肺がんの治療は、手術や抗がん剤だけではありません。この記事では、放射線治療の概略についてまとめました。
この記事の内容
肺がんの放射線治療
根治を目指すための放射線治療
放射線治療とは、がん細胞に体の外から放射線を照射して死滅させる治療法です。
放射線治療には100年以上の歴史があり、放射線治療の技術の進歩や照射方法を事前に計算する方法の開発などの結果、より効率的にかつ安全に放射線治療が行えるようになっています。
早期の肺がんや、そうでなくても肺の周囲にがんがとどまっている場合には根治を目的とした放射線治療が行われます。
手術も非常に有力な選択肢ですが、呼吸機能や体力が十分でないなどの理由で、特にご高齢の方の場合には手術ではなく放射線治療を選択する患者さんが増えています。
特に定位放射線治療という方法では、多くの方向からがんだけを狙って照射し、治療は入院せずに受けることができる (1週間程度) という特徴があります。
進行がんになると、範囲が広いので手術で取りきるのは難しくなります。この場合、根治を目指して放射線治療だけでなく抗がん剤を組み合わせる化学放射線治療が行われます。
この場合、一般的には1日1回10分間程度の照射を週5回、6週間続けることが多いです。
症状を和らげるための放射線治療
放射線治療は、症状を和らげる目的でも使われます。例えば、がんが骨に転移すると痛みやしびれ、脳に転移すると頭痛や吐き気などの様々な症状が出てきます。
これらの症状を和らげる目的で患部に放射線を照射することで、辛い症状を軽減することが可能です。
あくまで症状の緩和が目的なので、照射期間も短くてすみます。
綿密な計画のもと乗車位置などが気になる
放射線治療を行う前に、必要なところに必要な量だけ正確に放射線を照射するために綿密な計画が立てられます。
特に肺は呼吸によって動くので、事前に専用のカメラで肺の動き方を記録しながら CT 画像を撮影し、肺がんの位置を確認して最も適切な照射位置やタイミングを決めます。
患者さんも、入浴しても剥がれないシールなどを体に貼り目印をつけます。この目印があるので、毎回同じ位置に照射できるというわけです。
放射線治療の副作用と費用
放射線治療は事前に綿密な計画を立てて行われますが、がんだけではなく近くになる正常の組織 (皮膚など) にもある程度は放射線があたります。
この結果、副作用が発生する可能性があります。
一番多いのは皮膚炎で、皮膚が痒くなったり赤くなったりします。 この場合はなるべく刺激を与えないようにすることが大切、で皮膚の乾燥している所に保湿剤を使ったり、症状がひどい場合は軟膏を使ったりします。
食道の炎症 (食道炎) も比較的多い副作用です。食べ物の通りが悪くなるため読み込みにくくなったり、痛みを感じたりします。
刺激のあるものを避けたり、粘膜保護薬や痛み止めを使って対処します。
これらの副作用は、放射線治療が終わると少しずつ治っていきます。
反対に、照射が終わって少ししてから出てくる副作用の代表として放射線肺炎があります。
がんの近くにある正常の肺にも放射線が当たる結果、炎症を起こしたもので、特に根治を目的とする強い放射線治療を行なった場合はほぼ必ず起こります。
軽い場合は (痰が出ない) 乾いた咳や微熱が出るくらいで、特に治療は不要ですが、ご高齢の患者さんやもともと肺に病気を持っている方の場合にはまれに重症になることが知られています。
放射線治療の費用は、3割負担の場合でおよそ20万円程度です。窓口でこの金額を払う必要がありますが、高額医療費支給制度というのを利用すれば、約8万5千円を超える分については後日戻ってきます。
高額医療費支給制度については長くなるのでまた別の記事に書きますが、そのような制度があることは知っておくとよいでしょう。
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まとめ
最後に今回の内容をまとめます。
- 根治を目的とした治療だけでなく、症状を和らげるにも放射線が使われている
- 皮膚炎や食道炎といった副作用がある
- 高額医療費制度で、国から助成してもらえる
今日も【生命医学をハックする】 (@biomedicalhacks) をお読みいただきありがとうございました。