医療費控除を申請する上で抑えておきたい、そもそも医療費とはという基礎知識を復習する記事を書きました。
[getpost id=”1921″ title=”関連記事” target=”_blank”]
今回は、国が定めている医療費 (診療報酬) を簡潔に、でもなるべく網羅的にまとめます。
この記事の内容
診療報酬の大まかな仕組み
医療機関の外来を受診した時の医療費 (診療報酬) についてみていきましょう。外来を受診したすべての患者さんに必ず請求される「基本診療料」と、治療内容に応じて変わる「特掲診療料」に区分されています。
つまり、医療費 (診療報酬) = 基本診療料 + 特掲診療料ということです。
基本診療料は医師の診察代
基本診療料は、医師による診察代と考えれば分かりやすいです。基本診療料には、大きく「初診料」と「再診料」の2つがあります。
初診料は、病気になって初めて医療機関を受診したときの料金で、再診料は2回目以降の受診時にかかります。
初診料は年齢と時間によって変わる
初診料は基本的には282点 (2,820円)です。ただし、患者さんの年齢や診療時間によって点数が変わります。
診療報酬の1点は10円に相当するという話は別の記事に書きました。
[getpost id=”1921″ title=”関連記事” target=”_blank”]
診療時間が9時~17時の医療機関を考えてみましょう。6歳以上の患者さんが、この医療機関を時間内に受診した場合の初診料は282点です。
6歳に満たないお子様が診療時間内に受診した場合、乳幼児加算として75点がプラスされ、282+75で357点 (3570円) となります。
この他にも、妊婦さんが受診した場合の「妊婦加算」もあります。
もし、医療機関の診療時間外に受診した場合には、時間外加算 (6歳以上の場合は85点、6歳未満の場合は200点)」が基本の282点に加わります。
深夜(22時~6時)に医療機関を受診した場合には深夜加算、休日 (日曜日と国民の祝日、および年末年始) に受診した場合には休日加算もあります。
表にまとめると、基本の282点に、次の加算を加えた点数が初診料です。
6歳以上 | 乳幼児 (6歳未満) | 妊婦 | |
診療時間内 | 0 (加算なし) | +75 | +75 |
診療時間外 | +85 | + 200 | + 200 |
休日 (日祝・年末年始) | +250 | + 365 | + 365 |
深夜 (22-6時) | +480 | + 695 | + 695 |
例えば、4歳の子供が急に具合を悪くして、休日の日中に医療機関を受診した場合の初診料は、282点+休日加算365点で647点 (6,470円)となります。
再診料は、 病院の規模でも変わる
初診料 (282点)は全国どこでも同じですが、再診料の場合は医療機関の大きさで異なり、大病院の方が1点だけ安くなっています。
具体的には、大病院 (200床以上) だと73点、それ以外だと72点です。
また、初診料と同じように患者さんや時間帯によって加算があります。
6歳以上 | 乳幼児 (6歳未満) | 妊婦 | |
診療時間内 | 0 (加算なし) | +38 | +38 |
診療時間外 | +65 | + 135 | + 135 |
休日 (日祝・年末年始) | +190 | + 260 | + 260 |
深夜 (22-6時) | +420 | + 590 | + 590 |
初診料よりも金額が少ないのは、それだけ初診の方が再診よりも難しいということを意味しています。
特掲診療料は治療内容の料金
さまざまな医療行為の代金をきめ細かく定めた特掲診療料はおよそ5,000種類にも及びますが、大きく13項目に分かれます。
医学管理、検査、画像診断、投薬、注射、精神科専門療法、処置、手術、麻酔、放射線治療、病理診断、在宅医療の13項目です。外来で請求される主なものを見ていきます。
医学管理
医学管理は、医師などが患者さんに対して医学的に必要な管理・指導を行った時の診療報酬で、いろいろな種類がありますが、代表的なものを紹介します。
特定疾患療養管理料
特定疾患療養管理料は、特定の病気 (糖尿病、高血圧症、がんなどを含む32疾患あります) の患者さんに対して、服薬や運動、栄養などについて指導をした場合の医療費です。
ニコチン依存症管理料
禁煙を希望するニコチン依存症の患者に対して、禁煙に関する指導および治療管理を行った場合の医療費です。初回の指導で230点、2回目から4回目までは184点、5回目は180点になります。
栄養食事指導料
がん患者や低栄養状態の患者さんなどに、管理栄養士が献立などを作成して指導を行った場合にかかる医療費です。
検査は文字通り検査料
検査は、 大きく分けて「検体検査」と「生体検査」があります。
検体検査
血液検査や尿検査など、体から採取した検体を調べる検査のことを、検体検査といいます。
検体検査の医療費は、検体を採取する料金、採取した検体を検査する料金(検体検査実施料)、結果を判断する料金 (検体検査判断料)の三つを合計した点数となります。
