電池不要の埋め込み型心臓ペースメーカーの原型を作ることに成功したという論文がNature Communications誌に報告された。「Symbiotic cardiac pacemaker」というシンプルなタイトルだ。
心臓ペースメーカーの仕組み
人が生活するのに必要な酸素や栄養を運ぶのは血液で、血液を体の隅々まで行き渡らせるのに必要なポンプが心臓である。
通常は、1分間に約60~80回程度、心臓は血液を送り出している。このリズムが狂ってしまう不整脈の患者さんに使われる機械がペースメーカーだ。
ペースメーカ本体と、リード(導線)からなっていて、ペースメーカーが規則的に作る弱い電気刺激をリードを通して心臓に伝えることで、正しいリズムで脈を打てるようにする機械だ。
この機械は電池で動いているので、電池が切れたらペースメーカーが働かなくなってしまう。そのためおよそ10年弱で電池交換手術が必要になる。
心拍動を検出して充電し、電池交換不要のペースメーカー
今回、研究者らは電池交換不要のペースメーカー作製という難題に挑戦した。その結果できたのがこちらだ。
新しい「ペースメーカー」は、3つの要素で構成されている。
1つは心臓に取り付けるウエハーサイズのジェネレータで、これは心臓の収縮を電気的エネルギーに変換する。上の写真はこの写真だ。
2つ目はそのエネルギーを蓄えておくためのコンデンサを持つ電源管理ユニット。そしてペースメーカー本体だ。
研究者らは、心臓の大きさと機能が人間の心臓に似ている、ブタにこの装置を移植し、きちんと動くことを確かめた。
ペースメーカーの大きさや安全性、効率性はブタではなく人に合わせて行く必要があるので、ただちに使われるようになっていくとは現時点では考えにくい。
しかしこれは大きな成果だと思う。近い将来、電池不要の植込み型医療機器を開発するときの重要なヒントになるにちがいない。
まとめ
最後に今回の内容をまとめておく。
- 心臓ペースメーカーは電気刺激を自動的に起こす機械
- ペースメーカーは電池交換を定期的にしないといけない
- 心臓の動きを使って充電できるペースメーカーが開発される
- すぐに使えるわけではないが、将来に向けた大きな前進
今日も「生命医学をハックする」をお読みいただきありがとうございました。