医学の古代史 【四大文明の頃の医学】

医学の歴史はとても古く、四大文明の頃にはすでに医師がいました。この記事では、古代の医学の歴史を駆け足で紹介します。

医学のおこり

おそらく人が最初に行った医療は動物が本能的にケガに対処するのと似たようなものだったでしょう。その傷をもんでみたり、薬草を食べたりしながら効果のあったものが残っていき、経験を積み重ねて原始医療が誕生しました。

さらに知恵をつけた人間は、自然を超えた神や悪魔の力を信じ始めました。この頃は医療は宗教や魔術と一体で、邪気をはらう呪術師などが活躍します。そこから医療という専門職に携わる人が誕生したのでしょう。

世界各地に文明が起こると医学も発展していきます。

四大文明と医学

エジプト文明における医学

古代エジプトでは、すでに多くの専門医が活躍していました。専門医による医学書もパピルスという現代の紙にあたるもので作られ、医学知識が蓄積しています。

それらの医学知識は神から与えられたものと考えられていて、病気の原因として神々の意思が最上位におかれていました。なかでも最も有名な医神としてイムホテプが知られています。

古代エジプトではすでに下剤などの薬物療法や、骨折や脱臼の整復、止血法、膿 (うみ) の切開といった現代にも通じる医術の初歩があったと報告されています。

古代エジプトの医学は、やがてギリシャに受け継がれることになります。

そしてそのギリシャ医学が、西洋医学の源流になっていきます。こちらについては別の記事で見ていきましょう。

メソポタミア文明における医学

メソポタミア文明の頃にも、すでに職業的な医師がいました。世界最古の医学書は、楔形文字の粘土板 (紀元前5000年頃) と言われています。

ハムラビ法典 (紀元前18世紀) は「目には目を、歯には歯を」でとても有名ですが、医療費の規定や医療事故の罰則 (治療に失敗したときには医師の両手を切り落とす) についても書かれています。

メソポタミア医学で特に有名なのは肝臓占いです。肝臓には生命が宿っていると考えられていて、いけにえの動物の肝臓を調べることで病気の診断 (占い) をしたと言われています。模型はルーブル美術館などで見ることができます

インダス文明における医学

古代インド医学は、紀元前1500年頃に侵入したアーリア人によってもたらされたと言われています。

アーリア人たちは、健康と長寿の秘訣をまとめたアーユルヴェーダを集成していきました。

特に古代インドでは刑罰として鼻をそぐことが行われていたので、形成外科として造鼻術など、主に外科系の手術が発達しています。

中国文明における医学

お隣の国、中国でも古くから医学が起こりました。

伝説上の皇帝である神農 (しんのう, 紀元前3000年頃) は、東洋の医薬書の原点である神農本草経 (ほんぞうきょう)の著者だと言われています。

自分の殻で365種類の植物などを試してその薬効をまとめたもので、中国の医神として現代でもまつられています。

もう1人有名なのは、黄帝 (こうてい, 紀元前2500頃) で、何千年もの間、基本医学書とされた「黄帝内経」 (こうてい だいけい)の著者とされています。

これは精神療法や鍼灸療法も含めた内科的な治療についてまとめた本ですが、外科治療については書かれていません。外科学が弱いというのが、古代中国医学の特徴です。

この中国医学は古墳時代以降に日本に伝わり、日本にあった原始医療にかわって普及していきました。

関連図書

この記事に関連した内容を紹介している本はこちらです。

今日も【生命医学をハックする】 (@biomedicalhacks) をお読みいただきありがとうございました。