メタボロームに関係する疾患は、生活習慣の変化もあって世界的に増えています。その結果、遺伝子型とメタボローム疾患の関係を調べるゲノムワイド関連解析 (GWAS) も盛んに行われるようになりました。
この記事では、それらGWASの結果を分かりやすくまとめたポータルサイトを紹介します。
遺伝子から表現型を調べる
Common Metabolic Disease Knowledge Portalは、Broad Instutiteが中心となって運営しているメタボリック疾患と遺伝子型についての関係についてまとめたデータベースです。
例えば、PCSK9という遺伝子について検索してみます。
さまざまなGWASと表現型データ解析をメタアナリシスで統合すると、この遺伝子はLDL cholesterolと特に強い関連があると言えることが分かります (p= 2.48e-308)。
具体的には、このマンハッタンプロットからこれらのSNPが大きな意味を持っていることが分かります。
もちろん個々のSNPについてより詳細を表形式で得ることもできます。
他にも、このような表現型と関係があるということが一瞬で見てとることができます。
表現型から遺伝子を調べる
先ほどは興味のある遺伝子から、どのような表現型があるのかを調べる方法を見てきました。
この逆、つまり表現型からその遺伝子を調べることもできます。
再びトップページに戻り、2つ目のタブ「Phenotype」を選択します。ここではBMI (body mass index) に関係する遺伝子を調べてみます。
このモードでは、これまでBMIについて行われたGWASの結果をメタアナリシスで統合して表示されます。使われているデータセットはページの一番下にまとまっています。今回の場合、100万人以上の統合解析になります。
GWASのメタアナリシスの結果、BMIと最も関係するのはFTO遺伝子のSNPであるということが分かります。
プロジェクトの概要
できることを簡単に紹介しましたが、そもそもこのプロジェクトはBroad研究所らの国際合同チームによって2020年夏にスタートしました。
新しいツールやインターフェースが追加予定なので、将来的にはもっと増えていくことでしょう。
現在対応しているのは糖尿病、心血管疾患、脳血管疾患、睡眠障害についてですが、対応する疾患についても拡大予定のようです。
まとめに代えて
この記事では、メタボリックシンドロームの表現型と遺伝子型の関係を調べることができるポータルサイトについて紹介しました。
簡単にデータを表示できるので、ぜひ動かしてほしいと思います。
また、他にもさまざまなウェブツールが公開されています。それらの一部は「今日から使える! データベース・ウェブツール 達人になるための実践ガイド」という本などで紹介されています。
ちなみに、メタボリックシンドロームは自宅でも簡単に検査することができる時代になりました。一番いいのは病院で検査することですが、仕事が忙しい等の理由で受診できない場合には、まずはこういったキットで簡便に調べてみるのもいいかもしれません。
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