ホルモンという言葉はいろいろなところで使われています。ホルモンバランスによって起こる病気もあります。
この記事では、健康にも密接に関わるホルモンについて紐解いてみます。
ホルモンとは
ホルモンは、ある特定の分泌腺(内分泌腺)から血液中に分泌され、それぞれ決まった臓器の働きを調節する物質のことをいいます。
内分泌とは、体の中に分泌する、具体的には血液中に分泌するということです。反対に、汗など体の外に分泌する場合は外分泌といいます。
いろいろなホルモンがありますが、代表的なインスリンというホルモンの場合は、 膵臓で作られ血液中に分泌されて、肝臓の細胞や脂肪細胞に働きます。
ホルモンは血液中を流れるものの、ある特定の臓器の細胞にしか働きません。
これは、 その細胞にだけ、ホルモンと結合する受容体 (じゅようたい) があり、ホルモンはその受容体と結合して初めて働きが現れるからです。
インスリンの働き
インスリンは、膵臓の中にあるランゲルハンス島という組織で作られています。
膵臓の組織をヘマトキシリン・エオジン (HE) 染色したのがこちらの画像ですが、
画面中央の比較的白く抜けている巨大な塊がありますね。これが「ランゲルハンス島」で、その名前の通りランゲルハンスという人が最初に見つけました。
インスリンは、このランゲルハンス島にあるβ (ベータ) 細胞という細胞で作られ血液中に放出されます。
血液中にはある程度のブドウ糖があり、これを血糖といいますが、 血糖の量が多くなるとインスリンが分泌され、肝臓や脂肪細胞に働きかけ血糖をグリコーゲンや脂肪に変える反応を促します。
つまりインスリンはグリコーゲンや脂肪などに変えることで血糖を減らす働きがあります。
逆に、血糖が減りすぎた場合は、同じランゲルハンス島のα(アルファ)細胞という細胞からグルカゴンというホルモンが分泌されたり、 副腎 (ふくじん) の髄質 (ずいしつ) から アドレナリン というホルモンが分泌されたりして、血糖を上昇させます。
血糖はほぼ一定の値に保たれているのは、これらホルモンのバランスのおかげです。
インスリンの分泌量が少なくなったり、インスリンの効果がうまく現れなくなると血糖値が上がったままになってしまいます。
尿は血液中の老廃物を腎臓でこし取って作っているので、血液中の糖分が多くなると尿中に糖分が含まれるようになります。
これが糖尿病で、インスリンの分泌量が少なくなるタイプを1型糖尿病、インスリンの効果がうまく現れなくなるタイプを2型糖尿病といいます。
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ステロイドとその仲間たち
副腎髄質から作られるアドレナリンは血糖を上昇させるという話をしましたが、実は副腎は髄質だけではなく皮質 (ひしつ) もあり、副腎皮質でも別のホルモンが作られています。
副腎の奥の方にある髄質ではなく、表面に近い皮質から分泌される糖質コルチコイド というホルモンです。
このホルモンは、タンパク質をブドウ糖に変化させて血糖を上昇させたり、炎症を抑えたりなど、いろいろな働きがあります。
ステロイド という脂質の一種からできているので、特にこの糖質コルチコイドを含んでいて炎症を抑える薬はステロイド剤と呼ばれ、医療機関ではよく使われています。
ステロイドはこのような化学構造をしています。
生殖腺から分泌される男性ホルモン (テストステロン) や女性ホルモン(エストラジオールなど) もこのステロイド成分でできているホルモンです。
甲状腺ホルモン
サイロキシン (チロキシン) は、首のところにある甲状腺 (こうじょうせん) という内分泌腺から分泌されるホルモンですが、特に高校生物ではカエルなどの両生類の変態(オタマジャクシから成体になる)を促すホルモンとして有名です。
オタマジャクシのときに甲状腺を手術で取ると、サイロキシンが分泌されないので、いつまでも変態せず大きなオタマジャクシになります。
これと逆ですが、小さいオタマジャクシのときに、サイロキシンを与えてやるとすぐに変態して小さなカエルになります。
この甲状腺ホルモンは、脳にある下垂体 (かすいたい) の前葉 (ぜんよう) から出てくる甲状腺刺激ホルモンによって支配されています。
つまり、下垂体から出る甲状腺刺激ホルモンが甲状腺に刺激を与えると、甲状腺からサイロキシンが分泌されるという仕組みです。
反対に、 サイロキシンは脳の下垂体前葉にはたらきかけて甲状腺刺激ホルモンの量を抑えるようにするのです。
下垂体は甲状腺に司令をするだけではなく、甲状腺からのフィードバックも受けています。このようなフィードバック調節が働くことで、ホルモン量は一定の範囲に制御されているのです。
恒常性の維持とその破綻
この記事で紹介した以外にも、いろいろなホルモンがあります。
いずれの場合も、ホルモンは微量で大きな働きを発揮するので、体内での分泌量も厳密に調節されています。 これを 恒常性(ホメオスタシス)といいます。
恒常性の破綻が、さまざまな症状につながります。例えば更年期障害もその1つです。
病気を理解する上では、まず正常の仕組みを知らなければいけません。生物学は、医学と密接につながっています。
関連サイト・図書
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まとめ
最後に今回の内容をまとめます。
- ホルモンは特定の受容体を持った細胞に働きかける
- ホルモンの量はフィードバック制御で調節されている
- 恒常性の破綻が病気につながる
今日も【医学・生命科学・合成生物学のポータルサイト】生命医学をハックするをお読みいただきありがとうございました。