ヒポクラテスの誓い 【医学の父と言われる理由】
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【生命医学をハックする】運営者 (@biomedicalhacks)。生命科学研究者、医師・医学博士。プロフィールはこちら

ヒポクラテスは医学の父とも呼ばれる人物で、その教え「ヒポクラテスの誓い」は特に有名です。

この記事ではヒポクラテスの人生と彼が生きた古代ギリシャを振り返り、その教えを見ていきます。

ヒポクラテスとは

ヒポクラテスは紀元前460年頃、エーゲ海の小さなコス島というところに生まれたと伝わっています。

医師であった父から医術を学び、ギリシャの島々を巡回して各地で名声をあげ、医学界の権威となり数多くの弟子を育てました。

その業績はヒポクラテス全集によって現代まで伝わっていますし、世界で最も有名な医学の古典文献になっています。

古代ギリシャの医学

ヒポクラテスが生きた古代ギリシャでは、ヒポクラテスの出身地であるコス島の医師らが構成するコス学派と、その対岸に勢力を持つクニドス学派が対立していました。

クニドス学派は「病気をみる」、コス学派は「病人をみる」という大きなポリシーの違いがありましたが、ヒポクラテスらの活躍により病人をみるコス学派が優勢になっていきます。

ヒポクラテスよりも前の時代、古代ギリシャでは医神アスクレーピオスへの信仰をもとにした魔術的な医療が行われていました。

神殿が各地に作られていて、治療を求める患者はこの神殿に何日もこもって神官から儀式を受けていたのです。

ヒポクラテスは神がかり的な治療を否定し、病気の原因は人間の知恵で理解できるはずだと考えました

また、当時のギリシャは哲学が盛んでした。病気をみるという立場の人たちは、まず哲学的に考えるところからスタートしていたのです。

ヒポクラテスはこれも否定し、まず「病人をみる」、つまり診察するところからはじめました

ヒポクラテス医学の大きな特徴は、神秘主義でも哲学でもなく、医学に必要なのは科学性だというところで、四大文明の頃からの知見も取り入れ (詳しくは医学の古代史 【四大文明の頃の医学】をごらんください)て当時の診察法・診断法・治療法を体系化し、ヒポクラテス全集ができたのです。

ヒポクラテスの姿勢は、医学を発展させる柱となっていきます。

四体液説と体内バランス

古代ギリシャ人は、世界が4つの元素、「水」「火」「空気」「土」からなっていると考えました。

ヒポクラテスを含めた古代ギリシャ人に受け入れられていた四体液説は医学の基本学説で、人体もこういった4つの性質を持った体液によって構成されているという説です。

その4つは、温かく湿った「血液」、温かく乾いた「黄胆汁」、冷たく乾いた「黒胆汁」、冷たく湿った「粘液」です。

全身的あるいは局所的な体液のバランスが崩れた時に、病気が発生すると考えられていました。

ヒポクラテスは、体にはこういう体液のバランスを回復させる機能が備わっていて、それを手助けすることが最も大切だと主張しました。

患者の症状を細かく分析してその見通しを判断する予後診断は、ヒポクラテスらが最も力を入れた分野の1つです。

ヒポクラテスの誓い

ヒポクラテスは医学の科学的な面を協調しましたが、もう1つ重要なポイントがあります。

それは医療者に高い倫理性を求めたことです。医業への献身、有害な治療の禁止、守秘義務の保持などを求めたヒポクラテスの誓いは、現在の医学教育にも必ず登場しますし、医学部の入試でも問われるケースもあります。

医神アポロン、アスクレピオス、ヒギエイア、パナケイアおよびすべての男神と女神に誓う、私の能力と判断にしたがってこの誓いと約束を守ることを。

この術を私に教えた人をわが親のごとく敬い、わが財を分かって、その必要あるとき助ける。

その子孫を私自身の兄弟のごとくみて、彼らが学ぶことを欲すれば報酬なしにこの術を教える。そして書きものや講義その他あらゆる方法で私の持つ医術の知識をわが息子、わが師の息子、また医の規則にもとずき約束と誓いで結ばれている弟子どもに分かち与え、それ以外の誰にも与えない。

・私は能力と判断の限り患者に利益すると思う養生法をとり、悪くて有害と知る方法を決してとらない。
・頼まれても死に導くような薬を与えない。それを覚らせることもしない。同様に婦人を流産に導く道具を与えない。
・純粋と神聖をもってわが生涯を貫き、わが術を行う。
・結石を切りだすことは神かけてしない。それを業とするものに委せる。
・いかなる患家を訪れるときもそれはただ病者を利益するためであり、あらゆる勝手な戯れや堕落の行いを避ける。女と男、自由人と奴隷のちがいを考慮しない。
・医に関すると否とにかかわらず他人の生活について秘密を守る。
・この誓いを守りつづける限り、私は、いつも医術の実施を楽しみつつ生きてすべての人から尊敬されるであろう。もしこの誓いを破るならばその反対の運命をたまわりたい。

このヒポクラテスの誓いを現代的な言葉にしたのが世界医師会が発表したジュネーブ宣言 (1948年) です。

医師として、生涯かけて、人類への奉仕の為にささげる、師に対して尊敬と感謝の気持ちを持ち続ける、良心と尊厳をもって医療に従事する、患者の健康を最優先のこととする、患者の秘密を厳守する、同僚の医師を兄弟とみなす、そして力の及ぶ限り、医師という職業の名誉と高潔な伝統を守り続けることを誓う

ヒポクラテスは医学に大切なもの、科学性と倫理性を示しました。これは現代でも普遍の真理であり、だからこそ医学の開祖としてあがめられているのです。

関連図書

この記事に関連した内容を紹介している本やサイトはこちらです。

医学の古代史 【四大文明の頃の医学】

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