初めての科研費の注意点 【区分の決め方も】
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【生命医学をハックする】運営者 (@biomedicalhacks)。生命科学研究者、医師・医学博士。プロフィールはこちら

研究を行うには研究費がかかります。いろいろな民間団体もさまざまな助成を用意してくれていますが、国の科研費は最も大きな公募事業の1つです。この記事では、はじめて科研費を出す方に向けた、よくある疑問をまとめます。

科研費とは

科研費とは、人文学・社会科学といった文系の学問と、あらゆる自然科学にわたる学術研究を対象とした競争的資金です。

毎年9月1日に公募が開始され、11月上旬が応募締め切り、そして翌年4月1日に交付内定となります。

応募時点で、大学や高等専門学校、あるいは研究所 (企業のものを除く) に勤める研究者である必要があります (学部生・大学院生は応募できない)。

科研費の採択率は20-30%ほどですが、だからこそ採択された場合には研究費をもらえるだけでなく「外部資金獲得歴」として研究者の業績にもなります。

はじめて応募する際には独特の用語が少し分かりにくいのも事実です。そこで、いくつか用語の説明をし、その後に実際に応募するときにオススメの区分や注意事項をまとめます。

用語1: 研究代表者と分担者

1つの研究課題には、1人の研究代表者と複数名 (いない場合もある) の研究分担者がいます。

研究代表者とは、その研究全体に全ての責任を持つ人のことです。初めての科研費を出す場合には、通常は研究代表者として出すことになります。

研究分担者は「研究代表者」からその研究計画に入れてもらう研究者のことです。研究代表者としては自分ではできないことを分担者にやってもらうことができたり、分担者の研究業績も申請書に加えて業績欄の記載事項を増やすことができます。

一方で当然ながら研究分担者にも研究費を配分する必要があるので、分担者が多いと代表者が使える研究費は減ることになります。

用語2: 直接経費と間接経費

科研費で支給される総額のうち、実際にその研究に使えるのはおよそ7割の直接経費です。

直接経費は、研究課題の遂行に必要な経費について、幅広く使用することができま

残り3割は間接経費になり、主に研究開発環境の改善や研究機関の機能向上に使われるお金になります。

例えば、管理施設・設備の整備・維持費や、そこで働く事務員さんの人件費・消耗品費、図書館費 (施設維持費や学術誌の購読費) ・論文投稿費・共用機器の購入費・維持費、研究の広報費、特許出願費用などがそれにあたります。

用語3: 基金と補助金

科研費は大きく「基金」と「補助金」に分けられます。「補助金」は、研究期間が数年に及ぶ場合でも、1年ごとにその年の研究費について交付内定・交付決定が行われます。

翌年度に研究費を繰越しするには、手続きが必要です (認められている繰越事由に該当する場合に限る)。詳しいことはこちらをご覧ください。

「基金」は、研究期間全体の研究費が一括で交付内定・交付決定されます。そのため、年度の区切りを気にせず研究費を使用することができます。

若手研究や基盤研究(C)、研究活動スタート支援、挑戦的研究(開拓・萌芽)といった、「はじめて」科研費に応募する方が申請するであろう区分はほとんど基金になっています。

はじめての科研費にオススメなのは若手研究

科研費にはいろいろな種目がありますが、そのうち最もコアとなるのはおそらく「基盤研究」でしょう。基盤研究の中はさらにS, A, B, Cと分かれていて、Sになるほど研究資金も増えていきます。

例えば基盤Cだと総額およそ500万円弱ですが、1段階上の基盤Bだと2000万円弱、その上の基盤Aなら4000-5000万程度になります。

プロジェクトは複数年かけて行われるので、1年あたりの研究費はこれの1/3 ~ 1/5くらいになります。

ですがこの基盤研究はこれまでに十分な研究成果 (=論文) を持っている研究者が応募するものであり、「はじめて」の方向きではありません。

そういった方には「若手研究」が最適です。博士号取得後8年未満の研究者しか応募できないので、競合相手の研究業績が基盤研究に比べれば十分ではないことも多く、採択率もおよそ30%と基盤研究より高めに設定されています。

インパクトファクター1桁前半台の速報誌 (BBRCなど) に筆頭論文が1本のみで採択されたケースや、筆頭論文がなくても採択された方もいらっしゃいます (申請書の書き方がとても上手だったのでしょう)。

初めての応募では、まずこの若手研究に照準を合わせるといいでしょう。若手研究に採択された場合、支給される研究費は基盤Cと同額になります。

若手研究は、従来は39才までの方が応募できましたが、いろいろな事情で学位をとる年齢が遅くなるケースもありますので、博士号取得後8年未満に「若手」の定義が変更されました。

ただ、逆に博士号を持っていないと若手研究には応募できません。博士号を持っていない場合、すでに十分な研究実績があるのであれば基盤Cなどにチャレンジするのもいいのでしょうが、そうでない場合には「研究活動スタート支援」や「奨励研究」がいいかもしれません。いずれも若手研究よりも金額は少なくなってしまいますが、最初の足がかりのために作られた制度です。

あるいは、抜群に面白い研究ネタがあれば、挑戦的研究の萌芽という区分もあります。萌芽の特徴はなんといっても過去の研究業績をほとんどみないこと、そして探索的性質の強い芽生え期の研究を対象とすることです。採択率は10%程度でなかなか難しいですが、アイデア次第で採択される可能性があります。

研究領域の決め方と審査の方法

応募する種目ごとに決められた研究領域の中から自分の研究に合うものを選択しないといけません。

この記事で紹介した若手研究や基盤Cの場合には、2段階書面審査という方式がとられていて、自分の研究に合致する「小区分」を担当する審査員4人が書類を読んで相対的な点数をつけ (1段階目)、ボーダーライン近辺の申請者について再度書面審査を行う (2段階目) 方式になっています。

つまり、自分の研究テーマにあった「小区分」を選ばないと、研究テーマを理解してもらいにくい審査員にあたってしまいます。

審査区分はたくさんあり、自分の研究がどれに最も近いかは分かりにくいものです。

そんなときは、過去の採択者をKAKENで調べると便利です。具体的にはKAKENのホームページに行き、小区分番号 (例えば48040) で検索します。

そうするとその小区分 (今回の48040の場合は「医化学関連」)で採択された研究者がどのようなテーマで内定したのかが分かるので、自分が申請しようとしているテーマがどの区分に近いかが分かりやすくなります。

科研費に採択してもらうために今からできること

まずは科研費の制度をよく知る必要があります。日本学術振興会のホームページには多種多様な情報が公開されています。

そして次に申請書で気をつけるべきポイントを一通り体系的に学ぶことです。体系的に学ぶために最もいい方法は、ネットにある断片的な記事ではなく本を読むことです。

例えば、

などがこの分野では有名な本です。

その点を踏まえた上で、締切に余裕を持って申請書を仕上げ、採択された経験を持つ複数の人に読んでもらい意見をもらい、ブラッシュアップしていく必要があります。

「科研費 採択される3要素: アイデア・業績・見栄え」という本には、申請書のアイデアと見栄えをブラッシュアップしていく方法が掲載されています。

まとめに代えて

この記事では、はじめて科研費にチャレンジする方が知っておきたい基本中の基本をまとめました。この記事がはじめての科研費獲得に少しでも役立ったなら幸いです。

また、最後に紹介した本の3要素のうち、業績については一朝一夕にアップするものではありません。翌年の申請シーズンに向け、コツコツと頑張らないといけない項目ですね。

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