喘息にリンゴ酢は効果があるのか?
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喘息の患者さんは通常、長期間つづく薬と短期の薬を併用して炎症を治療します。

そんな中、症状を和らげるために自然療法を行う人もいて、特にリンゴ酢は昔から喘息に効果があると言われてきました。

この記事では、リンゴ酢と喘息の関係を論文を紐解いて考察し、その有効性と危険性を中立な立場から書いてみます。

リンゴ酢の喘息に対する効果

リンゴ酢はリンゴの発酵によって作られます。

結論を先に書くと、リンゴ酢には喘息患者に有益と思われる健康上の特性があるものの、現時点では、喘息症状に対するリンゴ酢の効果を中心にして調べ、呼吸状態の症状を緩和するのに役立つことを証明した高品質の研究は発表されていません

「高品質」というのは、喘息の患者さんをたくさん集め、コンピューターでランダムにリンゴ酢を飲む人と飲まない人に割り当て、さらに医師をはじめとする医療スタッフもその患者さんがリンゴ酢を飲んでいるのかいないのか知らない状態で検査した、という意味です。

この方法は二重盲検と呼ばれ、医学的に最も信頼性が高いものとして認知されています。

したがって、リンゴ酢が喘息患者にどのように役立つかについては、まだ理論の段階にすぎません。

仮説の1つにリンゴ酢は肺の炎症を抑え、細菌やウイルスの増殖を阻止するというものがあり、これは2018年に実験レベルでは正しいという研究報告論文がScientific Reports誌に出ています。

過剰にリンゴ酢をとった場合のリスク

酢は一般に、利尿薬 (尿を出す薬)、下剤、心臓病や糖尿病の薬など、さまざまな薬と相互作用する可能性があります。
もしこれらの薬を服用している場合は、医師または薬剤師に確認が必要です。

参考:Beyond the Hype: Apple Cider Vinegar as an Alternative Therapy (英語)

リンゴ酢は歯のエナメル質を損傷させ、喉を刺激し、吐き気を引き起こす可能性があります。これは2014年にInternational Journal of Obesity誌に発表された研究で、朝食に酢を摂取すると、多くの被験者が吐き気や消化不良を起こすことがわかりました。

盲信は危険

株式会社ディー・エヌ・エー (DeNA)が運営していたヘルスケア情報サイトWELQが引き起こした医療の素人による間違いだらけの健康情報が問題になったことがありました。

実際のところは科学的な学術論文をしっかり吟味しないと本当だと言えないのに、世の中に出回っている真偽が定かではない情報をそのまま信じるのは危険です。

現状でははっきりした証明はされていないので、副作用を理解しつつ担当の先生と相談しながら少しずつリンゴ酢を飲んでみる、くらいの慎重さが必要です。

まとめ

最後に今回の内容をまとめます。

  • リンゴ酢が喘息を改善するはっきりとした証拠は現状はない
  • リンゴ酢はいろいろな薬と相互作用するのでたくさん飲むなら医師・薬剤師に確認が必要
  • 世に出回っている専門外の人の医療情報を盲信してはいけない

今日も【生命医学をハックする】 (@biomedicalhacks) をお読みいただきありがとうございました。

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