラコイドと呼ばれる扁平な袋状の膜構造があり、特にチラコイドがたくさんある部分をグラナといいます。

チラコイドの間を満たす液体の部分はストロマと呼ばれています。

葉緑体も, ミトコンドリアのように独自の DNAをもち、もともとはシアノバクテリアという光合成を行う細菌が細胞内にすみついてできたものと考えられています (共生説)。

リボソーム

細胞内に最も多い物質は水ですが、その次に多く、いろいろな構造体や酵素 (こうそ) の主成分となっている重要な物質がタンパク質です。

このタンパク質を作る工場にあたるのが、リボソームです。リボソームは、タンパク質と核小体で作られたrRNA(リボソーム RNA) からなる複合体で, 大サブユニット小サブユニットという2つのパーツが組み合わさってできたダルマのような構造をしています。

細胞質中に散らばって存在しているリボソームもあるし、小胞体の表面に付着したリボソームもあります。

リボソームはとても小さいので電子顕微鏡を使わないと観察できません。

小胞体

小胞体 (しょうほうたい) は、電子顕微鏡でないと見えない薄い袋状の構造で、細胞内に広がっています。

いろいろな物質が運ばれる、道路のような機能があります。

それ以外に、たとえば肝臓の小胞体では、 有害な物質を解毒する作用があるし、筋肉の小胞体は、筋肉が収縮するときに必要になるカルシウムイオンを蓄えるという働きもあります。

このような小胞体は、滑面小胞体 (かつめんしょうほうたい) と呼ばれます。

一方、小胞体の表面にリボソームがくっついているものもあります。リボソームがくっついているものを粗面小胞体 (そめんしょうほうたい) といい、リボソームがつくったタンパク質を取り込み,それを輸送しながら完成させる働きがあります。

ゴルジ体

荷物を運搬するには、どこに運ぶのか荷札が必要です。

このような荷札をつける郵便局のような役割をしているのがゴルジ体 です。

工場であるリボソームで作られたタンパク質が、道路である小胞体を通って、ゴルジ体へ運ばれてきます。

ゴルジ体では、いろいろな糖がタンパクに付けられますが、この糖が荷札にあたります。

病原菌をやっつける抗体を分泌する免疫細胞であるリンパ球や、消化酵素を分泌する細胞では、特にゴルジ体が発達しています。

液胞

細胞内で出たいろいろな物質をためておく袋が液胞 (えきほう) です。新しい細胞では液胞は小さく、特に古い植物細胞ではとても大きくなっています。

(動物細胞にも液胞はありますが、植物に比べるととても小さいです)

液胞には、糖やさまざまなイオン、 アントシアンと呼ばれる色素などが入っています。

秋が深まると、液胞内にアントシアンが蓄積する結果、紅葉を迎えるのです。

リソソームとペルオキシソーム

細胞の中ではいろいろゴミも出ますし、細胞外から異物を取り込むこともあります。

そのような細胞にとって有害なものを処理するごみ処理工場がリソソーム です。小さい袋のような構造ですが、その中にはいろいろなものを分解する酵素が詰まっています。

細胞がプログラムどおりの死 (アポトーシス) を起こすときにも働きます。

さらに、リソソームはオートファジー (自食作用)にも関わっています。細胞が自分の細胞質の一部を膜で包み込み,これをリソソームと融合させることで分解する現象です。

自分自身(= auto) の一部を食べる(= phagy) からオートファジーと呼ばれていて、細胞の栄養源が不足したときや、タンパク質がたくさんつくられたときにみられます。

もう一つ、細胞の中にはリソソームのような細胞内小器官ペルオキシソームがあります。

過酸化水素という危険な物質が細胞の中にできてしまうことがありますが、これを分解するのがカタラーゼという名前の酵素です。

カタラーゼをたくさん持っていて、危険な過酸化水素を処理できるのがペルオキシソームです。

中心体

中心体は、2個の中心粒という“ちくわ”状の構造体と, そこから四方八 方に伸びる微小管という繊維からできています。

中心体は微小管がつくられる中心になり、ここから微小管が伸びていきます。微小管は、細胞分裂の時に染色体にくっついて, それを引っ張る一種の“ひも” (紡錘糸, ぼうすいし) として働きます。

中心体にはこれ以外の働きがあり、べん毛や繊毛 (せんもう) の開始点になっていることです。

関連サイト・図書

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wikipedia

まとめ

最後に今回の内容をまとめます。

  • 細胞内小器官が協力して仕事を分担している
  • 核と細胞質に大きく分けられ、さらに細胞質にはたくさんの細胞内小器官がある
  • ミトコンドリアと葉緑体ははるか昔に細菌が住みついたもの

今日も【医学・生命科学・合成生物学のポータルサイト】生命医学をハックするをお読みいただきありがとうございました。

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