ロボットで手術するというのがSFの世界であったのは過去の話だ。今は特に前立腺がんでロボットを使った手術は徐々に普及している。
前立腺がんの手術法の変化
数年前までの前立腺がんに対する手術の方法は、「開腹手術」はお腹を10cm程度切って行う「開腹手術」と、小さな穴を数カ所だけ開けて細長い器具を挿入して手術する「腹腔鏡手術」が一般的だった。
ロボット手術は2012年に前立腺がんに対して保険適応となり、それ以来着実に普及してきている。
ロボット外科学会という新しい学術団体も2007年に創立された。
2015年の時点で全世界で年間60万人がロボット手術を受けている。
ロボット手術の方法
ロボット手術、正式には「ロボット支援下内視鏡手術」は、da Vinci(ダヴィンチ)というロボットで行われる。
万能の天才であるレオナルド・ダ・ヴィンチにちなんで名前がつけられた。
1990年代にアメリカで開発され、1999年よりIntuitive Surgical社から販売されているロボットだ。
「ロボット手術」とはいうが、ロボットがひとりで手術をするわけではない。
親指の太さほどの穴をいくつか体に開け、その穴に内視鏡と手術器具を挿入する。
手術器具はロボットの手に繋がっていて、医師の手や指の動きと全く同じように動くことができる。
従来の腹腔鏡手術との違い
ロボット手術で行う内容は基本的に腹腔鏡手術と同じだが、これらは操作の精度が大きく違う。
従来の腹腔鏡手術では手ぶれが問題となるが、ロボットには手の動きを補正する機能があるのでぶれることはない。
ロボット手術で使う道具が特殊なので、腹腔鏡手術では難しかった角度からものをつかんだり切ったりすることもできる。
ロボット手術の細やかな操作性について、この動画をみるとわかりやすい。
ぶどうの皮を縫う様子が見られる。
ロボット手術はますます普及していく
ロボット手術はその適応疾患がどんどん広がっている。
当初は前立腺がんだけだったが、今では膀胱がんや産婦人科疾患、さらには消化器がん、肺がん、そして心臓の手術にも使われるようになってきた。
どのような手術があるのかはこちらから見ることができる。
高度な専門技術をもつ医師の手術を、離れたところにいても受けることができるようになる。
実際、国際宇宙ステーション上のロボットを地上から操作するなどの実験も行われている。
ロボット技術はこれからますます普及していくだろう。