ガラス玉を通すと物が大きく見えることは古代エジプト時代に発見されましたが、それを高性能顯微鏡にまで進化させたのはレーウェンフックという科学者です。
レーウェンフックは驚いたことに学者ではなく、もともとは趣味で始めた研究から科学界に名を残すようになった人物です。
この記事ではレーウェンフックの人生と彼が発見した微生物についてまとめます。
レーウェンフックの生い立ち
アントニー・レーウェンフックは、1632年オランダに生まれました。呉服などの商人であり、学者ではなかったものの、顯微鏡づくりを趣味としていました。
当時の顯微鏡はガラス玉を磨いてレンズとして使うという単純なものでしたが、きわめて性能がよく、同時代に活躍したロバート・フックの顯微鏡よりも高い解像度を持っていました。ロバート・フックについては別の記事で紹介しています。
1674-75年にかけ、レーウェンフックは湖や井戸の水に小さな目に見えない生物が泳いでいることを報告しました。さらに1676年には細菌と思われる生物も報告されています。
この世界は目に見えない小さな生物であふれているということに人類で初めて気がついたのです。
当時の常識からはあまりに突飛すぎるので最初はあまり受け入れられませんでしたが、複数の学者を自宅に招き実際に見てもらうことでその発見が認められるようになっていくのです。
微生物と人体の関わりの発見
有名になったレーウェンフックはその後も研究を続け、ヒトや動物の体液・排泄物などを調べることで、生物の体内に多数の微生物が存在していることを明らかにしています。
例えば、自分の虫歯に多くの細菌がいることを観察し初めて虫歯の原因を突き止めました。
レーウェンフックは1723年、90才で世を去りましたが、その時にも観察報告を科学界に送るよう主治医に依頼したと伝わっています。
このようにして、レーウェンフックは小さな世界を初めて目に見えるものにしました。
レーウェンフックは細菌学や原生動物学の創始者であり、細胞学・組織学にも多大な影響を与えています。
レーウェンフックの顯微鏡
レーウェンフックは500もの顕微鏡を作ったと言われていて、そのうちの9個が現在も残っています。
(wikipediaより引用)
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まとめに代えて
レーウェンフックは正式な科学教育を受けたことのない、アマチュア愛好家からスタートしました。本業の傍ら顯微鏡に打ち込んだ結果画期的な成果を見つけたことからも分かるように、研究機関に所属していないと研究ができないわけではありません。
現代でも、自宅で生命医学研究を行う方たちも少なくなくDIYバイオの夜明け【インスリンを自宅で作る】で紹介しています。
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関連図書
この記事に関連した内容を紹介している本はこちらです。
顕微鏡の発明と科学研究への応用史 【フックによる細胞の発見】
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