夜に明るい光を浴びると睡眠の質が落ちるという話を聞いたことがある人は少なくないだろう。今回、人によって睡眠に影響がある光の量に50倍以上の違いがあり、それによって睡眠調節に大事なメラトニンが大きく影響を受けているという研究報告がアメリカアカデミー紀要 (PNAS) に報告された。論文の原題は「High sensitivity and interindividual variability in the response of the human circadian system to evening light」だ。

まず睡眠ホルモン・メラトニンについて簡単に紹介し、次に今回の研究内容、そしてそれを踏まえたメラトニンサプリの注意点という記事構成になっている。

睡眠ホルモン・メラトニンと光の量の関係

私たちの体の昼夜のリズムを制御している重要なホルモンがメラトニンだ。

メラトニンは夕方になると上昇し始め、眠気を引き起こす。武田薬品のサイトにわかりやすい図があったので引用させていただく。

睡眠ホルモンであるメラトニンは夜間に急増する

 

メラトニンは、人工の光 (特に携帯電話やコンピュータ・テレビなど) の影響でメラトニンが上昇するタイミングが遅れてしまう。脳にある松果体というところでメラトニンが作られているのだが、目の網膜へ光が入ると、日中と勘違いして松果体での産生を抑えるからだ。

夜の光刺激を減らし、逆に日中にしっかりと光を浴びることでメラトニンを増やすことで、睡眠パターンと健康状態を改善できると考えられている。

このような光とメラトニンの関係に関するこれまでの研究のほとんどは、たくさんの被験者の方々の平均的な結果に基づいていた。

今回、55人の男女のボランティアの協力を仰ぎ、夕方以降の光暴露とリズムについて個人個人の反応を調べた

ボランティアの方々は、それぞれ自分の就寝時刻を最大8週間にわたって家で厳密に守った。

週に1回、研究室に来てもらい、就寝の4時間前からさまざまな強さの光 (薄暗いものから明るいものまで) を浴びてもらい、血液検査でメラトニンを測定した。

その結果、光暴露へのメラトニンへの影響は個人差がとても大きいことが分かった。
最も光に敏感な人では、6ルクス (ろうそく数本分) というとても薄暗いレベルでもメラトニンが半分になり、就寝時間が1時間近く遅れた。

逆に、最も光に敏感でない人では、同じ反応ように1時間近い睡眠の遅れを引き起こすのは350ルクス (家庭よりも明るいお店の蛍光灯レベル) の光を必要とした。

メラトニンに影響を及ぼす光の量は50倍も違い、一部の人にとっては、薄暗い読書灯でも日光と同じくらいの刺激があるということだ。

メラトニンサプリを服用中は夜の光量にも注意

メラトニンは睡眠サプリとしてアメリカでは薬局や通販などで販売されている。

しかしメラトニンサプリを飲んだから安心、というのはよくない。つまり、夕方以降、人口の光を浴びすぎると人によっては眠れなくなってしまうのだ。

よい睡眠の基本は生活習慣の改善にあり、サプリはあくまでサプリだ。

スマホ等の見過ぎは睡眠を妨げることは昔から知られていたが、今回の研究成果はその個人差は想定以上に大きいことを意味している。

睡眠不足に悩む方は、もしかしたら特に光へ敏感なグループの方なのかもしれない。そうであれば、一番の対策はもう少し光に注意するということになるだろう。

まとめ

最後に今回の内容をまとめる。

  • メラトニンは睡眠ホルモンとして働く
  • 夕方以降の光が多いと、メラトニン量に人によって大きな悪影響を及ぶす
  • メラトニンサプリだけでなく、光を少し抑えることが睡眠障害の改善に効果的である可能性

今日も「医学生物学領域のポータルサイト・生命医学をハックする」をお読みいただきありがとうございました。

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