生命医学系学術誌の最新インパクトファクターとその傾向 【2020年6月最新版】
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【生命医学をハックする】運営者 (@biomedicalhacks)。生命科学研究者、医師・医学博士。プロフィールはこちら

研究成果を論文として発表する時に、どの学術誌に投稿するか考慮する際の指標の1つがインパクトファクターです。
この記事では、代表的な学術誌を中心に最新版のインパクトファクターを紹介します。

インパクトファクターとは

インパクトファクターは一言でいえば、その雑誌に掲載された論文が平均して1年間に何回引用されるのかを表す指標です。

例えばインパクトファクターが1の雑誌に掲載された論文は、平均して1年間に1回引用されるということを意味しています。

言い換えれば、インパクトファクターが高い雑誌というのはそれだけ多くの研究者に引用される重要な論文が多い雑誌ということでもあり、多くの研究者が注目している雑誌ということができます。

なるべくなら人目につきやすいメジャー雑誌に掲載してもらいたいということで、インパクトファクターも投稿先を選ぶ際の指標の1つになっています。

インパクトファクターは毎年更新され、6月末に最新版が発表されています。この記事では、2020年6月に発表された最新版のインパクトファクターを、生命科学と臨床医学に分けて紹介します。

インパクトファクター以外の指標についてまとめた研究能力の評価指標10選 【研究者の戦闘力】という記事も書いているのでよろしければあわせてご覧ください

生命科学系雑誌のインパクトファクター

CNS

まずはご存知CNS, いわずとしれたトップジャーナルです。

Nature 42.8
Science 41.8
Cell 38.6

NatureとScienceはここ数年41~~42前後で安定しており、今回の更新でもほぼ変わっていません。

Cellは28.7 (2016) → 30.4 (2017) → 31.4 (2018) → 36.2 (2019) と少しずつ上昇傾向にあります。ただ1990年頃に活躍していた研究者の話では、当時のCellはNatureやScienceより2倍インパクトファクターが高く、Cellの論文はもともと長いこともあって、「Cell 1本はNature 2本分」という感覚だったようです。その意味ではCell誌のインパクトファクター上昇というわけではなく、むしろこれまで少し低かっただけとみますこともできそうです。

CNSの姉妹誌

続いて姉妹誌です。まずはNature関連。

Nature Biotechnology 36.6
Nature Cell Biology 20.0
Nature Communications 12.1
Nature Genetics 27.6
Nature Immunology 20.5
nature Medicine 36.1
Nature Methods 30.8
Nature Microbiology 15.5
Nature Neuroscience 20.0
Nature Plants 13.2

Nature Methodsがじわじわ上昇していましたが、今回30の大台に乗りました。他は大きな傾向はなく、ほぼ前年の横ばいといえます。

続いてScience関係。

Science Advances 13.1
Science Translational Medicine 16.3
Science Immunology 13.4
Science Signaling 6.5

ここで特筆すべきはScience Immunologyです。もともとハイレベルな免疫学の論文が掲載される雑誌でしたが、6.15 (2018) → 8.0 (2019) → 13.4 (2020) とここ数年で急激に上昇しています。

Cell関連誌も見てみます。

Cancer Cell 26.6
Cell Metabolism 21.6
Cell Stem Cell 20.9
Cell Reports 8.1
Cell Systems 8.7
Immunity 22.6
Molecular Cell 15.6
Neuron 14.4

こちらは大きな変化はありませんが、がん関連ではNature Cancer, 代謝関連ではNature Metabolismが創刊され、数年後にはインパクトファクターがつきます。Cell Pressが独占したこれらの分野の専門誌が増えることで、今後数年でCancer CellとCell Metabolismのインパクトファクターに変動が見られるかもしれません。

総合誌

CNSやその姉妹誌以外の総合誌です。

Communications Biology 4.2
Current Biology 9.6
EBioMedicine 5.7
eLife 7.1
EMBO Journal 9.9
EMBO Molecular Medicine 8.8
EMBO Reports 7.5
Journal of Clinical Investigation 11.9
Journal of Experimental Medicine 11.7
JCI Insight 6.2
PNAS 9.4

今年はじめてCommunications Biologyにインパクトファクターがつきました。この雑誌はNature Communicationsの下に位置づけられる3誌の1つで生命科学に特化した雑誌です (残り2つは物理と化学分野)。

同じNature Publishing Groupが出しているScientific Reportsよりは上に位置づけられているため、Nature CommunicationsとSci. Repの間ということでインパクトファクターは一桁後半になってくると思いますが、初年度は4.2とほぼSci. Rep.と同じでした。初年度が少し低く出るのはよくあることなので、来年度以降は上がってきて、7-8くらいで落ち着くのではないかと思っています。

