「がんは遺伝子の病気である」とよく言われますが、実際のがんにはさまざまなmutationがあります。
そうした変異を解釈するために、これまで多数の研究が行われ、その結果がいろいろなウェブツールにまとまっています。
この記事では、がんのmutationを解釈するために使える、コマンド不要のリソースを紹介します。
がん突然変異のリソース
がんのsomatic mutationのリソースは1種類ではなく、それぞれの目的に応じていろいろなツールが作られてきました。
論文などでよく引用されている最もメジャーなツールとしてはClinVar (NCBI が開発) がありますが、これはがんに特化したものではありません。
がん研究者にとってより使いやすい主なツール (の一部) を紹介します。
残念ながら英語ですが、そんなに難しい単語は使われていないので学生さんでも十分使うことができます。
OncoKB: MSKCC (メモリアル・スローンがんセンター)で開発
JAX-CKB: ジャクソン研究所で開発
Molecular Oncology Almanac
Cancer Genome Interpreter: IRBバルセロナで開発
ClinGen VCI: ClinGen コンソーシアムが開発
MyCancerGenome
Cancer Driver Log (CanDL): オハイオ州立大学が開発
創薬や個別化医療に関するデータベース
がんのmutation情報を、その患者さんに適した治療法の提案に使いたいという、臨床医学よりの情報を提供してくれるツールもあります。
一番有名なのはCOSMICでしょうが、それ以外にも
Pharmacogenomics Knowledgebase (PharmGKB): スタンフォード大学で開発
Precision Medicine Knowledgebase (PMKB) : Weill Cornell Medicineが開発
Personalized Cancer Therapy Knowledge Base for Precision Oncology: MDアンダーソンが開発
といったツールがよく論文で使われています。
複数のリソースの統合
複数のリソースを統合するためのツールもあります。
The Variant Interpretation for Cancer Consortium Meta-Knowledgebase
Global Alliance for Genomics and Health (GA4GH)のメインプロジェクトであるVICC (Variant Interpretation for Cancer Consortium) もさまざまながんのmutationが持つ意味を探索する試みの一つです。
こういったツールは、プログラミングが全くできなくてもマウス・クリックで操作できるものです。
使い方を身につけて、がん研究に役立ててください。
まとめに代えて
今回は、バイオインフォマティシャンがいなくてもがんの突然変異データを探索できるツールを紹介しました。
こうやって得た情報はあくまで「仮設」であり、最終的にはそれを実験で実証する必要があるのは事実ですが、実験系の研究をする上で、自分でデータに基づく仮説を立てられるのは大きな力だと思います。
また、ドライ系の研究者とコラボをする時にも役立つでしょう。
バリアントデータのより詳しい扱い方は、「バリアントデータ検索&活用 変異・多型情報を使いこなす達人レシピ」に詳しいです。
実験系の研究をする上で、こういった「簡単に使えるウェブツール」の存在を知っているかはとても大事です。
動画でも解説してもらえる「生命科学データベース・ウェブツール 図解と動画で使い方がわかる! 研究がはかどる定番18選」という本は、ラボにあると重宝します。
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