ボイルミニプレップによるプラスミド抽出 【大量サンプルの時に便利】

プラスミド抽出法といえばアルカリSDS法が有名ですが、ボイル法もあります。

ボイル法は1種類の試薬で完結し、しかもアルカリSDSによるミニプレップより速いという特徴もあります。

この記事では、学生さんだとやったこと無い方も少なくないであろうボイルミニプレップについて紹介します。

ボイルミニプレップで準備するもの

遺伝子組換え実験では、いろいろなDNAコンストラクトを作成し、それを大腸菌中で増幅しますね。

大腸菌からプラスミドを抽出する方法はいくつかありますが、アルカリSDS法が最も一般的に行われているのではないかと思います。

アルカリSDS法によるミニプレップは迅速アルカリミニプレップ法の原理とプロトコル 【フェノール不要】という記事をご覧ください

しかしアルカリSDS法はSolution I, II, IIIを用意したり、工程数がボイル法に比べて多く、多数のミニプレップをより速くやりたい場合には1種類の溶液だけでいいボイル法の方が簡単です。

ボイル法で用意するのは、STET溶液だけです。

STET溶液の組成
8% Sucrose
50 mM Tris-HCl (pH 8.0)
50 mM EDTA (pH 8.0)
5% Triton X-100

本当は大腸菌の細胞壁を壊すためにリゾチームを使用直前にSTET溶液に加えるのですが、これまでの経験からリゾチームは不要です。

しっかりボイルした後にオリジナルの方法にない急冷させることで、細胞壁も壊れ、むしろ収量はオリジナルよりいいのではないかと思っています。

この記事ではオリジナルのプロトコルではなく、それを改良したプロトコルを紹介します。オリジナル版については、Molecular Cloning等の成書をご覧ください。

ボイルミニプレップのプロトコル

まずは大腸菌をいつものように浸透培養

1.5 mLのエッペンチューブに培養液1 mLをとり、15000 rpmで1分間遠心

上清(培地)を取り除き、STET溶液300 μlを加え、ボルテックスで撹拌・懸濁

しっかりしたプロトコル集には、STET溶液に使用前にリゾチームを加えると書かれていますが、リゾチームは不要です。ボルテックスが不十分だと次のステップの溶菌効率が下がり、プラスミドの収量も減ってしまいます。


沸騰した湯で満たされた鍋の中にチューブを1分入れる

プロトコル集にはお湯に入れる前にon iceでincubationと書かれていますが、これは不要です。また、鍋の中にチューブを入れる際には専用のフローターがあるととても便利です。


1分釜茹でをした後すぐに氷水につけて5分間急冷

釜茹でと急冷で溶菌・タンパク変性が起こります。この冷やすのが不十分だと、次の遠心後にしっかりとしたペレットができなくなってしまうので、重要ステップです。氷ではなく、氷水の方が、しっかりとチューブの間にも入ってくれて冷やすことができます


チューブを15000 rpm, 10分遠心

しっかり急冷できていればペレットができます。これは変性したタンパクやゲノムDNAなので捨てることになります


上清を新しいエッペンチューブにとり、2倍量の100%エタノールを加えて混和

ペレットの周辺にある液体も捨てて構いません。全体の6割くらい回収できればよしとします。液量としては200 μlくらいでしょう。その2倍量のエタノールは、400 μlということになります。


すぐにチューブを15000 rpm, 室温で10分遠心

大腸菌のRNAや塩がキャリアとなって働くので、直ちに遠心しても何の問題もなくプラスミドを回収できます。


あとはいつものようにペレットを風乾し、TEに溶解

まとめに代えて

市販のプラスミド抽出キットのほとんどがアルカリSDS法をベースにしているためか、ボイルミニプレップをやったことがない学生さんが増えています。

しかしながらSTET溶液1種類のみで工程数も少ないので、難しいクローニングでたくさんのコロニーの中から正しくとれたものを選ぶ必要があるなど、サンプル数が多い時に特に威力を発揮します。

一度はお試しでやってみて、自分のレパートリーの1つに加えておくのがいいのかなと思います。

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関連図書

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迅速アルカリミニプレップ法の原理とプロトコル 【フェノール不要】

迅速ライゲーション・トランスフォーメーションの方法 【日常のDNAワークをより速く】

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