インフルエンザウイルスの種類と検査【発熱すぐは検査できない】

インフルエンザは毎年1000万人に発症しています。この記事では、インフルエンザウイルスには大きく3種類あることやその感染経路、インフルエンザ検査の注意点について知って、よく患者さんに聞かれることをまとめました。

インフルエンザウイルスの分類

インフルエンザウイルスA型, B型, C型

インフルエンザは、その名前の通りインフルエンザウイルスが感染して起こります。

インフルエンザウイルスは、大きくわけるとA型、B型、C型の3種類がありますが、このうち人で流行するのはA型とB型ウイルスによるインフルエンザです。

A型は、特に内部での遺伝子変異が起こりやすく、人に抗体ができても、ウイルスが少しずつ変異して、新たな感染源となって毎年流行を繰り返します

B型はA型に比べると流行の規模は小さくなります。その理由は、B型の遺伝子はA型と比べかなり安定しているため、ウイルスに対する免疫がA型よりも長く持続するからです。

A型・B型インフルエンザの流行には季節性があり、インフルエンザウイルスの活動性が高まるのは、一般的に湿度と気温の低い冬の季節です。例年だと12月~3月に流行し、推定約1,000万人がかかっています。

C型は通年を通して乳幼児に感染します。しかし、感染しても症状が現れないことも多く、C型ウイルスの遺伝子はほとんど変化しないため免疫は生涯に渡って持続するとも言われています。

https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_374.html

A型インフルエンザウイルスは、2種類のタンパクの組み合わせでさらに細かく分かれている

A型インフルエンザウイルスの表面には、スパイク状に突き出ているヘマグルチニン(HA)ノイラミニダーゼ(NA)という二種類のタンパクがあり、これらはウイルスが感染を起こすために大事な役割があります。

http://www.hamt.or.jp/center/link/NO43/influ.htm

つまり、ヘマグルチニン (HA)は感染しようとする細胞に結合して、ウイルスを細胞の中に入れるのに必要であり、ノイラミニダーゼ(NA)は感染した細胞で増えたウイルスが外に出て行く時にヘマグルチニンを切るために必要です。

A型インフルエンザウイルスのヘマグルチニン (HA)は16種類(H1~H16)あり、ノイラミニダーゼ (NA)は9種類(N1~N9)あります。これらを組み合わせて、H1N1型とかH16N9型などの亜型があります。

例えばA型インフルエンザウイルスであり、ヘマグルチニンがH1で、ノイラミニダーゼがN1であれば、A(H1N1)亜型というように呼ばれています。

毎年のように流行するインフルエンザウイルスのうち代表的なものは、H1N1型やH3N2型などがあり、それぞれ「Aソ連型」や「A香港型」といわれています。

それぞれ16種類, 9種類あるので、理論上は、16 x 9 = 144種類の亜型が存在します。

http://www.seirogan.co.jp/asset/images/fun/infection-control/influenza/influenza_img02_big.gif

さらに、同じ亜型同士でもHAとNAには小さな変異があります。

これらの亜型ごとに体での免疫反応が違うので、以前に同じ亜型のインフルエンザにかかり免疫を持っていても、その年に流行している亜型への免疫を持っていないとインフルエンザにかかってしまいますインフルエンザ予防ワクチンの話 【さまざまな疑問に答えます】も併せてご覧ください。
[getpost id=”2545″ title=”関連記事” ] 一方、B型やC型のインフルエンザウイルスは、A型に比べると多様性が低いので、亜型による分類は行われていません。

インフルエンザウイルスの感染経路

インフルエンザの主な感染経路は飛沫感染接触感染です。

飛沫感染というのは、感染した人が咳やくしゃみをする時などに出てくる、ウイルスを含む飛沫が飛んで、これが健康な人の鼻や口から入り、気道の粘膜に接触して感染する経路です。およそ1~2メートル範囲に飛ぶので、疑わしい場合はマスクをきちんと装着しましょう。

接触感染というのは、ウイルスが手についた状態でドアノブを触り、それを別の人が触って、という間接的な接触による感染経路です。

インフルエンザウイルスは外側にエンベロープという脂でできた膜をもっていて、これはエタノールに弱いので、消毒用エタノール (アルコール) はインフルエンザウイルスの消毒効果があります。

冬場は家庭に用意しておくと安心ですね。

インフルエンザの検査

インフルエンザの検査は、喉または鼻の粘液を綿棒で取って調べる迅速診断キットでなされています。検査法の改良により、現在では30分以内 (10-15分) に診断をすることができます。

この検査の検査料ですが、病院の規模によって変わることがありますが、インフルエンザ検査自体は334点 (検査料 + 判断料 + 管理料) 、ここに初診料282点が加わり615点、 (1点=10円なので) つまり6150円程度になります。

このうち健康保険が7割以上カバーしてくれるので、2000円弱の実費で受けられます。

医療費の仕組みについて詳しくは国が決めている医療の値段【外来での医療費 (診療報酬) 網羅的まとめ】もご覧ください。
[getpost id=”2000″ title=”関連記事” ] 今はほとんどやられていませんが、血液中のインフルエンザ抗体を調べる方法など、迅速キット以外の検査も一応はあります。

インフルエンザ検査は発熱12時間以降に

インフルエンザは簡便に検査できるようになりましたが、一方で、インフルエンザウイルスの量がある一定以上に増えていないと正しく「陽性」と判定されにくいという弱点があります。

インフルエンザに感染しても、ウイルスが増えるまでは時間がかかります。12~24時間経過してからこの検査を行わないと、陰性という結果が出てしまうことがほとんどです。

熱が出てきてからすぐの段階では、すぐにインフルエンザかもしれないと疑うことは多くないと思いますので、安静にして様子をみて、それでもますます上がってくる時に病院を受診するのがいいでしょう。

インフルエンザを疑う症状についてはインフルエンザの症状と経過 【熱が下がって2日は登校禁止】にまとめています。
[getpost id=”2505″ title=”関連記事” ] 必要ならばインフルエンザ治療薬も処方してもらえます。インフルエンザウイルスのうち、ノイラミニダーゼを標的とした薬がほとんどです。解熱剤を飲む上で注意しなくてはならない点などと合わせて、インフルエンザの治療薬【使ってはいけない解熱剤もある】にまとめています。

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まとめ

最後に今回の内容をまとめます。

  • インフルエンザウイルスは大きく3種類
  • インフルエンザウイルス感染予防にはマスクと消毒用アルコール
  • インフルエンザ検査は発熱12時間以降に

今日も【生命科学のポータルサイト】生命医学をハックするをお読みいただきありがとうございました。

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