新型コロナウイルスCOVID-19の世界初の飲み薬候補 【EIDD-2801の治験開始】
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新型コロナウイルス (COVID-19) の増幅を抑えることができる経口薬EIDD-2801が開発され、Science Translational Medicine誌に報告されました。

論文の原題は「An orally bioavailable broad-spectrum antiviral inhibits SARS-CoV-2 in human airway epithelial cell cultures and multiple coronaviruses in mice」です。

アメリカで臨床治験が始まり、うまくいけば世界初の新型ウイルスに対する経口薬になるかもしれません。

コロナウイルスの増幅を防ぐ

EIDD-2801 と呼ばれる新しい薬は、COVID-19が大量に増殖する過程をブロックします。

Ridgeback Biotherapeuticsという会社は、もともと「万能なインフルエンザ薬」を探す研究の過程でインフルエンザの薬としてEIDD-2801を見つけていました。

COVID-19によるパンデミックが発生する前の2019年10月には、アメリカの国立アレルギー・感染症研究所から研究資金を得て、この薬剤のインフルエンザに対する効果を検討し始めましたが、COVID-19が出現するとすぐにインフルエンザからCOVID-19に研究対象を切り替えました。

この会社や共同研究先の大学のチームは、これまでレムデシビル (Remdesivir) という薬がCOVID-19と近いウイルスであるSARSやMERSの流行の原因となったコロナウイルスの複製を大きく抑える効果があることを見出しています。

実際、レムデシビルは2020年3月にCOVID-19に対する臨床試験を開始したことで注目されています。

このレムデシビルよりもさらに高い実験結果が得られたのがEIDD-2801です。

レムデシビルはウイルスの自己複製を完全に停止させることを目的にしているのに対して、EIDD-2801はウイルスのRNAに変異(ミス)を誘導して複製を行い、もはや人の細胞に感染できないほど大きなダメージを受けるように改変するという働き方で効果がある薬です。

EIDD-2801のもう一つの特徴は、他のRNAウイルスに対しても効き目があることで、これはちょうど抗生物質がいろいろな細菌に対して作用するのと似ています。

実際、いくつかの前臨床研究 (人ではなく、動物レベルでの研究)では、複数の研究室の科学者たちがEIDD-2801がいくつかのインフルエンザの株や、チクングニアなどといったCOVID-19以外のRNAウイルスに対して有効であることを報告しています。

この研究の意義

すでにいくつかのグループによって新型コロナウイルスワクチンの臨床治験が始まっていますが、「ワクチン」はまだ感染していない人に免疫をつけることはできるものの現在感染している人の治療にはなりません。

また、開発が進んでいる他の治療薬候補はいずれも点滴で使う薬であり、病院でなければ投薬できません。

EIDD-2801は経口薬 (飲み薬) なので患者さんの負担も少なく、また感染症が蔓延して入院できる病床が足りなくなった場合には自宅で療養しながら服薬できる可能性もあります。

米国食品医薬品局 (FDA) はEIDD-2801の臨床試験を開始する許可を出し、アメリカだけでなくイギリス当局にもRidgeback Biotherapeutics社は試験の開始を要請しています。

関連図書・サイト

この記事に関連した内容を紹介しているサイトや本はこちらです。

An orally bioavailable broad-spectrum antiviral inhibits SARS-CoV-2 in human airway epithelial cell cultures and multiple coronaviruses in mice

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