生命科学実験プロトコルの探し方 【まずここを探す】
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研究室で生命科学・基礎医学系のプロジェクトをスタートするとき、実験プロトコルを作るところから開始することも多いでしょう。

近くに経験者がいない場合には、すでにあるプロトコルをまず探して、それらを少しずつ改変して自分の目的にあったプロトコルにしていく必要があります。

この記事では生命科学系の研究を初めて行うことになった学生さんを対象にして、生命科学プロトコル、特に分子細胞生物学領域のプロトコルの探し方について解説します。

基本となる生命科学のプロトコル本

全ての基本となるのは最小限の知識を身につけることです。滅菌のしかた、大腸菌の扱い方、ベクターの作り方、細胞培養の基本といったところです。

このような基本事項は、ネットの断片的な記事を読むのではなく、体系立てて書かれた本を読むのがオススメです。

日本語で読める入門書としてはバイオ実験イラストレイテッドシリーズが一押しです。このシリーズの最大の特徴は、タイトル名からもわかるように実験手順のイラストが豊富に掲載されていることです。全く実験がはじめての場合、そもそもイメージが沸かないということは多いものですが、イラストを見ることで具体的な手順がイメージしやすくなります。

7分冊に分かれているので、身につけたい実験手技に応じて読むとよいでしょう。

1. 分子生物学実験の基礎
2. 遺伝子解析の基礎
3. PCR
4. クローニング
5. タンパク研究
6. 細胞培養
7. 酵母

他にも、羊土社からはより詳細なプロトコル集が定期的に出版されています。

また、日本語ではなく英語の本になってしまいますが、世界ではCurrent ProtocolsシリーズとMolecular Cloningが分子生物学の基本プロトコル集として非常に有名で、おそらく図書館にもあるでしょう。

いずれの書籍も日本語の入門書には書かれていない原理や落とし穴の説明まで網羅されており、博士課程に進むのであれば一読を強くススメます。

オンライン上の実験プロトコル

ここまではどちらかというと基礎的なプロトコルでしたが、もちろん実験手法もどんどん進化しており、そのような先進的な実験プロトコルに特化した学術誌やブックシリーズもあります。

代表的なのはNature Protocolsで、科学雑誌Natureの姉妹誌に相当する最先端でハイレベルな査読済み実験プロトコルが掲載されています。

Cold Spring Harbor ProtocolsはCold Spring Harbor Laboratoryが発行するプロトコル集で、どちらかというとCurrent Protocolsシリーズに近いものの国際的に高い評価を受けているプロトコル集といえるでしょう。

また、Springer社が出版しているMethods in Molecular Biology
シリーズは分子細胞生物学領域の各分野の専門家たちが編集した専門性の高いプロトコル集で、これまで2000冊以上の本が出版されています。このシリーズの特徴はなんといっても1巻あたりのテーマがとても狭いのに数百ページにわたってさまざまなプロトコルが紹介されていることで、自分がやりたい実験にあった専門性の高い本が見つかる可能性は大きいといえます。

同じくSpringer社が運営するExperimentsでは、同社がこれまでに発行してきた数万ものプロトコルをオンラインで検索できるようになっています。

実験プロトコルとは違いますが、ちょっとしたことを日本語で聞けるBioTechinical フォーラムもあります。過去の質問とその回答もみることができ、とても勉強になります。

ちなみに当サイト「生命医学をハックする」でもアガロースゲル電気泳動の方法と原理 【失敗原因の考察も】硫安分画によるタンパク粗分画 【アセトン沈殿、TCA沈殿】といった記事で実験方法や注意すべきポイントを解説したり、あるいはクローニングの方法まとめ 【制限酵素だけではない】のような記事で最近のトレンドを紹介しています。

実験手順を動画で見る方法

インターネット通信網が発達するにつれて、動画の重要性がますます高まっています。この点にいち早く目をつけ、動画の実験プロトコル集JoVE (Journal of Visualized Experiments) が定期的に発行されています。

このシリーズの特徴は出版社が実際に研究者をインタービューしており、実験をする上で気をつけたい細かいポイントなどが分かりやすいということです。

このような動画プロトコル集は今後も引き続き期待できますね。

まとめに代えて

この記事では、主にはじめての実験を行う学生さんを対象にプロトコルの探し方を紹介しました。これまでの先人たちの努力の結果、多くの手法が開発され、そのうちの一部はプロトコル集として利用可能になっています。

こういうところに着想を得て、自分なりにカスタマイズしていくようになるには経験が必要ですが、まずは書かれている通りに実験をやってみるところから始めてみてください。

関連図書

この記事に関連した内容を紹介している本はこちらです。

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