3Dプリンティングで移植できる臓器を作ったという論文がScience誌に報告された。原題は「Multivascular networks and functional intravascular topologies within biocompatible hydrogels」だ。
研究の背景
日本では移植ドナーがなかなか見つからず、なんとか海外のドナーを見つけて移植を受けたというニュースがしばしばある。
そのため、多くの科学者は移植用の肝臓や腎臓・心臓・肺などを1から作り出そうとしてきた。
そのような臓器を作り上げるための1つの可能性は、近年ポピュラーになった3Dプリンティングを使ったバイオプリンティングと呼ばれる方法である。
これまでは、特に臓器の中で複雑に絡み合う脈管 (血管や気道、胆管などの管状の構造) を再現し、血液や酸素を適切にその人工臓器に行き渡らせるのが難しかった。
今回、アメリカの研究者らはチームは、投影ステレオリソグラフィーという3Dプリンティング技術を使ってこのような難題を解決したと報告した。
投影ステレオリソグラフィーとは、液体樹脂の薄層に青色光をあてることで、固まらせることができる技術である。
この基本的な技術は1980年代からあったが、生物・医学のために作られたものではなく、もともとプラスチック構造を作るのに開発された。
この技術は、標準的な3Dプリンティングよりも細かい層を作成することができ、そして何より重要なのはずっと速くできるということだ。
その、いわば足場の中に、肺や肝臓の働きをする生細胞を埋め込むことができる。
結果として得られた臓器組織のモデルは本物の臓器機能を示すことも動物実験で確認された。
この衝撃的な研究報告はScience誌の表紙を飾った。
オープンソース化で進むバイオプリンティング研究
バイオプリンティングで作られた臓器が移植待ちの患者さんに使われるようになるまでどれくらいかかるのだろうか?
まだまだ最適なハイドロゲルや成長因子などの添加剤の必要性など基本的なことも含めて、調べないといけないことがたくさんある。
そこでこの技術をオープンソースにし、他のバイオエンジニアがテストできるようにした。
特許などの権利で囲い込むのではなく、オープンソースにすることでこの技術開発が今後加速していくだろう。
移植に使われるようになるのもそう遠くないかもしれない。