肺気腫 (はいきしゅ) という病気は、肺の空気をうまく吐き出せなくなる病気です。 患者さんが多いのにも関わらず、長い年月をかけて少しずつ症状が出てくるので、多くの患者さんは未診断・未治療にある病気です。 この記事では、肺気腫の症状と原因についてまとめました。
肺気腫とは
肺気腫 (はいきしゅ) は慢性の(長期の)肺疾患の1つです。肺気腫と慢性気管支炎は、まとめて慢性閉塞性肺疾患(COPD)とも言われています。 慢性閉塞性肺疾患の「閉塞」という名前は、病気により肺へのスムーズな空気の出入りが妨げてられているように見えることから名付けられました。 アメリカでは2400万人以上が肺気腫や他のCOPDにかかっていると推定されていますし、日本にも500万人の患者さんがいると言われていますが、多くの方々は未診断・未治療の状態だという問題があります。
肺気腫のでき方と原因
肺気腫のでき方
肺には肺胞 (はいほう) という小さな空気の袋がありますが、その内側が修復できないほど損傷したときに肺気腫が始まります。 といっても損傷してすぐに肺気腫になるわけではなく、時間の経過とともに少しずつ進行していきます。
このような状態になると、肺から空気をすばやく吐き出すことができなくなります。
肺気腫の原因
肺気腫の主な原因は2つあります。
それぞれ順番に補足します。 ほとんどの場合、タバコが肺気腫の主な原因です。喫煙がどのようにして肺胞の内側を破壊するのかということはまだ完全には解明されていませんが、統計をとると喫煙者は非喫煙者の約6倍も肺気腫を発症しやすいことが分かっています。 また、受動喫煙も肺気腫の原因になってしまいます。 もしタバコを吸っているのであれば、喫煙習慣をやめることで肺へのダメージを軽減できるかもしれません。 もう1つの原因は遺伝子異常です。アルファ1-アンチトリプシン (AAT)は、ヒトの血液中を流れているタンパク質で、その主な機能は白血球が正常な組織に損傷を与えないようにすることです。白血球が感染症と戦う細胞だということは「血液成分とその役割【血液の基本】」や「【高校生物の物語】免疫の仕組み」にまとめました。 このAATですが、遺伝的に体の中で充分に作れない方 (AAT欠損症の方) がいらっしゃいます。 AATが欠乏すると、正常な白血球が肺を損傷してしまいます。その結果、時間の経過とともに、重度のAAT欠乏症の方のほとんどが肺気腫を発症します。この病気にかかっていると、肝臓にも損傷が起こって障害が起きることもあります。
肺気腫の症状
肺気腫は空気を出し入れしにくい肺になっているので、その代わりとして呼吸を助ける筋肉がより動く必要があります。 そのため疲れるのが早くなってしまいます。その結果、少し動いただけで息切れがしたり、病気が悪化すると、じっと座っていても息苦しくなることがあります。 息切れの症状は、最初はゆっくりと現れます。喫煙をしている方に肺気腫の徴候が最初に現れるのは、多くの場合は45歳から60歳の間です。 年齢を重ねるにつれて、たとえタバコを吸わなくても肺は徐々に機能を失います (肺気腫になった後もタバコを吸い続けると、肺の機能がさらに早く失われてしまいます)。 息切れに加えて出てくる症状として、
があげられます。肺気腫がさらに悪化すると、次のような症状が現れます。
肺気腫の病期の進行度については肺気腫の進行度【GOLD/BODEステージ】にまとめています。
関連サイトと図書
この記事に関連した内容を紹介している本はこちらです。
日本呼吸器学会
血液成分とその役割【血液の基本】
【高校生物の物語】免疫の仕組み」
肺気腫の進行度【GOLD/BODEステージ】
まとめ
最後に今回の内容をまとめます。
- 肺気腫は息が出しにくくなる病気で初期症状は息切れ
- 肺気腫の主な原因は喫煙とAAT遺伝子欠損症
- 肺気腫は喫煙をやめないと進行する
今日も【生命医学をハックする】 (@biomedicalhacks) をお読みいただきありがとうございました。