医師執筆記事 (厚労省医籍登録番号499533)
つらい胸焼けに悩まされていても、病気ではないと考えて病院を受診しない方も少なくありません。
この記事では、胸焼けがする胃食道逆流症という病気について治療や予防も含めて紹介し、記事の最後で胃食道逆流症を治療しないとがんになりやすいという話をします。
この記事の内容
胃食道逆流症とは
食べたものは、食道を通って胃に運ばれ、そこで胃酸などを含む胃液と混ざります。
そのまま胃の奥からつながっている十二指腸に入り、小腸へと流れて栄養が吸収されるのが正常です。
胃食道逆流症という病気は、その名の通り、胃から食道に逆流してしまう病気です。
胃液は酸性なので、食道の粘膜が傷ついてしまいいろいろな症状が出る病気で、逆流性食道炎とも言われています。
胃食道逆流症は、以前は日本ではあまり見られない病気でしたが、食生活が欧米化したことで患者さんは増えています。
胃食道逆流症の症状
最も多く見られる症状は、みぞおちの上の、胸の辺りに灼熱感を感じる胸焼けです。
これは胃から逆流した胃酸が食道の粘膜を刺激したり炎症を起こすことで起こる症状です。
胃酸にさらされる結果、食道が強く収縮して、心臓の痛みと誤解されることがあるほどの胸の痛みが起こることもあります。
酸っぱいものが上がってくる感じ (医療用語では呑酸, どんさん, といいます) や、胃もたれ、喉の不快感などの症状が現れることもあります。
田辺三菱製薬さんのホームページから図を引用させていただきます。
胃食道逆流症の原因
食道の下部の筋肉は、胃からの逆流がこないように通常では食道をしめつけて逆流を抑えることができるようになっています。
この筋肉、下部食道括約筋の緩みが、胃食道逆流症の原因です。パラマウントベッドさんのサイトにわかりやすい図がありますので引用させていただきます。
食べ過ぎや早食いなどをしていると、下部食道括約筋が緩みやすくなります。
他にも、生活習慣の欧米化で胃食道逆流症が起こりやすくなるという要因もあります。
例えば、揚げ物など脂肪が多いものを食べると、十二指腸から下部食道括約筋をゆるめるホルモン (コレシストキニン) が分泌されるので、胃酸が逆流しやすい状態になります。
肉類も食べる量が多いと、胃酸の分泌量が増えるので、食道に逆流しやすくなります.
食事をして、すぐに横になると、胃酸が食道に留まり炎症が起こりやすくなります.
肥満や、仕事などで前屈みの姿勢が続くと内臓脂肪で腹圧が上がり、圧迫されるので、胃酸が逆流しやすくなります.
この病気の専門は内科、特に消化器内科ですので、気になる症状があればひどくならないうちに受診する方がいいです。
胃食道逆流症の検査と治療
一番信頼できる検査は、内視鏡検査 (いわゆる胃カメラ) になります。食道がどれくらい酸性なのかを調べることも行われます。
治療の基本は薬物療法です。胃酸の分泌を抑える作用がある薬 (プロトンポンプ阻害剤PPIかカリウムイオン競合型アシッドブロッカーP-CAB) を内服することになります。
生活習慣を変えると胃食道逆流症は改善する
生活習慣を改善することによって、薬の効果が効きやすくなったり、逆流しにくくなります。具体的には、
食べ過ぎない
早食いをしない
脂肪の多い食事や肉類を控える
食後3時間は床につかない
ということが有効です。
胃食道逆流症からバレット食道, 食道がんができる
食道の粘膜が胃酸でただれて、修復されるというのを繰り返すと、そのうち食道下部の粘膜が食道のものではなく胃の粘膜に近づいていきます。
このようにして、胃の粘膜に置き換わってしまうとバレット食道と呼ばれる状態になります。
バレット食道からは特殊なタイプの食道がん (腺がん) が起こりやすいことが分かっていて、欧米の報告ではバレット食道の患者さんは健常者よりも食道がんの発生が100倍多いと言われています。
ですので、たかが胸焼けと考えず、なるべく早いうちに専門医に診てもらうのが望ましい病気です。
まとめ
最後に今回の内容をまとめます。
- 胸焼けは胃食道逆流症が原因かも
- 胃食道逆流症は胃酸が食道に逆流する状態で、患者さんは増えている
- 胃酸を抑える薬と生活習慣の改善で症状を抑えることができる
- 胃食道逆流症を放置するとバレット食道から食道がんになるリスクが上がる