医師執筆記事 (厚労省医籍登録番号499533)
大腸がんを予防するには、生活習慣の改善が有効です。この記事では、まず大腸がんの発生率を上げる危険因子を紹介し、その後に具体的な予防方法や大腸がんと関係する病気について紹介します。
大腸がんの症状については以前の記事大腸がん検診と内視鏡検査を解説する【内視鏡以外の新しい検査法も】にまとめています。
この記事の内容
大腸がんの危険因子
大腸がんの発生には加齢 (高齢になるほどリスクが高い) の他, 肥満・喫煙・過度の飲酒・運動不足 などの生活習慣が関わっています。
運動不足は、腸の動きが低下し腸内に便が長く留まって便に含まれる物質に腸がさらされる時間が長くなるからということです。
これらが重なると大腸がん発生の危険性を更に高くします。例えばお酒をたくさん飲みタバコを吸う男性の場合は、飲酒も喫煙もしない男性に比べて大腸癌の発生率が約3倍になります。
大腸がんを予防するには、年齢は変えることができませんが、その他の項目の生活習慣を見直して、危険因子をできるだけ減らすことが大切です。
生活習慣の改善で大腸がんを予防する
タバコは吸わない
これは大腸がんだけに限りません。肺がんを始め各種がんや、心筋梗塞・脳梗塞の危険性も高めます。
お酒は控えめに
お酒は適量ならばいいですが、過度な摂取は控える必要があります。純エタノール量換算で1日あたり約23g程度までで、それを超えると大腸がんのリスクを高めることが知られています。
具体的には日本酒なら1合、ビール大瓶(633ml)なら1本までということになります。
運動習慣の改善
定期的な運動をすることで大腸がんが発生する可能性が低くなることが分かっています。
厚生労働省は「健康づくりのための身体活動基準 2013」の中で、65歳以上の方の場合は毎日40分間体を動かすこと、18-64歳であれば毎日1時間体を動かすことを推奨しています。
適切な体型を維持する
肥満度の指標にBMIという値が使われます。これは体重 (kg) ÷ 身長 (m) ÷ 身長 (m) という計算で求められます。
例えば170 cm (1.7 m), 60 kgの場合のBMIは
60 ÷ 1.7 ÷ 1.7 = 20.76
となります。
男性の場合、BMIが21.0~26.9でがんの死亡リスクが低く、女性は21.0~24.9で死亡のリスクが低いと報告されています。科学的根拠に基づくがん予防のデータを引用させていただきます。
つまり太りすぎてもなく痩せすぎてもなく、という体型の維持が大事だということです。
がんを予防する食べ物
牛肉豚肉などの赤身の肉や、ハムなどの加工肉を大量に摂取すると大腸がん発生の危険性が高まると言われています。
ただ日本人の一般的な摂取量であればあまり気にする必要はないでしょう。
食物繊維を多く含む食品は大腸がん発生の予防につながると考えられています。芋類や豆類は食物繊維を多く含むので積極的に摂ると良いでしょう。
カルシウムを多く含む食品も大腸がん発生の予防につながります。カルシウムを多く含む食品は骨粗鬆症の予防にも有効で、具体的な食品は骨粗鬆症の正しい検査と最新の治療薬【骨粗鬆症の予防法も】に書いています。
大腸がんを引き起こす病気
大腸がんの発生を起こしやすくする病気があります。これらに該当する場合は、若いうちから定期的な検査が必要です。
潰瘍性大腸炎クローン病
消化管の粘膜で炎症が起こり潰瘍などが起こる病気です。適切な治療しないと大腸癌を引き起こすことが知られています。
さらに遺伝性の病気によって大腸がんが起きやすくなるものもあります。
リンチ症候群
間違えて複製してしまった遺伝情報を正しいものに直す遺伝子に突然変異が起こって機能しなくなる結果、遺伝情報が書き換わりやすくなる病気です。異常な遺伝情報の結果、がんが発症しやすくなります。
家族性大腸腺腫症
APCという遺伝子の異常の結果、大腸全体にポリープがたくさんできる病気で、そのままにしていると高い確率で大腸癌を発症します。
血の繋がった方で50歳未満で大腸がんと診断された方がいる場合には、早めに1度検査をしてもらった方が安全です。
大腸がんは早期発見重要な癌で早期に見つけることができればほぼ再発なく根治することができます。
予防も大事ですが、早いうちに見つけるには検診を受けることも同じくらい大事です。
検診については大腸がん検診と内視鏡検査を解説する【内視鏡以外の新しい検査法も】をご覧ください。
まとめ
最後に今回の内容をまとめます。
- 大腸がんの発生率は生活習慣と関係あり
- 適度な運動と食物繊維の多い食事が危険性を下げる
- 早期の大腸がんなら根治も望める。検診を受けよう
- 大腸がんになりやすい病気もあるので定期的な受診を
今日も【医学生物学のポータルサイト】生命医学をハックするをお読みいただきありがとうございました。