JCI InsightはJournal of Clinical Investigation (JCI) の下に位置づけられる雑誌です。それなりにしっかりした研究が掲載されているので、初年度6.0、2年目の今年は6.2でしたが、これもCommunications Biologyと同じく7-8くらいまでは上昇するでしょう。

各分野の名門誌

最後に、各専門分野において定評のある名門誌について見ていきます。

遺伝学や核酸研究においては、American Journal of Human Genetics (AJHG) 10.5、Nucleic Acids Research 11.5でした。どちらの雑誌もほぼ横ばいで推移しています。

Journal of Biological Chemistry (JBC) 4.2、Molecular and Cellular Biology (MCB) 3.6についても去年とほぼ同じです。特にMCBはかつては非常によく知られた名門誌であり、今でも質の高い論文がたくさんあります。そのため最近のインパクトファクターの低空飛行気味は正直以外なところです。

JBCと似た名前ですが、JCB (Journal of Cell Biology) は細胞生物学の名門で、8.8を維持しています。

生化学は少し下がり気味ですが、逆に上昇傾向にあるのが、がんの分野です。

Cancer Discovery 29.5
Cancer Research 9.7
Clinical Cancer Research 10.1
Oncogene 8.0
Cancer Science 5.0

特にCancer Discoveryは10.1 (2013) → 15.6 (2014) → 19.4 (2015) → 19.8 (2016) → 20.0 (2017) → 24.4 (2018) → 26.4 (2019) → 29.5 (2020) です。この8年であっという間にCNS姉妹誌級になりました。

日本がん学会が出しているCancer Scienceも2017年まで3台でしたが、2-3年で5に近づきました。同じ日本にある分子生物学会が発行するGenes To Cellsが2.9 (2014) → 2.8 (2015) → 2.0 (2017) → 2.0 (2018) → 1.9 (2019) → 1.7 (2020) と少しずつ下がってきていることとははっきり明暗が分かれています。

また、これまで(失礼ながら) マイナーだと考えられてきた雑誌でも急上昇している雑誌があり、例えばMolecular Cancerは2015年に4.2でしたが、少しずつ増えて2019年に10.7、今年は15.3になりました。

先進国では高齢社会が進む結果がん患者さんも増えており、がん分野の上昇はまだ続くと予想しています。

オープンアクセス・速報誌

生命科学の最後に紹介するのはオープンアクセスの草分け的な存在のPLOS OneとScientific Reports, それに昔からある速報誌BBRCとFEBS lettersです。

BBRC 3.0
FEBS letters 3.1
PLOS One 2.7
Scientific Reports 4.0

BBRCは2.5前後で推移してきましたがここ数年わずかに上昇しています。PLOS Oneのインパクトファクターが初めて出た2011年頃は4を超えていましたが、ここ数年は2.8前後で推移しています。

新興分野の専門誌

ここ最近で出てきた新しい研究分野の専門誌です。

ビッグデータの時代、そのデータを扱うデータジャーナルというものも出てきました。

GigaScience 6.0
Scientific Data 5.5

またデータを使ったバイオインフォマティクスのトップジャーナルであるBioinformaticsは5.6であり、概ね昨年と同じです。

システム生物学や合成生物学分野では

iScience 4.4
Molecular Systems Biology 9.0
mBio 6.8
ACS Synthetic Biology 4.4

になっています。iScienceはCell Pressが発行する雑誌で今年はじめてインパクトファクターがつきました。正直なところ4.4は過小評価だと思っていて、掲載される論文の質を考えればCell Reportsと同じくらい (8前後) になると思います。今後数年は上昇していくでしょう。

臨床医学系雑誌のインパクトファクター

臨床医学系の雑誌も参考までにインパクトファクターを紹介します。

五大医学雑誌

New England Journal of Medicine (NEJM)74.7
Lancet 60.4
JAMA 45.5
British Medical Journal (BMJ) 30.2
Annals of Internal Medicine 21.3

有力学術誌

Lancet Oncology 33.8
JAMA Oncology 25.0
Circulation 23.6
GUT 19.8
Blood 17.5
Gastroenterology 17.4
PLOS MEDICINE 10.5

まとめに代えて

この記事では、インパクトファクター最新版を紹介しました。

インパクトファクターは1つの指標ですが、もちろん欠点もあります。そのため他にもさまざまな指標が考案されていて、それらは研究能力の評価指標10選 【研究者の戦闘力】という記事でまとめました。

生命科学系、臨床医学系の有力誌についてはおすすめの生命科学雑誌40選 【日本語の情報もある】臨床医学雑誌のランク 【世界五大医学雑誌を中心に】で紹介しています。

論文をたくさん書くための指南書である「できる研究者の論文生産術」や「なぜあなたは論文が書けないのか?」という本にも有益なヒントがいろいろ書かれています。

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