研究留学先にメールで応募した経験談 【文面や心構えも】
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日本の大学院を卒業した後に留学し海外で研究を行うことは生命医学系ではそれほど珍しくありません。この記事では、これから留学先の研究室 (ラボ) を探す方に経験談をまとめます。

留学先の探し方

海外で研究をしたいなら、まずはじめに受け入れ先を探す必要があります。

先輩や知人の紹介 (いわゆるコネ) があれば簡単ですが、そういったものがない場合、あるいは紹介はあるが別のところに行きたい場合には自力で探す必要があります。

自力での留学先の探し方は大きく2種類あります。

1つは求人広告を出しているラボを調べる方法です。例えばNature JobsPostdoc Jobsなどを使えば、求人広告を出しているラボを効率的に調べることができます。

この方法は今まさに人が欲しい研究室が募集をかけているので応募すれば前向きに検討してもらえ、さらにしかるべき給料もでることです。反面、必ずしも希望の研究機関や分野の求人とは限らないというデメリットもあります。

もう1つの方法は、求人広告とは関係なしにラボを調べる方法で、一般的には論文を読んでそのボスに連絡をすることになるでしょう。自分の希望する分野で研究をすることができますが、デメリットとしては先方が人を募集しているとは限らないこと、それに給料は出ない (しかるべきフェローシップを取ることを要求される) ことも多い点が挙げられます。

フェローシップについては海外研究留学のための助成金・フェローシップ【経験談あり】にまとめています。

留学先の候補はどれくらい用意するか

目安として、これくらい最初に候補となる受け入れ先を選定しておけば、そのうちのいくつかからはOKをもらえて、その中から希望の場所を選べます。

1. 強いコネがある or 姉妹誌級以上の論文を持っている場合→ 2,3程度
2. コネなし、IF 2桁の1st と共著が少し → 10程度
3. コネなし、IF 1桁後半の論文を複数 (もちろん1stで) → 20程度
4. コネなし、業績に自信なし → 30 ~ 40程度

臨床の医師に特に多い医局の紹介で留学をするなど先方と強いコネがあるなら別ですが、全くコネがないラボに入るにはしかるべき研究業績が要求されます。

そのため、多数のラボを候補に入れておく必要があるでしょう。

いわゆるビッグラボの採用基準は厳しいため、ビッグラボ縛りでアプライするとどこからも採用されない可能性があります。

大小さまざまなラボを候補に入れてみましょう。スモールラボにはスモールラボの良さがあります。
Natureに掲載されたPostdocs: Big lab, small lab?も読んでみてください。

世の中にはいろいろなラボがあります。本当にそのラボは大丈夫でしょうか? こんなときに役に立つ情報をくれるのが、そのラボ or 近隣のラボに在籍している日本人ポスドクです。

全く知らない人でも、日本人はとても丁寧に様子を教えてくれます。気になるPIは実際にはどんな感じかリサーチしましょう。

留学先へのメール文面

準備ができたらメールを送ります。最初軽く自己紹介、そしてポスドクのアプライをしていることを書き、その次にどういうことに興味があるのかを書きます。

PIにとって自分を採用するとどんなメリットがあるのかを書き、また同時に先方が懸念する材料 (大きく分野を変えるためその分野での経験がないなど) については熱心に学ぶ意欲を見せます。

決してProf ~ の宛名を書き換えてあちこちに送っているように思われないこと (実際には先方も多数のラボに応募していることは知っていますが)。そのボス個人だけにあてたように見せるように。これはつまり、PIごとに研究テーマを全て書き換える必要があることを意味しています。

中規模以上のラボだとフェローシップ持参が当たり前ですので、そういうチャンスがあることも書いています (求人広告を出している、人がほしいラボだと給料を出してくれるので書かない方がいいです)。

参考までに私が以前送ったメールを紹介します。
件名:「Post-doc application, 名前, Japan」
———————–本文————————————————–
Dear Prof. ボスの苗字,

Hello, my name is 名前 from 所属, Japan. I am currently a Ph.D. candidate (博士号未取得の場合) in 分野, studying 詳細 (すでに報告済みの論文があれば引用) under the supervision of Prof. 現在の上司の名前.

I am writing this letter to ask you if there is a post-doc position available for which I could apply from late this year or early next year (およその時期).

I have read a series of your amazing studies in the field of 分野 and I am very fascinated in 興味のあることの概略.

In particular, 具体的なこととそれに興味を持つ理由をたくさん書く、 I trust that my previous experience and background knowledge will contribute productively to the on-going research projects in your laboratory.

Currently, I do not have experience in 分野, but I am a quick learner and highly motivated in mastering new research areas and techniques.(これまでやってきたことと分野を変える場合には学習意欲を書く)

As I would like to pursue a career in 長期的なキャリア展望, I would be delighted, if you could provide me with the opportunity to work with you in your laboratory.

I understand that you might not have the available funding to consider new post-docs. However, given my academic and research results, I have a good chance of acquiring postdoctoral research fellowships from 財団名を2つくらい. Both fellowships are prestigious, competitive grants that will cover my complete salary.

I am enclosing my curriculum vitae for your review.

Thank you very much for your consideration, and I am looking forward to hearing from you.

Yours sincerely,
名前

留学先候補にメールを出すときの心構え

1つ大事な心構えがあります。

日本と違い、不採用の場合に「お祈りメール」つまり「今回はご縁がありませんでしたが、益々のご活躍を祈念しております」というような返事がくることはありません。10日ほど返信なしは、残念ながらリジェクトという意味です。

そして有名なPIほど世界中から多くのアプライメールが来ているので、だめならいちいち返事はしません。

目安として、3割当たれば一流バッターではないでしょうか? 実際には1-2割弱程度 (つまり20アプライして3件くらい返事) くらいになります。

8割以上返信はないので、いちいち落ち込んではいけません。相手に見る目がないだけです。そんな眼鏡が曇ったPIの元に行かずにラッキーだったと考えて、さっさと次にいきましょう。

関連サイト・図書

この記事に関連した内容を紹介しているサイトや本はこちらです。


海外研究留学のための助成金・フェローシップ【経験談あり】

まとめ

最後に今回の内容をまとめます。

  • 応募のメールはその研究者個人にあてて書く
  • コネなしの場合、およそ20程度候補を用意する
  • ほとんど返信はないが、落ち込んではいけない

今日も【生命医学をハックする】 (@biomedicalhacks) をお読みいただきありがとうございました。

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