日本学術振興会の特別研究員 (DC)は博士課程の大学院生に給料を支給する制度です。
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もちろん全員にというわけではなく、毎年5倍を超える倍率になる選考に通らなければなりません。
この記事では、DC1に焦点をあて、申請書を書く上での注意点や必要とされる業績の目安をまとめます。
この記事の内容
課題名の付け方
課題名はその研究テーマを端的に表す最も大事な部分です。
これについては、自分で考えるよりも先に、過去に学振をとった先輩方がどのように課題名をつけているのかを見ましょう。
過去の受賞者とその研究課題名は学振の採用者一覧のページから閲覧できます。
また、KAKENデータベースには学振だけに限らず科研費などの公的な研究費をとった方々とその課題名等が書かれているので、こちらも検索して自分が出そうと思っている分野と近い先生方の課題名を参考にすればいいでしょう。
学振に採択されると特別研究員奨励費の申請資格があるので、KAKENデータベースからも「特別研究員奨励費」で検索すれば学振の研究課題名を閲覧することができます。
2.【現在までの研究状況】で注意すること
申請書の「2.【現在までの研究状況】で注意すること」について但し書きをみましょう。
(図表を含めてもよいので、わかりやすく記述してください。様式の変更・追加は不可(以下同様))
1.これまでの研究の背景、問題点、解決方策、研究目的、研究方法、特色と独創的な点について当該分野の重要文献を挙げて記述してください。
2. 申請者のこれまでの研究経過及び得られた結果について、問題点を含め①で記載したことと関連づけて説明してください。
なお、これまでの研究結果を論文あるいは学会等で発表している場合には、申請者が担当した部分を明らかにして、それらの内容を記述してください。
学振に限ったことではありませんが、申請書は要求されたことに答えなければいけません。
わざわざこの但し書きがあるというのは、これらの条件、つまり
・ 図表を入れる
・ 「研究の背景」、「問題点」、「解決方策」、「研究目的」、「研究方法」、「特色と独創的な点」について項目を作って書け
・ 「これまでの研究経過」「得られた結果」について項目を作って書け
・ 必ず問題点をあげろ
・ 関連づけて説明しろ
・ 研究プロジェクトのどこを担当したのか分かるように書け
を守るように書かないといけないということです。
重要文献をあげて記述するところは、審査項目の1つになっている「研究者としての能力があるか」を見られている部分でもあります。
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すべての研究は先人の積み重ねに基づいて行われるわけで、これまでの先人の研究を理解した上での研究提案かどうかを試されているわけです。
また、この欄は自分の業績のPRにも使うことができます。学振の業績欄は査読中の論文は書くことができませんが、ここの参考文献としてであれば投稿中や査読中の自分の論文を引用することも可能です。
3.【これからの研究計画】で注意すること
ここは申請書の中で最も難しい部分です。採用された後2-3年後の未来を見越した話を書かなければいけませんが、どれだけ審査員に現実味を感じさせられるかが勝負の分かれ目です。
(1) 研究の背景
A4 半分しかないので但し書きの項目を網羅しながらコンパクトにまとめましょう。
(2) 研究目的・内容
但し書きをよく読んで書きます。計画がひと目で分かるような図を入れることと、計画がうまくいかない場合にどうするつもりなのかを書くことも重要です。
(3) 研究の特色・独創的な点
(2)で書いた内容と重なる部分も大きいですが、これは自分の研究計画を第三者目線から称賛する感じで書くといいでしょう。
(4) 年次計画
基本的に2年目や3年目の予想は難しいので、1年目をたくさん書いておくべきです。実現可能性の根拠も何かしら提示したいところです。
(5) 人権の保護及び法令等の遵守への対応
遺伝子組み換え実験の法律に則っているということを書く欄です。安全委員会や管理委員会などの具体的な組織や法律の名前を書くことが必要です。
もし該当しない場合には、なぜ該当しないのかの根拠とともに「該当しない」と書けばOKです。
4.【研究業績】で注意すること
研究業績は何も論文発表だけに限りません。
もちろん論文発表が研究者にとっては最も重要な業績ですが、特にDCの場合は論文が少ない、あるいは全くないのが普通です。
学会発表や受賞 (学会ポスター賞や成績優秀賞など何でも)など、書けるものは何でもひねりだして書きましょう。
それでもまだ業績欄がスカスカになってしまう場合は、フォントサイズや行間・空白などを調整すれば、ぱっと見の印象をよくすることもできます。
この時に大事なのはやりすぎないこと。あくまでも、業績欄をより見やすくするつもりでやっているくらいでないといけません。明らかに大きすぎるフォントなどは論外です。
研究業績はどれくらい必要か?
学振DC1に面接免除で採択していただいた時、筆頭著者としてIF (インパクトファクター) 2.5の雑誌に1本、同じ雑誌に共著者として1本、合わせて2本の論文がありました。
大学院時代の研究室には先輩・後輩合わせて9人のDC1採択者がいましたが、印象としてIF 2以上の雑誌に筆頭著者として論文 (医師の症例報告は論文に含まない)が1本あればみんなDC1に採択されています。
筆頭著者としての論文がなくても、2番目か3番目の著者としてIF 10前後の雑誌に掲載されていてもOKのようです。
論文が共著も含めて全く無くても面接選考の上でDC1に採択された人もいました。この方の場合は、分子生物学会の年会で口頭発表したことがあります。
このようにDC1については、
IF 2以上の筆頭 or
IF 10前後の2nd/3rd or
全国規模の学会で (ポスターではなく) 口頭発表かつ申請書がとても素晴らしい場合
が合格ライン (面接選考以上) になるようです。
もちろんこれは分野によって異なります。あくまで、生命科学・基礎医学のいわゆるバイオ系でDC1に出す場合に必要な業績です。
過去の情報を集める
学振採択経験者がいろいろな情報を発信してくれています。
これらの情報を集めていきましょう。
学振採択者の過去の申請書
学振採択者の方が有志で申請書を公開してくれています。
学振採択者のノウハウ
申請書を書くにあたってのノウハウもいろいろ公開されています。
これらを読んで、いいと思ったものは取り入れてどんどん申請書をブラッシュアップしていきましょう。
学振DC1に4人中4人受かった。3つのポイントを守れば、絶対受かると思う
論文ゼロでも学振DC1に面接経由で採用された申請書の書き方のコツと面接対策ポイント
申請書の審査員を初めてやって感じたこと(申請書の書き方や注意点)
関連サイト・図書
この記事に関連した内容を紹介しているサイトや本はこちらです。
まとめ
最後に今回の内容をまとめます。
- 学振申請書は但し書きをよく読んで注意点をしっかり守る
- 業績欄は何でもひねり出す
- 過去の採択者の申請書やノウハウを積極的に集める
今日も【医学・生命科学・合成生物学のポータルサイト】生命医学をハックするをお読みいただきありがとうございました。