一口にプラスチックと言っても、さまざまな性質が異なる7つにさらに分かれています。
この記事では、生命医学研究によく使われているプラスチックや、その扱いについてまとめます。特に、オートクレーブ可能なのか、不可能なのかを間違えないようにしましょう。
この記事の内容
生命科学実験器具によく使われているプラスチック2つ: まずはこれだけ
いろいろなプラスチックがあるものの、実験器具に頻用されているプラスチックはポリプロピレン (PP)とポリスチレン (PS)の2種類が大半をしめています。
このうちPPは半透明、PSは透明ですので、簡単に見分けることができます。
ポリプロピレン (PP)
多くのチューブや遠心管はポリプロピレン (PP) 製です。
オートクレーブ:可能
乾熱滅菌: 不可
凍結: 可能
酸への耐性: 弱酸なら可能、強酸には対応できない
アルカリへの耐性: 弱アルカリなら可能、強アルカリは場合によりけり
有機溶媒への耐性: 80℃以下なら場合により可
ポリスチレン (PS)
プレート関係は基本的にポリスチレン (PS) 製です。
オートクレーブ:不可
乾熱滅菌: 不可
凍結: 不可
酸への耐性: 弱酸なら可能、強酸には対応できない
アルカリへの耐性: 弱アルカリ・強アルカリともに可能
有機溶媒への耐性: 不可
オートクレーブできるプラスチックの見分け方
このように、PPはオートクレーブ可能だがPSは不可能であることが分かりました。
PPは半透明、PSは透明であることを合わせると、原則として、チューブのような半透明のプラスチックならオートクレーブ可能と覚えておくのがいいと思います。
有機溶媒を計測するメスシリンダーの選び方
PPとPSは有機溶媒への耐性も大きく違い、PSは有機溶媒への耐性がありません。
透明なメスシリンダー (多くはPS製) で有機溶媒を図ろうとすると、すぐに腐食し白くなってしまいます。そのため、有機溶媒は半透明のPP製のメスシリンダーを使って測定するべきです。
その他のプラスチック
実験器具に最もよく使われるのはPPとPSですが、他のプラスチックも使われています。
アメリカプラスチック工業協会 (SPI, the Society of the Plastics Industry) が1988年にプラスチックの材質表示をコード化して以来、日本でもそれに準じたコードが使われています。そのため、製品のウェブページにはしっかりと明記されていることがほとんどです。
冒頭に7種類といったのは、この7種類のことを意味しています。
このうち(HD)PEとPCはバイオ研究でも使われることがあるので補足します。
ポリエチレン (PE)
オートクレーブ:不可
乾熱滅菌: 不可
凍結: 可能
酸への耐性: 弱酸なら可能、強酸には対応できない
アルカリへの耐性: 弱アルカリ・強アルカリともに可能
有機溶媒への耐性: 80℃以下なら場合により可
ポリカーボネート(PC)
オートクレーブ:可能
乾熱滅菌: 不可
凍結: 可能
酸への耐性: 弱酸なら可能、強酸には対応できない
アルカリへの耐性: 弱アルカリなら可能、強アルカリは場合による
有機溶媒への耐性: 不可
プラスチック器具の洗浄法
プラスチック器具は使い捨ての場合が多いものの、使用目的を区別すれば洗って再使用できることが多いです。
洗浄方法はガラス器具と同じですが、傷つきやすいので強くこすらないようにする必要があります。
また、電気泳動層についてはほとんど洗う必要もなく、水道水ですすいで乾燥させておけばOKです。
関連図書
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