健康診断で「コレステロールが高いですね」などと高脂血症 (脂質異常症) と言われたことがある方は多いでしょう。
国内に数千万人の患者さんがいる生活習慣病の1つです。
脂質異常症の怖いところは、知らない間に血管に脂質がたまってしまう動脈硬化 (どうみゃくこうか) になるところです。
この記事では動脈硬化について知っておくべきことをまとめました。
この記事の内容
動脈硬化とは
動脈硬化 (どうみゃくこうか) とは、血管壁に油状の物質がたまることで血管の内側 (内腔) が狭くなることをいいます.
脂質の一つであるコレステロールは体に必要なものですが、血液中に増えすぎると変性して血管内皮に入り込むようになります.
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その結果、血管壁にプラークと呼ばれるこぶのような膨らみができ、血管の内腔が狭くなります.
内腔が狭くなる結果、血液の流れが悪くなり、その先の働きが低下したり体の動きに支障をきたすようになってしまいます。
動脈硬化は多くの場合ほとんど自覚症状のないまま全身の血管で少しずつ進行し、やがて命に関わるような大きな病気を引き起こすのです.
動脈硬化で起こる病気
心筋梗塞
心臓では心臓の筋肉に酸素や栄養を送っている冠動脈 (かんどうみゃく) が障害されてしまいます。
動脈硬化によって冠動脈が狭くなるのが狭心症 (きょうしんしょう)で、特に運動した後 (坂道を上るなどした後) に胸の違和感や痛み・息苦しさなどが現れます.
冠動脈のプラークが破れ、血の塊である血栓ができ、それが血管に詰まるとその先の血液の流れが途絶え、心臓の筋肉が死んでしまいます (壊死、えし) 。
これが心筋梗塞 (しんきんこうそく)です.
脳梗塞
心臓ではなく脳の血管が詰まり、その先の神経細胞が死んでしまう病気を脳梗塞 (のうこうそく) といい、その最も多い原因の1つは動脈硬化です.
脳梗塞は、発症すると命に関わる場合があり、命が助かっても手足の麻痺や言語障害などの後遺症が残ることもあります.
大動脈瘤
動脈硬化によって大動脈という太い血管が大きく膨らんでしまう大動脈瘤 (だいどうみゃくりゅう) という病気もあります.
大動脈瘤自体は自覚症状がないことがほとんどですが、まれに進行して大動脈瘤が破裂すると突然激しい痛みに襲われ、命を落とすことも少なくありません.
間欠性跛行
間欠性跛行 (かんけつせいはこう) は、歩いていると脚が痛くなり休むとよくなるという病気で、脚の血管に動脈硬化が起こり血液の流れが悪くなる結果起こります。
動脈硬化に起こる病気
動脈硬化の状態を調べる検査は大きく体の外側から調べるものと内側から調べるものがあります。
体の外から調べる検査は
CT検査
MRI検査
一方で、体の内側からの検査は
血管内超音波検査
があります。
それぞれ順番に解説します。
頚動脈エコー検査
超音波の機械を首に密着させ、首の動脈である頸動脈 (けいどうみゃく) の内部を映し出すもので、体への負担が少ない検査です.
頚動脈に動脈硬化がある場合は、全身の他の血管 (心臓の冠動脈や脳の血管など) の動脈硬化も進行している可能性が高いです。
CT 検査
造影剤 (ぞうえいざい)という薬を血管の中に注射し、X線を使って体の断面図を撮影する検査です。
そのデータを処理することで、全身の血管を立体的に調べることが可能です。
MRI検査
磁気を利用して臓器や血管の画像を撮影します.脳の血管だけを映し出す MRA という手法が多く用いられます.
冠動脈造影検査
カテーテルという細い管を手首や脚の付け根の血管から挿入して心臓の冠動脈まで送り、そこから血管を詳しくみることができる造影剤を注射してX線で撮影する検査です.
他の検査で冠動脈の動脈硬化が強く疑われた場合、すでに狭心症の症状がある場合などに行われます.
血管内超音波検査
血管に挿入したカテーテルの先端から超音波をあて、血管壁の状態を調べます。
プラークがあるかどうかだけではなく、破れやすいかといったプラークの状態まで調べることができるので、治療方針を決めたり治療効果を確かめるのに有用な検査です。
動脈硬化指数
採血結果からも動脈硬化の起こりやすさが分かります。
それが動脈硬化指数と呼ばれるもので、計算方法は総コレステロール(TC)から善玉コレステロールといわれるHDLコレステロール(HDL-C)を引いた悪玉コレステロールを、善玉コレステロールで割って求めることができます。
(総コレステロール – HDLコレステロール) / HDLコレステロール
正常値は4.0以下であり、この数値が大きいほど動脈硬化になりやすく、小さいほど動脈硬化になりにくいという指標です。
より最近では、LDLコレステロール/HDLコレステロールの比が新しい動脈硬化指数として注目されています。
将来の心筋梗塞などの発症を予防する場合(一次予防)では2.0以下、すでに心臓病の既往がある場合(二次予防)では1.5以下を目指すべきと考えられています。
コレステロールの数値は症状がないのが怖いところですが、放置すると少しずつ動脈硬化に繋がってしまいます。
予防のためには、適切な運動や食事が必要です。これについては長くなるので別の記事にまとめています。
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関連サイト・図書
この記事に関連した内容を紹介しているサイトや本はこちらです。
高脂血症 (脂質異常症) の基本【悪玉・善玉コレステロールとは】
まとめ
最後に今回の内容をまとめます。
- 動脈硬化は血管が狭くなる病気
- 動脈硬化の検査はいろいろな種類がある
- 健康診断結果から動脈硬化指数をチェック
今日も【医学・生命科学・合成生物学のポータルサイト】生命医学をハックするをお読みいただきありがとうございました。