短い短報論文を投稿できる一流誌 【図は2つだけ】
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生命科学の論文には多くの場合複数の図 (figure) がありますが、中には短い論文 (短報)もあります。その典型例がScience誌のBreviaという投稿形式で1ページ以内・1 Figureのみという超短報を受け付けていましたが、残念ながら2013年に終了してしまいました。

この記事では、Breviaに代わる超短報を投稿できる一流誌を紹介します。

短めの論文とその注意事項

生命科学の論文が掲載されている雑誌は多数あります。おすすめの生命科学雑誌40選 【日本語の情報もある】という記事に紹介したのはそのごく一部で、インパクトファクターという一種の注目度がとても高い雑誌に限定したものです。

実際には学術雑誌の数は1万以上あり、その多くは比較的短めの論文 (Figureは4つ以内など) も投稿できるようになっています。

例えば日本を代表する生命科学系の学会である日本分子生物学会が運営するGenes to Cellsという雑誌のBrief reportという形式は、Figure 3つ以内という制約があります。

短い論文でも原著論文であることに変わりはありません。したがって、より長い論文と同様、しかるべき審査 (レビュー) があります。

短い論文、つまりデータが少なくてもOKということは、決して未完成な論文でもいいという意味ではありません。むしろ、そこに全てのエッセンスをつめる必要があり、簡潔だけどインパクトは絶大ということが求められるでしょう。

あの有名なワトソン・クリックの2乗らせん論文 (Nature, 1953年) は、引用文献リストまで全部含めてわずか4ページしかありません。

それに、書けることが少ないからこそ、エディター (雑誌の編集者) やレビューワー (外部の専門家) に誤解されたり研究の価値を認めてもらえないということもおこりうるでしょう。

その点に注意して、より多くのデータを見てもらえる長い形式にするか、短い論文で勝負するかを選択する必要があります。

Figure 3つ、4つは多くの雑誌に投稿できますので、この記事の残りの部分ではもっと短い、つまり「Figure 2つ以下」または「2000 words未満」の超短報を投稿できる名門誌を紹介します。

超短報を掲載できるNature姉妹誌

残念ながらNature誌は超短報を受け付けていないものの、その姉妹誌はBrief Communicationという名前で原著論文を投稿できることが多いです。

例えば、Nature BiotechnologyのBrief Communicationは 1000-1500 wordsかつ 2 figures以内にしないといけません (他にLetterという2000 wordsかつ 3 figures以内という投稿形式もあります)。

Nature姉妹誌のBrief Communicationはいずれも 1000-1500 wordsかつ 2 figures以内という条件がついていて、生命科学系・データサイエンス系でいえば他にこのような雑誌が受け付けています。

残念ながら全てのNature姉妹誌がBrief Communicationを受け付けているわけではなく、例えばNature Cell Biology誌やNature Metabolism誌、Nature Immunology誌などは投稿できません。

超短報を掲載できるCell姉妹誌

Science姉妹誌には超短報を受け付けている雑誌はないので、続いてCell姉妹誌を紹介します。

CellはNatureと比べてもともとの文字数制限がゆるい (長い論文を投稿できる)ので、姉妹誌の中に超短報を投稿できるものは多くありません。

その中にあって、Cell Stem CellなどにはBrief ReportというFigure 2つ以内の原著論文を投稿するコーナーがあります。

Brief ReportがあるCell姉妹誌

その他、超短報を掲載できる一流誌

おすすめの生命科学雑誌40選 【日本語の情報もある】で紹介した姉妹誌以外の定評のある雑誌の中にも、超短報を掲載できるものがあります。

例えば、PNAS誌はBrief Reportという形式があり、1600 words以内の原著論文を投稿することができます。

Cancer Research誌にはResource Reportsというコーナーがあって、 2 Figuresかつ1500 words以内の、どちらかというと他のがん研究者にも役立つリソースを作ったという研究成果を発表できます。

eLife誌にはShort Reportsという名前で1500 words以内の原著論文を発表するセクションがあります。

まとめに代えて

この記事では、超短報を発表できる一流誌を紹介しました。短報だから審査が甘いというわけでは決してありませんが、より長い (= たくさんのデータが必要な) 論文に比べれば、1つの研究にかかる時間は少ないのかもしれません。

とはいえ論文を書くにはそれなりの時間が必要です。「できる研究者の論文作成メソッド」という本にも書かれていましたが、わずかな時間でもいいので普段から論文を意識した時間をつくる (論文用のFigureをつくるとか、引用する文献をまとめるとか) ことが重要な点の1つです。

Amazonでベストセラーになったこともある「なぜあなたは論文が書けないのか? 」にも類似のことが書かれています。

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