例えば、血液検査の一つである「末梢血液一般検査」を行った場合、検査実施料21点のほかに、検体採取料30点、検査判断料125点が合算され、合計176点となります。
検体検査の種類はおよそ300あり、個々に検査実施料が定められています。
生体検査
検査には、生体検査と呼ばれるものもあります。具体的には心電図、超音波、胃カメラなどで、いろいろな機器を使って体を調べる検査です。
生体検査は約100種類あり、生体検査料の中に判断料が含まれています。例えば、下部内視鏡 (大腸カメラ) 検査の場合、下行結腸は1,350点、その奥にある上行結腸の検査なら1,550点などと決められています。
画像診断
体内の画像をとって診断を行うことを画像診断といい、エックス線撮影(レントゲン撮影) などがあります。
技術の進歩に伴い、CTやMRIという全身をより詳しくみることができる検査や、さらにはPETなどの高度な画像撮影も行われるようになっています。
画像診断の診療報酬は、画像を撮影する「撮影料」と、撮影した画像を医師が 見て判断する「診断料」に分かれています。
投薬
医療機関が患者さんに薬を出すことを投薬といいます。まず医師が薬の種類や調合法などを薬剤師に指示 (処方) し、医師の指示に従って薬剤師が薬を患者に提供 (調剤) するという仕組みになっています。投薬には薬代として「薬剤料」だけでなく、医師の「処方料」 と薬剤師の「調剤料」がかかります。
処方料は1回につき42点が基本です。多くの種類の薬を同時に処方する場合には点数が下がっていき、7種類以上を処方する場合には29点などとなっています。
調剤料は薬剤師への技術料で、内服薬 (飲み薬) の場合は9点、外用薬 (塗り薬など) の場合6点です。ただし、入院患者の場合には一律に1日7点になります。
薬代そのものにあたる薬剤料は、毎年改定されていますので最新版 (厚生労働省ページ)をご確認ください。
本記事執筆時点における薬価はこちらのpdfの通りです。
注射
注射は、医師が直接、あるいは医師の指示を受けた看護師が行っています。注射の種類によって注射実施料がかかります。
注射する場所などによっていくつかの種類があります。点滴を行った場合は「点滴注射」、静脈に注射を行った場合は静脈内注射といった具合で、全部で20種類ほどあります。
点滴注射の点数は、注射した薬の量によって変わります。1日の注射量が 500ml以上の場合は97点ですが、500mlに満たない場合は49点です。静脈内注射は1回につき32点になります。
この技術料に、薬代そのものが加わります。
一部の特殊な注射 (抗がん剤や麻薬など) は管理料などが加算されます。
リハビリテーション
脳梗塞などを発症した場合、リハビリ治療を受けます。その医療費は、疾患などによって10種類程度に分類されています。
脳梗塞や、くも膜下出血を発症した場合などのリハビリは脳血管疾患等リハビリテーション料、転倒などによって骨折をした場合などの運動器リハビリテーション料などがあります。
脳梗塞やくも膜下出血などを含む脳血管疾患など、一部のリハビリテーション料については、発症から30日までは早期リハビリテーション加算として30点、発症から14日までは初期加算として45点 (両方合わせて14日までは計75点) がさらに加算されます。
精神科専門療法
代表的な精神疾患として、「統合失調症」「うつ病」「不安障害」「認知症」などがあります。
精神科の専門医師によるカウンセリングや、個人やグループ単位での活動を通して社会適応能力の向上を目指すものなど、およそ20種類の治療法が含まれます。
処置
処置には、ケガの手当てから、救命のため行う心臓マッサージなど数多くの種類があります。
一般処置としては、ケガ(創傷)・やけど・床ずれの手当てや、酸素吸入などがあります。ケガの手当ての診療報酬は、包帯などで覆う面積によって点数が変わります。
救急処置としては、人工呼吸や心マッサージなどがあります。人工呼吸の点数はその時間によって変わり、30分以内だと242点、30分を超える場合は30分ごとに50点が追加されます。心マッサージも実施時間によって点数が決められています。
他にも皮膚科的処置、泌尿器科的処置、産婦人科的処置、眼科的処置、耳鼻科的処置、整形外科的処置、栄養処置、ギプスがあります。
手術
手術には数多くの種類があり、高難易度の手術ほど高い点数になる傾向があります。
手術の種類は1000以上ありますが、例えば複雑な骨折の手術である「骨折観血的手術」だと部位によって11370点から18810点になります。
胃切除術の場合、開腹術の場合は55,870点で、腹腔鏡下手術の場合 64,120点です。
輸血を行った場合は輸血料が追加で請求されます。輸血した血液の量が200mlまでは450点、200mlを超える場合は200 mlごとに350点が加算されます。
まとめ
最後に今回の内容をまとめます。
- 医療費は基本診療料と特掲診療料の合計である
- 基本診療料は患者の年齢や時間帯によって変わる
- 特掲診療料はオプションで、治療によって細かく分かれている
今日も【医学生物学のポータルサイト】生命医学をハックするをお読みいただきありがとうございました。