免疫細胞であるマクロファージに遺伝子改変を行うことで、全身を探索し2.5-5.0 mm3 というごく小さいがん見つけるセンサーとして使えるということがマウスで実証され、Nature Biotechnology誌に発表された。原題は「Engineered immune cells as highly sensitive cancer diagnostics」だ。
この研究の背景
転移前の治療可能である間にがんを見つけることは、がんの罹患率と死亡率、さらに医療コストを削減するうえで大きな期待が寄せられている。
近年いろいろなバイオマーカーベースの試験が急速に発展しているが、感度および特異度の面で十分とは言えない。
マクロファージは、炎症促進性のM1型、抗炎症性のM2型という大きく2種類が存在する。
固形がんにおいて、がんによってマクロファージはM2型状態に再プログラミングされる。
M2マクロファージが出している遺伝子 (マーカー) としてよく知られているアルギナーゼ1(arginase 1 , Arg1)の発現は、大腸がんがあるマウスにマクロファージを静脈内注射すると、上昇することが示され、癌がある時に上昇するバイオマーカーとして理想的な性質を示した。
著者らは、分泌型ルシフェラーゼ(Gluc)をArg1プロモーターの活性化とつなげたマクロファージを作ることで、イメージング可能な合成レポーターを設計し、腫瘍検出に役立てた。
ごく小さながんを100%見つけることができた
移入されたマクロファージが効率的に腫瘍に到達できることを蛍光イメージングで観察した後、著者らは血液ベースのアッセイと生物発光イメージング(BLI)の両方を通してインビボで腫瘍を検出できるかどうかを調べた。
センサーマクロファージを注射してから24時間後に血漿Glucレベルを測定することにより、大腸がんがあるマウスにおいて、ごく小さな腫瘍100%の感度および特異性で識別できることが明らかになった。逆に、1,500 mm3を超える大きな腫瘍の場合は、おそらくは内部の低酸素性がマクロファージ浸潤を制限しているためにこのシステムでは識別できないことも分かった。
これまでの方法との比較と今後の展望
新たに作成したマクロファージセンサーの感度を、現在臨床的に使われているバイオマーカーと直接比較したところ、Glucレベルは小さな腫瘍を検出できるのに対し、CEA検査では腫瘍が平均137 mm3に達したときに初めて検出され、マクロファージセンサーの方が高感度であることが示された。
免疫細胞をセンサーとしてうまく活用したこの研究は、がん患者の予後を改善するための早期発見ツールとして有用なものである。