不妊症の原因と検査の注意点 【男性不妊も半数ある】
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不妊症とは, 夫婦が妊娠を希望して1年以上生活を行っているにもかかわらず妊娠しない場合をいいます。

この記事では不妊症の原因と、検査を受ける上で忘れてはいけない大事な注意点をまとめました。

不妊症は増加している

ひと昔前に比べて、現代は結婚年齢が上がっています。

例えば、1975年の平均初婚年齢は24.7才 (初回妊娠年齢は25.7才) だったのに対し、2015年には29.4才 (妊娠30.7才) とこの40年で5才も上昇しました。

年齢が上がるほど妊娠しにくく, かつ不妊治療で成功する可能性も下がっていきます

例えば女性の年齢が20-24才であれば不妊症の頻度はおよそ5%、25-29才なら10%、30-34才なら15%、35-39才なら30%、40-44才なら60%になります。

また、子宮内膜症や子宮筋腫といった不妊症の原因になる病気も増えていて、これらのことが不妊症の増加に拍車をかけています。

今や子供を希望する夫婦の1割が不妊症であり、新しく生まれてくる新生児の16人に1人は体外受精で生まれています

その子たちが学校に通う年齢になった頃、同じクラスに2人は「試験管ベビー」がいることになります。

結婚して子供を持つのが当たり前という「常識」も今は昔話になりました。

数回に分けて不妊症の「今」を紹介します。今回は不妊症の原因について見ていきましょう。

妊娠の大まかな流れと不妊

妊娠の過程はとても複雑ですが、大まかにいくとこのような流れになります。この流れのどこに異常があっても不妊症になります。

男性側の妊娠までの流れ

1. 造精: 精巣で精子をつくります
2. 輸送・貯蔵: 精巣上体というところに精子を運び貯蔵します
3. 射精: 精子を出します

女性側の妊娠までの流れ

4. 排卵: 卵巣から卵子を放出します
5. 受精: 卵子を卵管がうまくキャッチして、子宮側から来た精子と出会います
6. 胚輸送: 卵管でできた受精卵 (胚) を子宮に運びます
7. 着床: 子宮の壁の中に胚を定着させます

不妊の原因

不妊症は, 男性に原因がある男性不妊と女性に原因がある女性不妊があります。一昔前までは、不妊症は女性側に原因があると思われてきましたが、実際には男性不妊と女性不妊はほとんど同じ頻度です。

それぞれの原因をもう少し詳しく見ていきます。

女性不妊の主な原因

女性不妊は、ホルモン等の問題で排卵がうまくできないのか、受精を行う卵管に問題があるのか、それとも着床が行われる子宮のトラブルか、に大きく分かれます。

排卵に問題があるケースは、不妊症のうち20-50%を占めていて、主な原因としてストレス・肥満・過度な体重減少 (ダイエット) がある他、背景に潜んでいるかもしれない病気として多嚢胞性卵巣症候群・高プロラクチン血症・早発卵巣不全などがあります。

卵管に問題がある、具体的には管の中が狭くなっていたり詰まっていたりするケースは不妊症の25-35%ほどあり、原因としてクラミジア感染や、他の手術の影響で卵管の周囲がくっついている (癒着、ゆちゃく、している) 場合があります。

子宮に問題がある場合は10-20%ほどあり、子宮筋腫子宮内膜症・子宮奇形といった、表面がデコボコしていてうまく胚が着床できないことが原因になる他、子宮の下側にある頸部という精子の通り道に炎症 (頸管炎) があり、精子が通れない場合もあります。

男性不妊の主な原因

男性側の原因としては、ちゃんとした精子を作れない場合 (造精障害)、精子の通り道が詰まっている場合、射精ができない場合があり、不妊症の40-50%を占めます (不妊症の原因の半分は男性側にあります)。

このうち一番多いのは造精障害で、中でも精索静脈瘤という病気はとても多いです。

精子は熱に弱く、体温と同じ温度ではすぐに弱ってしまいます。そのため少しでも冷やすことができるよう、進化の過程で精巣は体の外に出てきました。

しかしもちろん周囲に血管が必要で、精索静脈という名前がついています。

精索静脈瘤は、この血管に異常があり、精巣から体の中に戻る血液の流れが停滞してしまう病気です。その結果、精巣の周りには体温と同じ温度の血液がたくさんある状態になり、精巣が温められてしまって、できる精子の量が減ったり、卵子と出会う場所まで泳いでいく能力 (運動率) が落ちて男性不妊になります。

実に男性不妊の4割の方は精索静脈瘤があります。しかしこの精索静脈瘤は唯一外科的に治療できる男性不妊の原因であり、かつ近年は日帰り手術も可能になってきたので、別の記事で詳しく書きます。

他の原因として、子供の頃にムンプス(おたふくかぜ) にかかっているとその後遺症で精巣上体炎という精子の通り道がふさがってしまう病気になったり、ヘルニア手術を受けていても精子の通り道がふさがる場合があります。

射精にトラブルがあるという方も増えてきており、こちらも機会があれば別記事で紹介します。

不妊症検査を受ける時の注意点

不妊症はこのように原因がたくさんあるので、専門医にみてもらう必要があります。その際に大事なことが1つあります。

必ず夫婦で検査することです。よくあるのは、先に女性が産婦人科であれこれ検査をしてもらい、その結果何もなかった時にはじめて男性側が検査を受けるということですが、これは時間の無駄です。

冒頭に書きましたが、時間がたてばたつほど不妊症治療の成功率も下がっていきます。特に女性側はたくさんの検査があり、時間もかかるし体の負担もあります。

一方で男性側は主な検査は精液検査のみであり、1回通院すれば検査は全て完結する場合がほとんどです。

不妊症の原因の半分が男性にあることを考えれば、女性と同時並行で男性側も検査をしてもらうのがいいでしょう。

泌尿器科を受診することに抵抗のある男性も多いと思いますが、今は自宅でできる精液検査もあり、例えば郵送すれば精子数や形に異常がないかを専門の検査技師さんに調べてもらえるサービスがあります。

ただ、こういうサービスを利用する時に注意点が1つあり、それは精子数だけでなく運動率も調べられるか確認しないといけません。

数はたくさんあっても、極端な話それらが全く動いていない場合には受精することは絶対にありません。運動率を測定するには、例えばスマホで調べられるこのようなキットが便利です。

もちろん泌尿器科にいって精液検査をしてもらうのが一番ですが、抵抗がある場合には、まずはこれらを使って、精子数・運動率・形態に異常がないかを調べていくことがいいと思います。

まとめ

最後に今回の内容をまとめます。

  • 不妊症は今や夫婦の1割にものぼる
  • 不妊の背景に病気が隠れている場合もある
  • 不妊症検査は必ず男性も同時並行で

今日も【医学・生命科学・合成生物学のポータルサイト】生命医学をハックするをお読みいただきありがとうございました。

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