高血圧薬の種類と副作用【高血圧治療薬の本当の意味】
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日本人のうち、およそ4000万人が高血圧と推計されていますが、そのうち薬をのんでいる人は約半数といわれています。

しかしながら、薬を飲んでいても、多くの方が適切に血圧を制御できていないことが知られています。

その原因の1つとして言われているのが、薬への認識不足です。薬に対して誤ったイメージだと、薬をのむ本当の意味を理解できず、途中でやめてしまったりする方もいるのです。

今回は高血圧治療薬についてみていきます。

血圧を下げる本当の意味と目標値

高血圧薬は、血圧を下げるだけを目的として飲むのではありません。

血圧を下げるというのは1つの通過点であり、脳・心臓・腎臓といった体の重要な臓器を保護するのが、本当の目的です。

これら脳・心臓・腎臓は、高血圧でとくにダメージを受けやすい臓器ですので、血圧の薬をのむことで、大切な臓器を守っているという意識を持つといいと思います。

高血圧の治療

高血圧の治療は、生活習慣の改善と、薬物療法の2種類を組み合わせて行います。

生活習慣の改善というのは、肥満、塩分のとり過ぎ、運動不足などの生活習慣を改善し、高血圧が進行しないようにするためのものです。

具体的な食生活の改善と運動療法についてはこちらの記事にまとめています。

生活習慣の改善だけでは血圧が下がらない場合には、高血圧薬を飲むことになります。

血圧を下げる薬には、血管を広げることで血圧を下げる薬と、血液の量を減らして血圧を下げる薬の大きく2つのグループがあります

血管を広げる薬には、カルシウム拮抗薬やARB、ACE阻害薬などがあり、血液の量を減らす薬には、利尿薬があります。

これらの薬は、血圧の値やほかの病気などを考慮して2〜3種類同時に服用することもあります。

今使われている薬は、さまざまな改良の結果、効果は高く副作用も少ないものがほとんどです。

高血圧治療の目標血圧

2019年、日本高血圧学会は5年ぶりに高血圧治療ガイドラインを改定しました。

年齢や、他の病気の状態によって140/90または130/80が目標になります。
簡単にはこのようになりますが、詳細はかかりつけの先生にお尋ねください。

130/80が降圧目標になる方

脳卒中や冠動脈疾患 (狭心症・心筋梗塞など) にかかったことが有る方、尿中にタンパクが出ている方 (腎臓の悪い方)、糖尿病の方、「血液サラサラ」薬 (抗血栓薬) を飲んでいる方、75歳未満の方

140/90が降圧目標になる方

上記以外の方

高血圧治療薬の種類

血圧を下げる薬について代表的なものとその副作用についてまとめます。

カルシウム拮抗薬

血管を広げるタイプの薬です。
心臓や血管が収縮する時には細胞内にカルシウムイオンが流れ込みますが、このカテゴリーの薬はカルシウムイオンが細胞内に流れ込むのをブロックすることで、結果的に血管を拡げ血圧を下げます。

最もよく使われるタイプの一つです。副作用として、ほてりや頭痛などがあります。

具体的な薬品名としてはノルバスク、アムロジン、ニフェジピン、アテレック、カルブロックなどがあります。

アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)

アンジオテンシンII という血圧を上げる物質は、アンジオテンシン変換酵素の作用によって作られていますが、この酵素を抑えることで体の中でアンジオテンシンII が出来にくくなり、結果として血管をひろげて血圧を下げます。

副作用として、から咳 (痰を伴わない咳) や喉の違和感が出ることがあります。

具体的な薬品名としてはタナトリル、カプトプリル、レニベースなどがあります。

アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)

上のアンジオテンシン変換酵素阻害薬はアンジオテンシンIIができなくする薬でしたが、このアンジオテンシンII受容体拮抗薬はアンジオテンシンIIが作用する部位 (受容体) をブロックすることで血管を広げ血圧を下げます。

アンジオテンシン変換酵素阻害薬の副作用である、から咳はほとんど出ません。

具体的な薬品名としてはミカルディス、ニューロタン、オルメテックなどです。

β(ベータ)遮断薬

交感神経の働きを抑えることで、心臓から出る血液の量を抑えたり、収縮を弱めたりして、血圧を下げるタイプの薬です。

利尿 (りにょう) 薬

尿量をふやすことで体内の水分を減らし、血圧を下げる薬です。古くからある薬ですが、血圧を下げる効果は他のものに負けません。

尿中にカリウムなどのイオンも出してしまう場合があり、そういったイオンのバランスが崩れる (電解質異常) などの副作用が出る場合があります。

具体的な薬品名としては、アルダクトン、フルイトラン、ラシックス、ルプラックなどがあります。

お薬を飲む時の注意点

高血圧薬は、毎日同じ時間に飲みましょう。薬の効果を出すために、また副作用を防ぐためには、決められた時間に、決められた量の薬を飲み続けることが大切です。

薬を飲み忘れてしまうこともあると思いますが、その場合にまとめて飲んではいけません。対処法は、その薬によって違うので、事前に医師に確認しておくべきです。

家で測った血圧がそれほど高くなくても、薬を飲むのをやめないでください
一時的に血圧が下がったので自分の判断で服用を止める患者さんもいらっしゃいますが、そうすると血圧は元に戻ってしまいます。

血圧の上下変動が繰り返されると、かえって血管に傷をつける恐れもあります。

グレーゾーンの「高値血圧」も治療が必要

上に延べた最新版のガイドラインでは、実は140/90以上の「高血圧」の他に3種類の血圧を定めています。

本当の意味の「正常血圧」は120/80未満であり、120-129/<80 (上の血圧が120-129, 下の血圧が80未満) を「正常高値血圧」、130-139/80-89を(上の血圧が130-139, 下の血圧が80-89) 「高値血圧」と高血圧学会では命名しました。

「高値血圧」はすぐに薬物治療とはなりませんが、3-6カ月間の生活習慣の修正を行い、それでも改善がみられない場合は、生活習慣修正のさらなる強化を行うと定められれています。

つまり、これまでは“高血圧症”という病気になったら治療するという方針でしたが、病気でなければ何もしなくていいというものではなく、高くなったら是正するという考え方に変わってきたのです。

血圧を下げる本当の目的は、脳・心臓・腎臓といった大切な臓器を守ることですので、この考え方はとても理にかなっています。

まとめ

最後に今回の内容をまとめます。

  • 血圧を下げる本当の目的は、脳・心臓・腎臓といった大切な臓器を守ること
  • 自分で服薬を中止しないのが大事
  • 高血圧ではなくても高値血圧は是正が必要

今日も【医学生物学のポータルサイト】生命医学をハックするをお読みいただきありがとうございました。

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