【高校生物の物語】染色体分配と交叉の多様性【なぜ兄弟姉妹で違うのか】
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【生命医学をハックする】運営者 (@biomedicalhacks)。生命科学研究者、医師・医学博士。プロフィールはこちら

両親の遺伝情報が子供に受け継がれるはずなのに、兄弟姉妹で同じ人はいませんね。

今回の記事では、この謎についてみていきましょう。

同じ両親でも、その染色体分配のされ方は無数にある

父親と母親から遺伝子をもらって子ができるというのは、多くの生物で共通しています。例えば、19世紀に活躍したメンデルという人は、エンドウ豆を観察することで子にどのような特徴 (形質) が受け継がれていくのかというメンデルの法則をまとめました。

関連記事【高校生物の物語】耳垢遺伝子とメンデルの法則【遺伝の基本】

身近なところでは、血液型や性別も両親からの遺伝子の影響で決まっています。

関連記事【高校生物の物語】血液型と性別の決まり方 【身近な遺伝】

両親の形質を子供が受け継ぐので、同じ両親から生まれた兄弟姉妹は似ています。

しかし完全に同じではありません。それはなぜでしょう?

精子や卵(まとめて 配偶子)をつくるときに、 相同染色体どうしが分かれて 減数分裂が行なわれます。

ヒトの場合、父から受け継ぐ23種類の染色体と母から受け継ぐ23種類の染色体があるので、相同染色体 (父・母のセット) は23組あります。配偶子にはこのうち片方をランダムに渡すということです。

具体的に考えてみましょう。もし仮に染色体が2本(相同染色体は1種類)しかなくても、どちらの染色体を配偶子に入れるかで2通りの配偶子ができます。

染色体が4本(相同染色体が2種類)あれば、4通りの配偶子ができますね。

由来の2番染色体 由来の2番染色体
由来の1番染色体 の1番・の2番 の1番・の2番
由来の1番染色体 の1番・の2番 の1番・の2番

実際には46本(相同染色体は23種類)の染色体を持っているので、2を23回かけて8388608種類(約800万種類)の配偶子ができることになります。

父親からできる精子に約800万通り、母親からの卵にも800万通りの可能性があるので、子は800万×800万通りの染色体の組み合わせがあります

したがって、兄弟姉妹でも、全く同じになる可能性はほとんどないわけです。

染色体の交叉で無数の可能性になる

単純に両親からの染色体が分かれるだけでもたくさんの可能性がありますが、実際にはもっと多くの配偶子が作られます。なぜかというと、減数分裂の途中で、 染色体同士の一部が入れ替わってしまうという現象が起こるからです (これを染色体の交叉とか乗換え といいます)。

これにより、実際には 800万種類以上の配偶子ができるというわけです。

染色体におこる異常と病気

染色体と文字で書くのは簡単ですが、非常に大きな情報の塊で、これをコピーして配偶子に伝える時にエラーが起こることもあります。

どれくらい大きいのかというと、文庫本25000冊分といえばいいでしょうか。標準的な文庫1冊はおよそ200ページ、1ページに600文字が書かれているので、ヒトが持つ遺伝情報 30億文字を書き込むと文庫本25000冊分になるのです。

こんなにたくさんの文字を手で書き写すとどこかにミスが出てしまいますね。実は細胞も同じようにミスをしています。

例えば鎌状赤血球症という遺伝病では、設計図のたった1文字の変化が原因で、赤血球の形が鎌のような形に変化してしまい、正常に酸素を運搬できずに貧血を起こしてしまいます。

この鎌状赤血球症はもちろん人体にとっては不利な変化なのですが、アフリカに広がるマラリアという伝染病になりにくくなる性質もあるため、マラリアの流行地域ではマラリア耐性の鎌状赤血球症の方がたくさんいます

このような文字が変わるケース (変異) だけでなく、その領域ごと情報がなくなる (欠失) こともあります。

逆に染色体を作りすぎてしまうこともあり、代表的な例としてはダウン症 があります。人が持つ23種類の相同染色体は、いずれも2本ずつなのですが、ダウン症の患者さんは第21番目の染色体 が1本多く3本になっているため病気が起こります。

突然変異がもたらす進化

突然変異などによって病気が発生する可能性があるのですが、突然変異によって進化が起こってきた のも事実です。

自然界の環境は少しずつ変わっており、その状況に適応した遺伝子を持つ生物が増えていくのは19世紀に活躍したチャールズ・ダーヴィンの進化論でも言われていることです。

これは特に微生物で顕著で、ある細菌に対する抗生物質が新しく開発されたら一時期は菌が減るのですが、細菌の遺伝子変異の結果、たまたま抗生物質が効かないタイプが生まれ、それが抗生物質がある環境に有利なのでどんどん増えて、しまいにはその抗生物質が効かなくなってしまうのです。

ですから医療従事者は、強力な抗生物質ほどなるべく使わず、「最後の切り札」としてとっておくのです。

この辺りの話はまた別の記事でまとめます。

関連サイト・図書

この記事に関連した内容を紹介しているサイトや本はこちらです。

【高校生物の物語】耳垢遺伝子とメンデルの法則【遺伝の基本】

【高校生物の物語】血液型と性別の決まり方 【身近な遺伝】

まとめ

最後に今回の内容をまとめます。

  • 染色体の分配だけで星の数ほどの可能性がある
  • 染色体の交叉があるため実際にはもっと多様性が出る
  • 遺伝子変異が進化を引き起こしてきた

今日も【生命医学をハックする】 (@biomedicalhacks) をお読みいただきありがとうございました。

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